70 キリタニ先生からの電話
ドライブインで少し休んで、ガソリンも入れて、今度はエドウィンが運転します。
運転を始めるとすぐに電話が鳴りました。かけてきたのはキリタニ・リュウノスケだったので、めぐみが答えることになりました。キリタニ先生はあのテキサスのコットン畑で、ガソリン切れで、立ち往生した人です。
「今、エドウィンが運転中なので、代わりました」
「あなた、どなたですか」とリュウノスケがききました。
「めぐみです。エドウィンの友達の」
「めぐみさん、……ああ、あのスマホの人ですか」
「はい。すみません、秋葉原ではお世話になりました」
「あの時は、エド先生がどうしても直したいといって、がんばっておられましたよ。ああ。あの方ですか。そうだ、エド先生にですね、2日か3日に会えるように、めぐみさんから頼んでもらえませんか」
スピーカーにしたので、エドウィンにも聞こえていて、苦笑いをしています。
エドウィンが何度も断ったはずなのですが、キリタニ先生は決して諦めない人なのか、それとも、話したことをすぐに忘れてしまったのかもしれません。
めぐみは、2日は畑野家でお正月のお祝いがあり、3日は生徒に会いにくるので、時間がないのだと説明し、すみませんと謝りました。
「生徒って?」とキリタニ先生が聞きました。
「わたしの生徒です」
「めぐみさん、先生なんですか」
「はい。小学校で教えています」
「どこの」
「大つた村です」
「あの青いチョウチョの」
「ご存知ですか」
「さっきもテレビで見ましたよ。今、話題になっています、ユリウス」
「あのう、ユリシス」
「ああ、そうでした」
「そんなわけで、2日にも3日にも約束があるのですよ。生徒たちがその日のために張り切って練習しているので、申し訳ありません」
「I will call you (電話をするから)」とエドウィンが言いました。
電話を切ったあと、キリタニ先生はこれで諦めてくれるだろうか、とふたりは顔を見合わせて「0132」と言いました。




