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37 ようこそエドウィン先生

れいかのおばあちゃんは朝は早くから起きて準備をし、成田空港に向かいました。おばあちゃん、ものすごくはりきっています。


 成田空港には到着時刻の1時間以上も前に着きました。

 空港は好きなので苦にはなりませんが、店をのぞいていてもそろそろして、心が落ち着きません。


 おばあちゃんはめぐみ先生にもらったエドウィン先生の写真でその顔を確認して、

「Welcome Dr. Edwin (ようこそ エドウィン先生)」と書いたボートを取り出しました。これを抱えて、待つつもりです。

おばあちゃんがエドウインの顔はわかっていても、彼のほうがおばあちゃんの顔を知らないからです。


デジタル時刻板に、ニューヨークからのフライトが到着したという知らせがありました。もうすぐです。


今は税関のところかしら、今は荷物のところかしらとおばあちゃんはどきどきしてきました。


出口のドアがひらいたり、閉じたりして、乗客が次々とロビーに出てきました。迎えの子供が駆け寄ったり、中には花束をもって待っている人もいます。


ジーンズをはいて、革ジャンパーを着た青年が現れました。白いシャツの首のところにサングラスをはさみ、首にはゴールでのチェーンがぶら下がっています。どこかの国のロックスターかしら、とおばあちゃんは思いました。


そのロックスターがおばあちゃんに近づいて来たので、おばあちゃんが道をあけました。すると、彼はもっと近づいてきて、「ナミエ―」と名前を呼んで、両手を広げて、おばあちゃんに抱きつきました。


 おばあちゃんの名前は「畑野奈美恵はたのなみえ」ですが、大人になってから、「ナミエ」と呼ばれたことは一度もありません。

 今は「おばあちゃん」とか、「ばあさん」です。

 それなのに、突然、若いイケメンから名前で呼ばれて、ハグされたので、おばあちゃんはびっくりです。

 その抱きついた青年が、エドウィンでした。



 めぐみ先生から聞いていたエドウィン先生とは全然違うと思いました。写真とも、似ていません。おばあちゃんはノーベル賞の「湯川秀樹ゆかわひでき」のよう先生を思い浮かべていたのです。


 エドウィンは迎えにきてくれたお礼を言って、帰りは自分が運転すると言いました。

「でも、日本はハンドルが違うでしょう」

 アメリカは右側通行で、左ハンドルです。

「それは、大丈夫」

 彼は日本語ができました。


「道も難しいし」とおばあちゃん。

「GPSがあるから大丈夫」

「GPS? 」

「ぼくがもってきたから、大丈夫」

 彼は何でも大丈夫というのですが、本当に大丈夫なのかしらとおばあちゃんは心配です。


 荷物も自分だけで運び、エレベーターには先に乗せてくれて、車のドアもあけてくれます。そういうことには慣れていないので、おばあちゃんは恥ずかしかったのですが、でも、レデイになったよい気分のところもありました。


 車の中で落ち着いてその顔をよく見ると、若い時のレオナルド・ディカプリオに似ているではないですか。世の中には、頭がよくて、顔がよくて、性格もよさそうなこういう人がいるものなのだとおばあちゃんは感心しました。


「エドウィン先生、あれが○○ビルですよ」

 おばあちゃんは車の中で、彼に何度か説明をしました。

「エドウィン先生じゃなくて、エドウィンでお願いします」

「じゃ、エドウィンさん」

「さんもいらないです」

 おばあちゃんはちょっと考えて、日本では呼び捨てにしないから、「さん」なしでは言いにくいことを説明しました。


「じゃ、えっちゃんは? メグがそう呼んでいるよ」

 そういうわけで、エドウィンは畑野家でも、えっちゃんと呼ばれることになりました。


 家に着くころには外は暗くなっていましたが、何事もなく、スムーズに、到着しました。

 えっちゃんがシャワーにはいって着替えている間、おばあちゃんは夕食をテーブルに並べました。


「えっちゃん、夕食ですよ」とおばあちゃんが呼びました。

 えっちゃん、よい響きです。


「はーい。今、行きます」という若い声が聞こえました。

 おばあちゃんはますますやる気がわいてくるのを感じていました。

 全然疲れていません。今から一度でも、二度でも、空港まで行けそうな気分です。


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