表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/85

56 オーストラリアからの電話

いつきさんのスマホに残っていた写真には、透き通った丸い水滴のような昆虫の卵がたくさん写っていました。

 めぐみはそのコピーをいつきさんのお母さん、エドウィン、そして、いつきさんの研究室の同僚だったリバー先生こと川口けんじ先生に送りました。


 するとすぐに電話がかかってきました。

 誰かしらと思ったら、それはリバー先生でした。


 彼は国際昆虫学会に出席するために、オーストラリアのパースに来ていました。今、南半球のオーストラリアは夏で、日本とは1時間の違いがあります。


「それはチョウの卵の写真です。何枚ありますか」

 リバー先生は早口です。

「4枚です」

「すぐに全部送ってくださいませんか。詳しいことは帰国した時に話します」

 何やらすごく興ふんしている様子です。とても急いでいるようなので、めぐみは電話を切って、すぐに残りの写真を送りました。


 いつきさんのさいごのメッセージには、「見つけた。こうご期待」と書いてありました。

こうご期待って、何かしらと思い続けてきましたが、リバー先生が学会から帰ってきたら、尋ねてみようと思います。


 その後で、京都のエドウィンから電話がありました。

「スマホがひらいてよかったね。パスコードは簡単に見つかったのかい」

 めぐみは回数的にぎりぎりだったけれど、れいかちゃんが「まいったね」から「0132」を思いついたのだと答えました。


「アメージング」

「スマホにあった写真を、いつきさんの同僚だったリバー先生に送ったところ」

「まいったねって、メグの口ぐせ、それともイツキの口ぐせなのかい?」

 えっちゃんが「イツキ」と呼び捨てなのは、アメリカ式だからです。

「たぶん、わたしの」

 めぐみの記憶の中では、いつきさんは「まいったね」と言ったことがありませんから。


「イツキはメグの言葉、よく聞いていたね」

「えっちやん、わたし、まいったね、ってよく言う?」


「そう言えば、あれはまいったね、だったのか。メグはよく、『まってて』と言っていたけど、あれは『まいったね』だったのか。ぼくは待っててだと思って、次の言葉がでるまで、待っていたことがあるよ」

「えー、そうなの」

 そう言えば、なにか、エドウィンが突然、黙ってしまった場面があったような気がします。あれはそういうことだったのかもしれないと思いました。


 めぐみはエドウィンをゴロ合わせ数字で書くと、「0101」だと教えました。

「それはいいね。今度、何かに使おう」と喜んでいるみたいでした。


 めぐみはクリスマスイブに、生徒たちと「ハッピーバースデー」を歌ったことを話しました。

「それ、いいね。さいこうのイブじゃないか」



「ところで、言わなきゃならないことがある」とえっちゃんが、少し神妙な声を出しました。

「なに」

「ソーリー」

 ええっ。


「それが、富士登山は山根埼やまねさき教授のブラフ(はったり)だった」

 エドウィンが申し訳なさそうな声を出しました。

「どうして」

「教授も登ったことがないけど、まさかぼくが本気で登るとは想像してもいなかったから、自慢してしまったらしい。冬の富士登山は危険だって言われた。というか、禁止なんだ」


「わたしも冬はだめな気がしたけど、えっちゃんが大丈夫って言うから、そうなのかなと思っていたけど」

「ごめん。でも、メグが信じてくれて、うれしい」

「えっちゃんって、どこまでも、ポジティブね」


「それで、教授が 山梨県の本栖湖もとすこに別荘があるから来ないかと言うんだ。そこからの富士は絶景で、ダイヤモンドみたいな富士の日の出が見られるそうだよ。それは本当だって」

「いいわね。それに、そのほうが絶対に安全だわ」

「それから、行く途中で、竜ヶ岳という山があるんだけど、そこに登ればどうかって勧められたよ。その山は、冬でも、大丈夫だそうだよ」


「竜ヶ岳の標高は何メートル?」

「1458メートル」

「富士の半分以下ね。そうね、こちらにしましょう」

「決断、早いね」

「心配していたので、安心したわ」


「よかった。しかられるかと思った」

「わたし、しかったことなんて、ある?」

「あるよ。どんな時だったのかは忘れたけれど、あったと…思うよ」

「突然秋葉原に行った時だって、しからなかったでしょ。ものすごく心配してたんだけど。でも、スマホを直してくれて、感謝しています。ありがとう」

「いいよ、そんなこと」


「ところで、えっちゃんはどんなクリスマスイブを迎えているの?」

「ずうっと研究室だよ。今、仲間が食べ物を買いに行ってる。そんなイブだよ」

「えっちゃんはいつも忙しいね」

「でも、今、ゴロ合わせ数字とハッピーバースデーの話を聞いたし、富士山をキャンセルしても、メグにしかられなかったし。楽しいイブになったよ」


「それは、まいったね」とめぐみが笑いました。

「それ、0132だろ」と0101が返しました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ