46 えっちゃん、ようこそ
めぐみは白いSUVを運転して、エドウィンを迎えに行きました。それは前に注文しておいた新車で、最近届けられました。
来年はこれを運転して、知らない土地の山にも出かける計画です。
それにこの車で、生徒を連れて出かけることがあるかもしれませんから、桜の頃が楽しみです。
めぐみは平家山派出所に行き、ルツ子巡査にお礼を言い、エドウィンをピックアップして、家に帰りました。
郵便受けにクッション付きの四角い封筒がはいったので、めぐみはその送り主を見て、ああ、あれだという顔をして、カギをあける時に、それを顎の下にはさみました。
「落とすよ」
エドウィンがそう言って、封筒を手に取りました。
「それ、もう壊れてるの」
めぐみが仕方がないよ、という顔をしました。
「なに?」
「スマホ」
彼は、派出所で聞いたあのスマホのことだとわかりました。
「ウェルカム、えっちゃん」
家にはいると、めぐみが言いました。
「はじめまして」
「おじゃまします、だよ」
「ぼく、じゃまなの?」
「えっちゃんはおじゃまじゃないよ。ウェルカム。わたしの家に、よくきてくださいました」
「ありがとう。メグ、おじゃまします」
めぐみが愛子ちゃんの店で買ってきたお好み焼きの具材を取り出しました。
「お風呂にはいる?」
「どうして?」
「寒くない?」
エドウィンが不思議そうな顔をしています。
ああ、そうかとめぐみは気がつきました。
「うちでは寒い日に、パパが外から帰ってくると、ママがお風呂にはいるってきいていたから。久しぶりにえっちゃんに会って、なんか昔に戻っちゃったわ」
「そうか、はいるよ」
「いいよ、お風呂は取り消し。では、食事の支度ができるまで、リラックスしていて」
「問題のビデオはどこ?」
「少し歩いてみたけど、ここは天国だね」
ビデオをテレビにつなぎながら、エドウィンが言いました。えっ、とめぐみが振り向きました。
「それはえっちやんがスタレンジャー(訪問者)だからよ」
どういう意味なのだろうとエドウィンは考えました。
「住んだら、ヘル(地獄)なのかい」
「そうじゃないけど」
「すごい、見て」
めぐみが待ちきれずに封筒をあけたら、何重にもぐるぐる巻きにされた包みが出てきました。
「すごいね。そのバフルラップ、日本語ではなに」
「プチプチシート、かな」
「かわいいね、プチプチなんて」
めぐみははさみではじを切って、中のスマホを出そうとしますが、手こずっています。
「ぼくがやろうか」
「じゃ、お願い。わたしは夕食の準備をします」
プチプチシートは2メートルくらいありましたが、ようやく黄色いケースのスマホが出てきました。
「出たよ」
とエドウィンが言いました。
めぐみはキッチンから急いでやってきて、スマホを手にして、懐かしそうに見ていました。
「いつきさんのスマホなんだけど、もう動かないの。いつきさんのお母さんが修理に出して、ガラスやフレームは取れ替えてもらえたんだけど、全然、反応しないって」
「さっきのポリスがそんなこと、言っていた」
「ルツ子さんがずっと保管していてくれたのよ。それを生徒が見つけてくれて、ほんと、奇跡かと思った。でも、そこまで。スマホも死んじゃったわ」
エドウィンはスマホを手にとって、サイドボタンを押したり、背面に目を近づけたりしました。
「ツールある?」
とエドウィンがききました。




