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78 生徒たちの質問(1)

まずはそう太郎が質問しました。

「ぼくはサッカーをやったり、野球をやったり、将棋を習ったり、いろんなことをやっている。母さんはいろいろためして、好きなものを見つければいいと言うんじゃ。だけど、できることも見つからないし、好きなものも、見つからない。どうすればいいんじゃろうか」


 エドウィン先生は考えました。

「ぼくには、そう太郎くんがクラスのみんなを引っぱっていっているように見えるよ。それに、そう太郎くんは自分をよく見ているんじゃないのかと思う。だから、悩みが出てくるんだよ。悩むのは成長の一歩なんだと思う。悩まない人生なんて、あるのかなぁ」


「先生も悩むの?」

「もちろんだよ。毎日だよ。好きなものを早くに見つける人もいるし、時間がかかる人もいる。悩みながら、見つけていくことなんじゃないかい。早く見つけてらくしよう、なんて思ったらだめだよ。生きてることは、考えること、悩むことなんじゃないのかな」

うん、とそう太郎がうなずきました。


 次はくるみです。

「わたしはソフィア・コワレフスカヤのような数学者になりたいです。数学者になるには、どうすればいいですか」


「くるみちゃんは数学者になりたいんだね。ぼくができるアドバイスできるとしたら、子供時代には、できるだけたくさん本を読んだり、音楽をきいたり、絵を見たりして、想像力をゆたかにすることかな」


「エドウィン先生もそうしたんですか?」

「うちは父親はぼくが2歳の時にいなくなって、母親が働いていたんだよ。看護婦だったから、夜もいないことがあって、ひとりでいることが多かった。うちにはテレビもなかったし、本もそんなになかったから、いろんなことを想像して遊んでいたんだ。そのことが数学に役に立ったと思っている。それから、うちは貧乏だったけど、お母さんがお金をためて、コンサートに連れていってくれた。一年に一回か二回だけどね。数学と音楽とは関係がないようだけど、関係があるとぼくは思っているよ」

「はい」とくるみが言いました。


 次は明夫です。質問をする前から、目に涙がたまっています。

「ぼくは今年、さつまいもを植えたんだ。でも、コガネムシが百匹もついてしまった。育てようとしたら、父親にコガネムシは害虫だから、殺さなければならないと言われた。でも、かわいそうだから、船に乗せて川に流そうとしたら、他の家の畑についたらどうするんだと叱られて、焼き殺されてしまったんだ。エドウィン先生、コガネムシは何のために生きてきたんか」

 明夫が泣きました。


 エドウィンがうなずきました。

「この間、めぐみ先生とアルジェンティーナという鳥の話をしたところなんだ。この鳥は青緑の美しいインコなんだけれど、やはり畑を荒らしてしまう害鳥で、国から殺しなさいという命令がでている。虫も鳥も、生きるために食べているだけなのに、人間に害を与えるということで、殺されていかなければならない。不公平だとは思うけど、どうすることもできない。ぼくにも、どうすればよいのか、わからないんだよ。明夫くんが勉強して、その答えや解決策が見つかったら、ぜひぼくにも教えてほしい」

 わかった、と明夫が茶色いセーターのそでで涙をふきました。



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