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51 高級品は苦手です

 お好み焼きを食べ始めると、

「私って、はっきり言い過ぎる?」とルツ子さんが言いました。


「日本人では、珍しいかもしれません。でも、わたしは好きです」

「前は違ったのよ。警官になって、性格、変わったの。変わろうと努力したの」

「努力して、変われるものなのね」

「できるみたいですよ」


 めぐみはあまり食べる気がしないのに、ルツ子さんは食欲があります。

「ここまで会いに来てくれるんだもの、エドウィンさんはめぐみさんのことがすごく好きなんでしょうね」

「仕事で来たんですよ」

「会いにきたって、言ってましたよ」

「本当ですか」

「彼と結婚するんですか」

「ほんとうに。ルツ子さんははっきり言う人ね」とめぐみが笑いました。


「えっちゃんは兄の友達。わたしを妹のように思って、心配してくれているのよ」

「そうかしら」


「そうよ。ソフィアというガールフレンドがいるんだし」

「そうなの。どこに」

「フランス」

「そうなの?写真、見ました?」

「兄が見たと言っていたわ」

「そうだよね。彼なら、ガールフレンドのひとりやふたりいても、不思議ではないわ」


「でも、もし、申し込まれたら、どうするの?」

 とルツ子が迫ります。

「ルツ子さんは、本当に、はっきりきく人ね」

「めぐみさんは嫌いじゃないのよね、はっきり言う人が」

「そう。でも、わたしにはここに仕事があるし」

 めぐみは箸で、お好み焼きのはじっこをつまみました。


「だから?」

「だからって、考えてもみて。あっちは天才で、世界から注目されている人。そういう人と、このわたしが暮らしていけると思う?時々会うのではなくて、毎日だとしたら、そんなことできる?」

「できない?」

「できないわよ。世の中、好きなだけでは、結婚できないの」


 めぐみは母親の話をしました。

 ママはふだんは茶碗やグラスなどを割っことがありません。

 ふだんには、ふつうの食器を使っていたので、割ったとしても、問題ではないのですが。


 家には、オーストリアで買ったクリスタルのワイングラスがありました。

 手作りの高級品で、特別なパーティの時にだけ使いました。ママはこのグラスには特別に気を使い、ぬるま湯でていねいに洗って、大切にしていました。それなのに、大切なグラスだけは、なぜかよく割ってしまうのです。

 緊張しているので、テーブルに並べたりする時に、落としてしまったりするのです。いくつも割って、もうセットで使えなくなった時、ママはほっとして、もう高価なクリスタルはいやだと言いました。


「わたしは母のDNAをもっているから、高級品は向いてはいないわ。緊張して、失敗してしまうタイプだもの。いつかは結婚したいけど、普通品がいい。バーゲン品でもいいよ」


「おもしろい人ね。でも、もし私がめぐみさんで、彼に申しこまれたとしたら、うーん」

 ルツ子さんが天井を見て、考えています。

「どうしますか」

 めぐみはルツ子さんの答えには、興味があります。


「私なら、イエスですよ」

「クリスタルはこわくないのですか?」

「人間クリスタルは、そんなに簡単にこわれはしないわよ」

「そうでしょうか」

「考えたら、私、高級趣味すぎて、だめになっていたのかも」

「へー」

 ルツ子さんは時々、襲撃発言をする人のようです。


「めぐみさん、人生は冒険よ。チャレンジ」

 ルツ子さんのほうが張り切っています。


 夕食を食べ終わって後片付けが終わった頃、エドウィンから写メが届きました。

 彼が無事なことがわかって、めぐみはほっとしました。すると、急にお腹がすいてきました。


 写真の中ではエドウィンは知らない男性と笑顔で写っています。

「だれですか、この人は」とルツ子さんが指をさしました。

「知らないです」


 ルツ子さんは写真に目を近づけて、テーブルの上を見ました。

「これ、もんじゃ焼きだわ」


 どうしてエドウィンが知らない人ともんじゃ焼き屋にいるのでしょうか。

 まいったね、とめぐみは頭をかかえました。


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