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49 冷たいですか

 ルツ子巡査と子供たちが帰っても、エドウインは戻っては来ません。家の静けさが増して、めぐみの不安もつのりました。


 めぐみは「困った、困った」と言いながら、おばあさんみたいに手を後ろに組んで、部屋をぐるぐる歩き回りました。


 ソファに座ってテレビをつけても、すぐに消し、マガジンをめくっても、読む気にはなりません。

 音楽も、今はうるさいだけです。

 どうしちゃったの、えっちゃん。


 ピッ。

 待ちに待った着信音が鳴って、めぐみはスマホに飛びつきました。


「今夜は戻れないから、ひとりで食べて。ソーリー」と書いてあります。

 ええっ。


 今、どこにいるのか、

 夜はどこで食べるのか、

 そういうことはなにも書いてありません。


 あの時刻から秋葉原に行き、ツールを探して帰ってくると、夜中になるのは確かです。

 数学の天才なのに、そういう計算はすぐにはできないの?

 めぐみはカリカリしました。


 せっかくお好み焼きを用意したのに。

 モンブランもあるのに。


 でも、そんなことはどうでもいい。

 無事で帰ってくれさえすれば、怒らないことにしようと決め、「安全ドライブでね」とメッセージを送りました。


 それでは、ヨガでもして、心を落ち着けようと思いました。でも、うまくはいきません。

  7時になった時、ルツ子さんから電話がきたので、エドウィンは無事ですが、今夜は戻れそうにもないみたいですと伝えました。


 それで、「お好み焼きを食べにきませんか」と誘ってみると、「遠慮なく、行かせてもらいます」と元気な答えが返ってきました。

「今、帰り支度をしていたところなので、これから自転車で向かいます」


 ルツ子さんは20分ほどで到着しました。

 今晩、子供たちを連れてきてくれたお礼を言って、あのいつきさんのスマホが戻ってきたことを報告しました。


 いつきさんのお母さんが修理にだしてくれたのだけれど、直すことができなかったこと。

 そのスマホをエドウィンが見て、修理をすると言い出したこと。

 それで、それ用のツールを買いに町まで行って帰ってくるはずでしたが、どういうわけか秋葉原に行くことになってしまったことを話しました。


「ゾーンにはいっちゃったみたいで」

「ゾーン?」

 めぐみはゾーンにはいるというのは、ひとつのことに夢中になることだと説明しました。エドウィンは没頭すると、いろんなことを忘れてしまう傾向があります。

「それに、直すことが好きな人なのよ」


「めぐみさん」

 とルツ子さんがきびしい顔をしました。

「こんなことを気分を害すかもしれませんが、めぐみさんのその言い方はちょっと冷たいですよ」



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