表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/85

23 めぐみ先生、寝坊しちゃいました

 めぐみはエドウィンに、「山に行っている」とメールを書いたことがありましたが、登山していたわけではなく、冨士山とは比べものにならないほどの低い山で、スマホをさがしていただけです。


 それがコーリーが死んだと知って大ショックだった直後、「富士山で朝日を見て、命を祝おう」というところを読んで、 衝動的に「イエス」とメールをしてしまいました。元旦に、富士山で、命を祝いたいと思ったからです。


 でも、考えてみると、富士山登山というのは大きなプレッシャーです。

 めぐみ先生はもともと運動は得意なほうではなくて、走りも遅いし、脚力きゃくりょくにも自信がありません。

 昔よりは、ずいぶんと歩けるようになったのはたしかですが。


 だから、それ以来、めぐみ先生は富士登山をめざして、時間があると登山靴をはいて、トレーニングしているのです。

 青ヶ岳でも大変なのですから、富士山は大丈夫かなぁという不安はあります。でも、サイトを調べると、年寄りでも、子供でも登れると書いてあったで、力づよいです。


 日曜日には重い荷物を背負って山に登る訓練をしているので、月曜日の朝は起きるのが大変です。いつも起きるのは苦手なのですが、月曜日の朝は特にしんどいです。


 今朝も目覚ましの音で一度は起きたのですが、あと5分だけと思ったのが大間違い。はっと目をさましたら、もう学校が始まっている時刻でした。

 あー、やってしまいました。まいったね。


 歯だけはみがいて、髪の毛は手でなでつけて、めぐみ先生は走りました。どっかの犬が飛ぶようにして追いかけてきました。犬は大好きですが、かまっているひまはありません。


 でも、あわてると悪いことは起こるもので、道の途中でころんで、身体が宙を飛びました。

 まずい、いたい、と思ったら、ズボンの左ひざに穴があいていました。怪我をしたかもしれないけど、たしかめる時間がありません。


 めぐみ先生が足を引きずりながら、それでも学校をめざして全速力で走っていくと、校門のところで、子供たちが手を振ってかん声をあげていました。マラソン大会の応援みたいです。

 ゴールにいるのは、クラスの子供たちです。

 

 ひとり、ふたり、3、4、5、6人、

 あらっ、和歌ちゃんまでいます。

 れいかがにこにこしています。


 めぐみ先生は息が上がって、言葉が出てきません。

「先生、きたじゃ。3年も待てんけん」と和歌が言いました。


「先生、顔がよごれています」と愛子が言いました。

どうもころんだときに、顔に、泥がついたみたいです。

「そんな顔じゃ、よめにいけねー」と明夫が言いました。

「どして、余計なことばかり言うんじゃ」とくるみが明夫を叱りました。


「先生、わたし達はちゃんと自習しているから、顔を洗ってきたらいいじゃ」

 とれいかが言いました。

 ほんと、どちらが先生なのか、わかりません。

「これは、まいったね」とめぐみ先がつぶやきました。

 れいかには何かよいことがあったらしく、にこにこが止まりません。


 めぐみ先生は職員室に行き、顔を洗いました。そして、足にけがをして血が流れていたので、保健室に行きました。

 中田道子が消毒をして、ばんそうこうを貼ってくれました。そして、ズボンのほころびを直してくれると言いました。


「本当に、ポンコツですみません」とめぐみ先生が言いました。

「そんなとこないわよ。そのくらいでちょうどいいのよ。あまり先生が引っぱりすぎると、外からはよいクラスに見えるけど、生徒に自主性がなくなるもの」

「そうでしょうか」


 中田先生が中学生だった時の話をしました。

 先生の学校は大きくて、1学年が、3クラスありました。

 ある時、担任が引率して登山に行くことになりましたが、クラス全員が登ったのは中田先生のクラスだけ。でも、担任は途中で、棄権ギブアップしたのです。それを見た生徒が、担任のためにもとがんばったのでした。他のクラスは担任は上まで行きましたが、登れた生徒は半分くらいでした。


「はぁ。そうですか」

 中田先生が励ましてくれているのはわかりますが、めぐみ先生は喜んでいいのかどうか、わかりません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ