64 聞いてみないとわからないこと
エドウィンの話は続きました。
エドウィンと友人のアートは、悲しい運命のアルジェンティーナをなんとか救いたいものだと考えて、大学の鳥類学者のドクター・カミンズ博士ところに行ってみました。
カミンズ博士は、世間の人々はアルジェンティーナと呼んでいるけれど、本当の名前は「ブルー・モンク・インコ」でといい、害鳥なのだと教えてくれました。
「害鳥ですか。あのきれいな鳥が」
とエドウィンは驚きした。
この害鳥は農業の敵で、1960年代にアルゼンチンで農地の半分近くを荒らしたため、駆除されることになったのでした。その時逃げ出した鳥が、広大な海をどうやって渡ってきたのかどうかはわかりません。渡り鳥でもないインコが、1万キロも飛ぶなどというのは無理なので、人々は空港でカーゴが壊れて逃げ出したという話になったようなのです。
同じような話が、ニューヨークにもありますが、実際の生態はよくわかってはいません。
この農業の敵がアメリカの東部に現れた時、政府が駆除命令を出しました。
イリノイ州でもこの鳥は駆除されたのだけれど、このハイドパークのインコだけは殺されずに残ったのです。
それは、近くの住民が保護運動を展開したからでした。この鳥はうるさい声で鳴くので、反対の人もいましたが、公園の近くに前市長が住んでいて、彼が積極的に運動をしたのです。
ここは農耕地ではなくて、町なのだからよいではないか。鳥の存在に、どんなに慰められているかと訴えて役所を動かし、あの公園にいるかぎりはよいということになったのでした。
つまり、アルジェンティーナは他の場所では殺されるべき運命の鳥なのです。しかし、このハイドパークに住み、餌を与えられているアルジェンティーナは不運な鳥なのではなくて、幸運な鳥なのでした。
「話はきいてみないとわからないものだ」
とエドウィンとアートは話し合ったのでした。
「かわいそうにと思って、アルジェンティーナをアルゼンチンに送り返したら、殺されるところだったよ」
「助けようと思っていたのにね」
とめぐみが言いました。
「さっき、ユリシスの話を聞いたから、調べてみたんだ。たとえば、オオジシギという鳥なんか、オーストラリアから、4、5日の間、休まずに飛び続けて、日本にわたってくる。その距離、約7千キロだよ」
「5日も寝ないで飛び続けるなんて、想像できない。でも、必死な思いがあれば、できるのかもしれない」
めぐみはそう言いながら、リバー先生のことを思いました。やる気があれば、不可能に見えることでも、できちゃうのかもしれない。
「アルジェンティーナは子孫を残すために必死で、国から逃げてきたのかもしれないわ。必死な時には、信じられないような力がでるというから」
「ぼくもそう思う。だからこのことを誰かに話してみたかったんだ」
「ありがとう。生命の不思議だね」
「だから、昨日、ユリシスはどうやって渡ってきたと考えているのか、考えてみたんだよ。チョウは小さいから、鳥のように、飛んではこられないだろうけど」
「チョウの場合には軽いから、風にのったりたり、卵や幼虫が、鳥とか、植物にくっついたりしてわたってきたというのはどう?」
「可能性はあるよね。オーストラリアからシンガポールまでは4千キロちょっとだから、できるかも。シンガポールから日本にきたのか、オーストラリアから日本に直接きたのか、平家山のチョウを調べればわかるかもしれないよね」
「わたしは、夏になったら、山に行ってユリシスを見つけたいと思っているの。青いチョウが飛んでいるところを見たい」
「いいね。メグはやることがいっぱいだね」




