52 スマホは直った?
二学期の終業式の朝です。
明日から冬休みなので、みんなうれしそうです。
まずめぐみ先生があいさつをして、次に生徒たちがテーマは自由ですが、今学期に「できたこと」、「できなかったこと」、「印象深いこと」などを話すことになりました。
そう太郎は「これまでいろいろとやろうとしたけど、おれはなにもうまくできないんじゃ」と言いました。
明夫は「みんなに食べさせようとさつまいもを育てたけど、つるボケだった」とがっかりした顔です。
でも、めぐみ先生は「ふたりとも、何かをやろうと努力したところに意味があります。えらいです」とほめました。
女子のほうが元気で、れいかが「英語を始めて、少し通じるようになりました」
愛子が「昆虫を勉強したいと思い、リバー先生のユーチューブを見ています。おもしろいです」
くるみが「ソフィア・コワレフスカヤのような数学者になりたいです」と話しました。
和歌は「おばあちゃんがセンターにいれられた時は悲しすぎて、登校拒否をしたけど、今はおばあちゃんは元気だから、よかったです。いつか、私がお母さんになった時、子供が登校拒否になったら、この時のはなしをしようと思います」と言いました。
めぐみ先生はみんな、すごいすごいと拍手をしました。
「先生、何かうれしそう」とれいかが言いました。
「私もそう思う」とくるみ、
「何かいいことが、あったのですか」と愛子です。
わたしってわかりやすいのかしら、とめぐみ先生が照れてちょっと咳払いをしました。
「ずうっと探していたものがあって、それは見つかったのです。でも、それは壊れていて、ぜったいに直すことができないと思っていました。それが、直ったみたいなのです」
「それって、スマホですか」と愛子がききました。
「そうです」とめぐみ先生が答えると、生徒たちが拍手をしてくれました。
実は今朝、早くにエドウィンからメッセージがはいりました。
「悪いけど、時間がある時に、車とスマホを畑野さんのところまで取りに来てほしい」と書いてありました。
それで、エドウィンが東京から畑野さんのところに無事戻ったのはわかりました。でも、スマホが直ったのかどうかはわかりません。畑野さんに電話をかけるには早すぎる時刻だったので、学校についてから電話をかけてみました。
すると、れいかちゃんのおばあちゃんがすぐに出ました。
「授業がおわったころ、電話をおかけしようと思っていたのですよ」
おばあちゃんは、朝早く、エドウィン先生を駅まで送って帰ってきたのでした。彼は新幹線で京都に向かいました。
昨夜は、秋葉原では店がわからなくて、研究を一緒にしたことのある大学の友達に助けを求めたということでした。
「エドウィン先生の部屋には、朝方まで明かりがついていて、ずうっと起きていらしたようですよ。出がけに、これをめぐみ先生にわたしてほしいとスマホを頼まれました」
「ありがとうございます」とめぐみ先生は言って、「そのスマホ、動いていますか」とききました。
「見たところ、真っ黒ですけれど」
「右横にあるボタンを押してみていただけますか」
「右ですね」
とおばあちゃんがたしかめました。
「はい。右です」
「あっ」
という声がきこえました。
「明るくなりました。緑色です。時刻が出ています。あっ、消えました」
ということは、動いています。
いつき先生のスマホが生き返ったのです。
えっちゃん、すごい、とめぐみ先生は思いました。
今日の午後、そのスマホを取りに行くことになっています。だからうれしくて、それが顔に出ていたのを生徒に気づかれてしまったのでした。




