27 Now or Never
「れいかちゃんがスマホを見つけてくれたのね。ありがとう」
めぐみ先生がお礼を言いました。
「You are welcome」とれいかが英語で答えました。
「私も、英会話を習うことにしたんですよ」とおばあちゃんが言いました。
「わしとれいかで習おうとしたら、ばあさんまで習うというんじゃ」とおじいちゃん。
「どうして急に」とめぐみ先生がききました。
「前から習いたかったんじゃが、いつやるか、今でしょ」とおじいちゃんが笑いました。
「私もボランティアで外国人のお世話をさせてもらっているのですが、英会話をきちんと習ってみたかったのです」とおばあちゃん。
「おばあちゃんが一番、熱心で、覚えが早いの。次がわたしで、おじいちゃんは」
「先生、今でしょ、は英語でなんですか」
おじいちゃんが言葉をさえぎりました。
「それはIs it now?ですよね」とおばあちゃん。
「それもよいですが、この場合はNow or Neverがよいかしら」
今しなければ、もうしない、というような英語です。ナウ、オァ、ネバー。
「Now or Never」とおじいちゃんが繰り返しました。
「これはいい。Now or Never」
「ところで、富士登山の準備はどうですか」とおじいちゃんがききました。
「トレーニングはしていますが」
「誰と行かれるんですか」
「友達です。アメリカ人の。正確には、今はアメリカ籍ですが、旧ソ連の国の人です」
「男性の方ですか」
「はい。兄の友達です」
「何をなさっているんじゃ」
「大学で教えています。数学です」
「頭のよい方ですね」
「はい。18歳でアメリカにやってきて、22歳で教授になった人で、数学の天才と言われています」
「どこの大学ですか」
「前はハーバードで、今はコロンビア」
「ハーバードとはすごい。世界一の大学じゃ」とおじいちゃんが驚きました。
「その人、日本に来たら、どこに泊まられるんですか」とおばあちゃん。
「エドウィンというのですが、わたしはえっちゃんと呼んでいます。えっちゃんはうちに泊まる予定です」
「そのえっちゃん、うちに泊まってはもらえないでしょうか」とおばあちゃんが言いました。
「それはいい。狭い田舎だから、そのほうがいい」
「どうしてですか」
「噂になりやすいんじゃ」
「うちには部屋もありますし、わたしは噂とか気にしません」
「先生は気にしなくても、世間が気にします。ぜひ、その天才先生にきいてみてください」とおじいちゃんが推します。
めぐみ先生はすぐにえっちゃんに、ポリスチーフが家に泊めてくれると言っているけれどどうする?とテキストを送りました。
すると、すぐにえっちゃんから電話がかかってきました。
「メグ、それに何か悪いことしたの?」
「どうして」
「だって、ポリスチーフのところにいるんだろ。どんなことをしたの?」
「何もしてない。ポリスチーフは生徒のおじいさん。えっちゃんこそ、ポリスがこわいの?」
「こわくないよ。世の中、出会いがすべて。出会いがすべてのはじまりだ」
「えっちゃん、新しいアニメ見た?またパクってる?」
「ぼくが何か言うたびに、パクリというのはやめてください。新しい出会いは楽しみだよ」




