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22 エドウィンからの手紙

エドウィンの手紙にはこう書かれていました。


「メグ、ニューヨークの夜は暑いけど、そちらはどうですか。

山登り、楽しんでいますか。


今夜はメールではなくて、手紙を書くことにしたよ。ペンをにぎって、メグに手紙を書くなんて、はじめてだよね。


メグはこの知らせを聞いたらまたショックを受けるかもしれないと思ったけど、でもどんなに悲しくでも、知らせるべきだと思ったので、手紙を書くことにしたんだ。


数日前、ぼく達の大切な友達のコーリーが死んだよ。

病気ではなかったんだけど、突然に。


今夜、葬式代のための募金チャリティがあってね、グリニッチビレッジのクラブに行ってきたところなんだ。

ぼくはこのところ忙しくて大学とアパートの往復だったから、ああいう場所は久しぶりだった。

ニューヨークの夜は眠らないって、ほんとうだね。


コーリーはBig Music Head (音楽が大好きな人)で、ぼく達はJDがスピンする(レコードをかける)ライブショーに一緒にでかけたよね。

ロックコンサートにも、つれていってくれた。

彼は本当によい人間で、いつも微笑んでいたよね。


彼はたぶん30歳半ばで、ホテルで荷物を運んでいたと今夜、はじめて聞いたよ。

ぼく達は仲がよかったのに、何歳で、仕事はどうとか、そんな話をしたことがなかったよね。音楽の話ばっかりだった。彼は音楽のエンサイクロペディアで、いろんなことを教えてくれた。


今夜、クラブに行って驚いたよ。

ニューヨーク中の有名なDJがみんな来ていて、彼の好きな音楽を流していた。マッドヴィリアンとか、ウータン・クランなどの曲をね。

集まった人はみんな、その音楽に耳を傾けて、コーリーのことを思っていた。

なんと言えばいいのかな、部屋には愛があふれていた。


コーリーを送りだすには、これ以上の方法はないよね。

彼はこんなにもたくさんの人に愛されていたんだと思った。


ぼくは30分くらいでクラブを出たんだ。

コーリーのことが思い出されて、泣きそうになってしまったから。

外に出たら、もう涙が止まらなかった。号泣ごうきゅうだよ。

歩いていた人が変な顔をして、振り返っていた。


ぼくは18歳でアメリカに来てから9年になるけど、これまで一度も泣いていないんだよ。

それなのに、どうしちゃったんだろう。


ぼくはアパートに戻り、こうやって手紙を書いている。

流れているのが汗なのか、涙なのか、わからない。


彼の音楽がまだ頭の中でスピンしているから、うまく書けているかどうかわからない。

でも、手紙が届くまでには5日くらいはかかるだろう。

メグは手紙を受け取ったら、いろいろときいてくるだろ。

それまでには、少しは落ち着いていることを願うよ。


同封したのは今夜のチャリティのちらしだよ。

「Life Celebration for Cory」

(コーリーの命を祝う会)と書いてあるだろ。

右上で、コーリーが笑っている。

いつもの笑いだよね。

全く、人生はわからない。


ところで、ぼくは暮れに、また日本に行くよ。京都の大学から招待されているんだ。

その時、元旦に、富士山で、初日の出を見たいと思っているんだ。

世界でどこよりも早く、太陽が昇るんだよ。

死ぬまでにやりたいことのひとつなんだ。

京都の大学に山登りが好きな教授がいて、いろいろ教えてくれたんだ。

冬山に登るには特別な許可が必要だけど、彼が取ってくれるって言っている。

大晦日に登って、山小屋に泊まり、早朝に頂上を目指すんだよ。

想像するだけで、わくわくする。


いつかは登りたいと思っていたけど、今年登ろうと決めた。さっき、決めたんだよ。

メグ、一緒に登ってくれないかい。

メグは山登りが好きだろ。富士山はまだなんだろ。

山小屋はこちらで取るから、一緒に登ろうよ。

朝日を見て、命を祝おうよ。


Cheers (かんぱい)

エドウィン」

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