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41 エドウィンが一番難しいと思ったこと

 エドウィンが急に現れたので、めぐみ先生はあわててしまいました。


「今の話、聞いていなかったよね」

 めぐみ先生が早口の英語でききました。

 聞かれて悪い話ではないけれど、なぜか恥ずかしいと思ったからです。


「ぜんぜん、きいていなかった。ブラッキーの話なんか、きいていなかったよ」

 エドウィンが日本語で、それも大きな声で言ったので、生徒たちは「きいてた」、「きいてたじゃ」と大喜びです。


 めぐみ先生はエドウィンを黒板の前に招きました。

 とてもいい話だったよ、とエドウィンはめぐみ先生の肩をぽんと叩いたので、生徒たちはまた喜びました。


「エドウィン先生、大学の数学の先生です」とめぐみ先生が紹介しました。

 生徒たちは「エドウィン先生は天才なんじゃ」、「天才なんじゃ」と言いました。


「ぼくがエドウィンです。でも、天才じゃないよ」

「ホンモノの天才は、自分で天才と言わないもんじゃと、おじいちゃんが言っていたから、エドウィン先生はホンモノの天才じゃ」とれいかが言いました。


「時々、ぼくを天才と呼んでくれる人がいるけど、でも、ほとんどの人はぼくが何をしているのか、知らないんだよ」

「それが天才じゃ、藤井聡太大先生も、そうじゃ」とそう太郎が言いました。


 めぐみ先生はエドウィンに、藤井さんは若いのに、将棋のチャンピオンなのだと説明しました。


「大先生の将棋はむずかしいから、たいていの人はわからないんだけど、でも、天才だというのとはわかるんじゃ」とそう太郎が言いました。

「その言葉で、藤井さんがどんなにすごい人かわかったよ。3年生なのに、うまく説明したね」とエドウィンが驚いたので、天才からほめられて、そう太郎はうれしい気持ちになりました。


「名前は?」

「そう太郎」

 みんなが、れいか、愛子、明夫、くるみ、和歌と次々に名前を言いました。

 エドウィンが「そうたろう、れいか、あいこ、あきお、くるみ、わか」とリピートしました。

「さすが天才」と生徒たち。

「このくらいは誰でもできるよ。ぼくは、名前をおぼえるのが得意じゃないよ。えーと、このクラスの先生の名前は、なんだったかな」

 また生徒たちが笑いました。


「エドウィン先生にできないことって、ありますか」と愛子がききました。

「あるよ。たくさんあります」

「それは、何ですか?」とくるみです。

 エドウィンはうーんと考えました。


「やっぱりできないこと、ないんじゃ」とそう太郎です。

「先生が、一番むずかしいと思うことは何ですか」とれいかがききました。

「一番、むずかしいこと」とエドウィンが繰り返し、

「ああ、わかった」と言いました。


 生徒たちがエドウィンを見つめています。

「一番むずかしいのと、東京駅」

 とエドウィンが答えました。


「どうして東京駅がむずかしいの」と和歌が言いました。

「東京駅にむずかしいことなんか、あるかなぁ」とそう太郎です。


「東京駅は、出口が見つからない」

 とエドウィンが困った顔をしました。


 エドウィンは、東京駅は迷路で、さっぱりわからないと言いました。

 改札口が2回あったり、切符を重ねていれたりして、やっとホームから出たと思ったら、今度は出口が見つからない。矢印にしたがって行っても途中でわからなくなり、なかなか外へ出られないのです。


 生徒たちも東京駅には行ったことはありますが、そんな経験はありません。

 天才とは不思議な人なのかもしれません。


「東京の町はどうですか」と愛子です。

「全然わからない。だから、タクシーに乗って、まっすぐ大学まで行くんだよ。まだ、ゆっくりと東京の町を歩いたことがない。人の数がすごいよね。あそこには、世界一の交差点があるんだろ。千人以上の人がいっぺんにわたるなんて、すごいなぁ。想像できない」


「それ、スクランブル交差点」

「渋谷」と生徒たちが騒ぎました。

「行ったことないんですか」とれいかです。

「ない。行ってみたいんだけどね」


「めぐみ先生に連れていってもらえばいいじゃ」と明夫が言いました。

「そう。ふたりで行くのがいい」とくるみ。

「それは、いい考えだね。先生、お願いします」とエドウィンが言いました。

 生徒たちはクスクスと笑い、めぐみ先生がちらりとエドウィンを見て、にらみました。

 

「エドウィン先生の、一番ハッピーだった日はいつですか」と愛子がききました。

 めぐみ先生も彼の一番ハッピーたった日のことを聞いてみたいと思っていたので、よい質問ねとうなずきました。

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