11 「リバー先生の昆虫楽しい」
めぐみ先生がプロジェクターを映すためにスクリーンを、スキーをかつぐようにして運んで教室にはいってきたので、生徒たちは喜びました。映画を見せてくれるのかな。生徒たちは新しいことが大好きです。
「みなさん、夏にはアゲハチョウやモンシロチョウがたくさん飛んでいましたよね。見ましたか」
みんなが「はーい」と元気に手をあげました。
「では、チョウチョを卵から育てた人はいますか」
今度は、だれも手をあげません。
「育てたことはなくても、チョウチョの卵のことをよく知っていますか」
「はーい」
手をあげたのは明夫と愛子のふたりでした。
「では、きょうはチョウチョがどのようにして育っていくのか、見てみましょう。おもしろいですよ」
3年生では「蝶の一生」が教材にあり、DVDも用意されているのですが、昨夜、めぐみ先生がユーチューブでプレイリストを検索してみると、「リバー先生の昆虫たのしい」というシリーズが見つけました。リバー先生と名乗っていますが、日本人です。
どこかで聞いたことのあるようなタイトルですが、見てみるととてもおもしろいので、その動画を生徒たちに見せることにしたのです。
その動画は、アゲハチョウの紹介から始まります。
アゲハチョウはいろいろな葉っぱの表や裏に卵を産みます。
画面の中で、黄色い玉が光っています。
「卵は小さくてまるくて、まるで水滴とかあめ玉みたいだろ。色は黄色で、バターみたいだね。キャベツの葉にはよくついているから、見てごらん」
画面の中でリバー先生が言うと、
「はーい」
教室の生徒たちが声を出しました。
「でも、全部のチョウチョの卵がこんな色で、こんな形というわけではないんだよ」
アゲハの卵は3-4日すると、卵が変化して、毛虫になりました。
「虫はきらいだなんてさけんだの、だれかな」とリバー先生が言ったので、みんなは声が聞こえてしまったのかとぎくっとしました。
毛虫は3-4日ごとに姿を変えて、つまり脱皮して、草をどんどん食べて、大きくなっていきます。
「だんだんグロテスクになるけど、ちょっと待って」
とリバー先生が言ったので、生徒たちはがまんをして待ちました。
そんな脱皮を3-4回くらい繰り返すと、グロかった虫が、ついに緑色の青虫になりました。
「ほら、青虫になった。きれいだろ。誰だ、くねくねしていて、きもちが悪いといっているのは。ちょっと待って」とリバー先生が言うと、生徒が笑いました。
青虫は地面をゆっくり移動して、木の枝や、かべなどにはりつきました。
「青虫は、家さがしをしていたんだよ。いや、病院さがしかな。そこで、赤ちゃんを産むんだよ」
リバー先生が「ちょっと、待って」というところで、生徒が声を合わせて「ちょっと待って」と言いました。すっかり参加型クラスになりました。
1週間くらいすると、さなぎの中から、チョウチョが現れました。
「すごいだろ。あのバターみたいな玉が、わずか1ヶ月くらいで、こんなきれいなチョウチョになるんだから」
みんながうなずきました。
「ようやくチョウチョになれたと思っても、2週間くらいで死んでしまうんだよ。短い一生だよね」
生徒は短いチョウチョの生命のことを思って、悲しくなりました。
「でも、その間に結婚して、たくさんの卵を残していくんだよ。その卵が、またチョウチョになるというわけだ。こうやって、命は切れないで、続いていくんだよ。すごいだろ」
生徒たちは拍手をしたい気持ちになっていました。
アゲハチョウは1年に4回ほど卵を産むけれど、全部のチョウチョがそうではなくて、1年に1度しか卵をうまないチョウチョもいるし、もっともっと長く生きるチョウチョもいます。
「みんなの中で、チョウチョは冬はどうしているのかと思っている人、いるかい」
生徒たちが手を上げました。
「チョウチョは冬眠するんだよ。卵で冬眠するチョウチョもいるし、幼虫やさなぎ、成虫のままで、じっとこらえて春を待つチョウチョもいるんだよ。どこかでそんな卵を見つけたら、うちに連れてきて、育ててみるといい。いろんな発見があるから、昆虫はたのしいよ」
というところで、リバー先生の動画は終わりました。
「わたしは昨日、平家山でこんな卵を見つけました」
とめぐみ先生がスマホの写真を見せました。
茶色の小さな卵で、小さな毛がはえています。
「これはアカシジミというチョウチョの卵だと思うのよ。とてもきれいなオレンジ色のチちょうなの」
めぐみ先生は部屋のミカンの木の葉にのせてきたから、幼虫になったら、みんなで観察しましょうと言いました。
「先生はチョウチョが好きなんじゃなぁ」と明夫が言いました。
「先生には昆虫学者の友達がいたんですよね」と愛子です。
「そうよ。大学で昆虫を研究していて、本をだしているの」とめぐみ先生は少し自慢顔です。
「日本のファーブル先生じゃ」とそう太郎が言いました。
ファーブル博士は世界的に有名なフランス人の学者で、「昆虫記」を書きました。
「ファーブル先生は、ハードルが高すぎ」
めぐみ先生が苦笑いしました。




