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男飯食堂、神代亭へようこそ!  作者: 一之瀬 葵翔
第二章:おっさんと異世界

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異世界うなぎ焼いてみました

話に出てくるうな兵衛の先代は神代亭のおまけ、で以前投稿した話に登場してます。

昨日おまけも更新してますのでよろしければそちらも……。


最近は転職先の勤務体系に身体が合わずで休みの日は割と寝込んでます。

自律神経がなかなか調子悪いみたいで、頭が働かなかったり。

他にもやることたくさんでなかなかしっかり更新できず申し訳ない。

「遠慮、せず! い、く、ぞ!」


『みんなにも食べさせてやろうな、悟志!』


「ウナベエのじーちゃん喜んでくれるかな?」


『絶対喜ぶぞ! がんばろうな、シェラタン!』


「うん!」


 本日悟志はゴン太と一緒に異世界へ。

 お供はシェラタンとルプス。

 以前食事をふるまったアリーリャの領地、そこにある川でとれるニョロリなる生き物。

 乃亜が以前ゴン太とやってきた時に、うな兵衛の先代が調理して出したと聞いたそれ。

 写真を見せてもらうと丸々と太ったウナギそっくり。しかも大きい。

 味もウナギと全く同じ、不思議な異世界ウナギ。

 川にたくさんいると聞いて、獲らせてもらえないか聞いてみたところ。

 この前のごはんのお礼もできておりませんし、構いませんわよ。資源保護のためにご自身やご家族で食べる分までとさせていただきますが。

と、アリーリャから許可が出たために獲りに来た。

 ゴン太が悟志を異世界に連れてこられるようになったのと同時。

 ゴン太だけなら異世界との往復に回数制限がなくなったため、手紙でやり取りをすることができるようになった。

 ちなみに異世界の言語はゴン太のおかげで会話はできるが、書くのはできない。

 手紙は異世界言語に明るい乃亜が代わりに書いてくれていた。


『ゴン太さん、見張りは任せてください!』


『おお、頼んだぞルプス!』


 悟志たちに危険がないように見張りをするのはルプス。

 川を覗くと、真っ黒な塊。ニョロリの群れだった。


「あのね、群れの後ろに網を入れてすくうとたくさん獲れるんだよ!」


 得意げにそういったシェラタンが手本を見せると網の中にたくさんのニョロリ。

 悟志の目標は十五匹。

 神代家の四人とゴン太が二匹ずつ。

 一匹くれるなら焼いてやるぞ、といったうな兵衛の先代に。

 桃叶が出かけた先のあいつも来るに違いない。

 乃亜も今日は友達のところに少し顔を出すと言っていた。

 もしかしたら連れてくるかもしれない。

 それより少し多めに用意しておけば大丈夫だろう。


「すごいな、じゃあ俺も負けないように……」


 シェラタンの成果に素直に感嘆すると、真似するように悟志も網を川に入れて掬いあげる。


『おお! 悟志もすごいな!』


 ゴン太がわんと吠えると、網の中には立派なうなぎ、もといニョロリ。

 すぐにクーラーボックスに移しながら数えると八匹。


「やば、あと一回網入れたらもう目標達成だ。意外とすぐに終わるもんだなぁ」


『こっちの魚よりも危ないのを感じないんだろうな』


 ふんふんと匂いを嗅ぎながら悟志の呟きに答えるゴン太。

 たくさん獲っても川に戻すだけ、もう一度川に向かおうとするシェラタンを悟志は呼び止める。


「シェラタンくん、あっという間に集まりそうだから一回休憩しよっかー! ジュース飲んでお菓子食べよう!」


「お菓子! 食べる~! ルプス、おやつ!」


『異世界の菓子か! カステラってやつはあるか?!』


「ああ、あるよ狼さん」


『感謝するぞ、悟志さん!』


 少し離れていたところにいたルプスもシェラタンの呼びかけにすぐ戻ってくる。

 リアカーに積んでいたテーブルとパラソルを立てて、悟志はシェラタンを座らせた。

 ルプスが悟志をさん付けする理由。それはケモノの序列に関係する。

 シェラタンに仕えるケモノたちよりも犬の神であるゴン太は格上であり、その格上を従える悟志はさらに上なのだ。

 だから主ではない悟志の命令を聞くことはないが、格上である以上敬意は示す。

 もっとも悟志と初めて会った日、不遜な態度を取った瞬間にゴン太にわからせられたことが一番の理由ではあるが。

 

「ほら、シェラタンくん。コーラとケーキだよ」


 シェラタンがウェットティッシュで手を拭いたのを確認すると、スーパーで買ってきたフルーツロールケーキを紙皿に移して、使い捨てのプラスチックのフォークと共にシェラタンの前に。

 小さいペットボトルのコーラのふたを開けて、ストローを挿すとそのまま手渡す。


「ありがと、おじさん! ……いただきます!」


 受け取ったシェラタンがそういうと元気よくコーラを一口。

 ケーキをフォークで切り取ると無邪気に食べだした。


「待たせたな、ゴン太。狼さん」


 次に悟志が用意したのはゴン太とルプスのおやつだ。

 まずは木製の大きなボウルに一度沸かした井戸水を注ぐと二匹の前に。

 続いてゴン太には肉屋に分けてもらった骨付き肉を。

 ルプスにはシェラタンのおやつと同じくスーパーで買ったカステラを紙皿の上に乗せて目の前に。


「さ、食べな」


『『いただきます!』』


 悟志のよし、が出てすぐ、尻尾を振りながらかじりつく二匹。

 よく晴れた空を見上げると、深呼吸。


「うちの子たちは今何をしてんだろうね」


 そう独り言つと悟志は、シェラタンと同じテーブルにつき、休憩を始めたのであった。





「お洗濯も終わって外に干したし、お昼は悟志くんのお弁当があるし。あとは悟志くんとおじーちゃんのところに行くまでなんもない! やったー!」


 瑠実は本日お留守番。

 桃叶、乃亜、悟志とゴン太の順に送り出すと洗濯を始める。

 洗濯機が回っている間に風呂とトイレの掃除をしているとあっという間に洗濯が終わり、洗濯物を干す。

 雨が二日ほど続き、溜まった洗濯物も今日でさよなら。

 瑠実の心はとても晴れやかだった。


「さっそく見ていこうね~」


 お菓子と飲み物を適当に棚や冷蔵庫から持ち出すと、自室に戻る。

 エアコンとテレビのスイッチを入れて、瑠実が始めるのはアニメ鑑賞。

 異世界に転移させられた男が自分に与えられたスキルを使って、屋台を引き、お供の魔獣と共に旅をする話。

 どこか主人公が悟志に、最初のお供の狼がゴン太に似ていて好きになった。

 これを見ていると腹が減るからと、あえて録りためて、見る時間を絞っていたものだった。


「わっ! うどんだ! いいなあ~」


 夜、なりゆきで一緒になった冒険者パーティと野営をしているシーン。

 スキルの力とお供の魔獣が強すぎるため夜の見張りは必要ないが、それでもついでだからと一緒に見てくれるお礼にとふるまったうどん。

 それを見た瑠実は思わず声を上げる。

 しかし、瑠実は知っている。

 昨日出掛けた悟志がこっそりとたっけぇ肉を買っていたことを。

 それがたまにうどんやそばを作る時に入れてくれる切り落としの肉だということも。

 悟志は何も言わないがきっとうな丼につける汁物代わりに作ってくれるに違いない。

 普段なら食べたい気持ちが溢れてくるが、今日は大丈夫。


「でも私は今日うな丼とたっけぇ肉のうどんを食べるので~……私の勝ち! いぇ~い! 楽しみ~!!」


 悟志たちが戻ってくるのは神代亭の営業終わりくらいの時間と聞いた。

 それまでのんびりと過ごそう。

 瑠実は大きなクッションに身体を預け、テレビに映るアニメに集中した。





「ほえ~、やっぱ莉子さんすごいんですね」


 瑠実がアニメを見始めた頃、桃叶はライブハウスにいた。

 朝、修業場でコンと一緒に修業をした後、莉子が出演するライブイベントを見に来ていたのだった。

 以前悟志たちと四人で見に行った時とは違って今回は桃叶一人。

 少しドキドキしていたが、莉子の出番になると莉子の歌に魅入られる。

 そう、莉子は駆け出しの歌手だった。

 神代亭には莉子以外にも夢追い人が何人か来る。

 断り切れずに客としてライブなどに出向いたことは幾度かあれど、三人娘も連れて、複数回行くのは莉子だけ。

 それだけ悟志は莉子のことを気に入っていたし、桃叶自身も莉子のことは好ましく思っていた。

 出番が終わり、最後の出演者もステージを終えると物販会と称した交流の時間がやってくる。


「こんこんにちは!」


「あ、いらっしゃーい。今日はありがとね」


 なんて会話をしていると、ぐぅ~と音が聞こえる。

 その音の出どころは莉子の腹。


「……おなかぺこですか?」


「う、うん……」


 恥ずかしそうに俯きながら桃叶の問いかけに答える莉子。

 桃叶は少し考えて、莉子に問いかける。


「今日、ここに来る前の用事が終わった後食べられるようにって、悟志さんがお弁当作ってくれたんですよ。でもまだ食べてないんでよかったら食べます?」


 桃叶の問いかけにぱっと顔を上げると満面の笑みでこう言った。


「いいの? ありがとう!」


 しかし桃叶から弁当を受け取ってすぐ、我に返った莉子は心配そうに桃叶に尋ねる。


「でも、お昼食べてないんでしょ? お腹すいてない?」


 この言葉に桃叶は自慢げにこう言って莉子の元を離れていった。


「そりゃお腹はすいてますけど、ここからおうちに帰ったらすぐに晩ごはんですからね。しかも今日は悟志さんがうなぎ屋さんに特別に焼いてもらった、すごくおっきなうなぎでうな丼なんです! だからむしろ今食べずにその分うな丼をたくさん食べますよ! じゃあ、ももは失礼しますね。莉子さんまた!」


 ぺこりと一礼して去っていく桃叶の背中を見送ると、桃叶が言ったことを思い返す。

 え? 神代家の夜ごはんはうなぎ?

 手渡されたランチボックスのふたを開けるとハンバーグ弁当。

 この量ならすぐ食べ切れるし、少し待てばお腹もすく。

 お礼を言いに神代亭に寄るでしょ? 晩ごはん時でしょ?

 せっかくだから観月さんも食べるかい? ってならない?

 私もうなぎ食べたい……!

 そう考えた莉子はお客さんの流れを見計らって、早めに楽屋へと戻り衣装から私服に着替える。

 急いで桃叶からもらった弁当を食べると足早に会場を後にし、神代亭へと向かったのだった。





「いやー、じーちゃん悪いね。屋台まで持ってきてもらって」


「使い慣れたもんで焼くのがええでな」


 休憩をしてから本当にすぐ目標の数が集まった悟志。

 すぐに戻るのもなと思い、ゴン太に乗ってシェラタンとアリーリャのいる屋敷へ向かった。

 部屋で書類仕事をしていたアリーリャに挨拶をして、ついでに余ったロールケーキを差し入れる。

 またいつか料理をふるまう約束をして戻ると、予定より少し早いくらいの時間。

 瑠実とゴン太を連れてうな兵衛に向かうと、先代が屋台の準備をして待っていた。

 ゴン太のリードを屋台に結んで、引っ張る手伝いをさせて神代家の庭へ。

 ちょうど乃亜も戻ってきたらしく、以前来たことがあるサクラも一緒だった。


「あ、おかえりなさい悟志さん。今日サクラにもうなぎ食べさせたいんですけど、うなぎって余ってます?」


「すいません、急に」


「ああ、いらっしゃい。大丈夫だよ。誰か来るかもって思って多めに獲ってきたから。あ、じーちゃん。俺厨房で料理してくるからあと頼むね。そんで先にゴン太用に白焼き作って」


「ああ、わかった」


 てきぱきと動いていつの間にか火を起こしていた先代にうなぎは任せて、悟志はもう一品。

 うどんを作り始める。

 肝吸いの代わりに冷たくてさっぱりとしたものを作りたくて。

 まずはたっけぇ肉を適当な大きさに切ると、フライパンで炒め始める。

 醤油、酒、みりん、生姜、砂糖で作った割り下を入れて軽く煮詰めたら上に乗せる肉は完成。


「ただいま~」


 次の作業に入ろうかというタイミングで桃叶が帰ってくる。

 ちょうどいい、桃叶にこれを任せよう。

 そう思った悟志は箸で小皿に肉を移して、桃叶を呼ぶ。


「桃叶ちゃん、おかえり~。ちょっと手伝って~」


「はーい、なんですか悟志さん」


 厨房にやってきた桃叶の前に置かれたのはおろし金と皮をむいた大根の上半分。


「大根おろしを作ってほしいんだ」


「えっ、上半分全部ですか?」


「これあげるから」


 さっき小皿に移した肉と箸を桃叶に差し出すと、桃叶の少し嫌そうだった顔がニコニコ笑顔に変わる。


「わかりました~、仕方ないですね。さくっとももが作ってしまいますよ」


 肉をぱくつくとご機嫌な様子でおろし金に大根をおしつけ、おろし始めた桃叶。

 その様子を見たあと悟志はうどん用のつゆを作り始める。

 鍋に水を張って、いつものように作ると鍋ごと冷蔵庫に入れる。

 しまった、米は炊いていただろうか。

 慌てて炊飯器を確認すると、米が炊きあがっていた。


「悟志くーん? うな丼食べるのにお米炊き忘れるなんてありえないんですけど? じーにあすな私がいなかったら大変だったね~?」


 後ろから聞こえる瑠実の声。

 やっぱり炊き忘れていたか。


「ほんと助かったよ。ありがとう。うどん作るから楽しみにしててな?」


 ほっと一息ついた悟志がそういうと瑠実が拳をぐっと握る。


「いぇーい! やっぱり今日うどんだった~! 乃亜~、お吸い物の代わりにうどんだって~!」


 座敷にいる乃亜とサクラの元へ向かった瑠実が喜色満面の顔でそう言ったのを見届けると、悟志は庭へと向かう。

 ちらりと様子を見ると最初の二匹を焼き始めたみたいだ。

 屋台の横に置いておいたバーベキューコンロにもいつの間にか炭が足されて、焼きの準備ができていた。

 十二匹を焼いていくんだから屋台では時間がかかりすぎるんだろう。

 手伝いに早く行かねば、となりながらも気になるのは桃叶の様子。


「よいしょ、よいしょ……、わーできた!」


 桃叶の元に戻るとちょうどすりおろし終わったところ。

 めんどくさいことを代わりにやってくれたお礼に悟志はもう一つご褒美をあげることにする。


「ありがとね、桃叶ちゃん。これ、ご褒美」


 悟志が渡したのは、シェラタンにあげたロールケーキの残り。

 それを受け取ると、桃叶はすぐに食べ始めた。


「疲れた時の甘いものは染みますね~」


「あとは俺の仕事だから座敷行ってもいいし、先にシャワー浴びてきてもいいし。ゆっくり休んでて」


「はい、ありがとうございます」


 悟志も庭に出て、うなぎが焼けるのを待つ。

 最初の二匹はゴン太の白焼き。それは冷ますためにトレイに移して置いておく。

 今焼いているのは四匹、二人分。

 しかし、こいつはかなり大きなうなぎ。

 豪華に二匹使ったる! と思って獲ってきたが三人娘は食べ切れるのだろうか?

 そんなことを思いながら、タレが焼ける匂いにそわそわしているゴン太を撫でつつ眺めていると、三人娘とサクラがやってきた。

 

「わっ! すっごく大きい! 悟志くん、一人一匹ずつ?」


「実は一人二匹のつもりなんだけど……、食べられそう?」


 瑠実の問いかけに対して、不安そうに尋ねる悟志。

 返ってきた答えは概ね予想通りだった。


「悟志さん、私とサクラは一匹ずつでいいです! ね、サクラ」


「うん! こんな大きいの二匹は食べ切れるか不安で……」


「悟志くん、私も一匹でいいかな~?」


「ももは二匹食べますよ! あ、でも一匹はうな丼で、もう一匹は白焼きでいただきたいです!」


 網をちらりと見ると、タレがかかったうなぎは四匹。

 ならば先に出してしまおう。


「悟志、焼けたぞ」


「ありがとう、じーちゃん。よし、じゃあうな丼作るからみんな座敷に行きな」


 先代が焼きあがったばかりのうなぎを大皿に乗せて悟志に手渡す。

 それを受け取った悟志は早速うな丼にすべく、女の子に涼しい家の中に入るよう促してから厨房へと戻っていった。

 

「さてと。あんまり多くても食べきれないからなぁ」


 鍋に水を張って、コンロにかけると湯を沸かしてうどんを茹でる。

 一人半玉、四人で二玉。さっと茹でて、氷水で締める。

 お椀にうどんを分けて入れると、先ほど桃叶が作ってくれた大根おろしと、肉、温泉たまごをのせてつゆをかける。

 続いて丼にご飯をよそい、うなぎを大きめに切るとその上に。

 ごはんの上にかけるように、と分けてもらっていたタレをかけて刻み海苔を散らしたら完成だ。


「はい、できたよ~」


「あ、悟志くんこっち~!」


 お盆に乗せて座敷に持っていこうとすると、いつの間にか四人は神代亭のカウンターにいた。

 店の電気もエアコンもつけて、まるで営業前のようで。


「サクラがお店の方でごはんまた食べたい、って言ったんでこっち来ちゃいました」


 乃亜がいたずらっぽく笑いながらそう言うと、サクラもすいませ~んと会釈をする。


「あ、そういうことね。じゃあ店っぽくやるか。……はい、うな丼とうどんのセットお待たせしました!」


 常連客の相手をするような感じで、うな丼とうどんを置いていく悟志。

 受け取った三人娘はどこか照れくさそうに箸を取ると手を合わせる。


「「「いただきます」」」


「い、いただきます」


 食事前、自然と言うようになったこの言葉。

 遅れてサクラも言うと、まだうまく使えない箸の代わりに出された木匙でうなぎと米をすくって一口。


「おいしい!」


 目を見開いて大きな声を出すサクラと、同じく目を大きく開く三人娘。

 続いて瑠実はうどんの肉をつまんで一口。


「んん~! これ、たっけぇ肉!」


「うそ! ほんとだ! たっけぇ肉だ!」


「甘辛くておいしいですよ!」


 久しぶりのたっけぇ肉に大喜びの瑠実と乃亜。

 きゃいきゃい騒ぎながら食べる様子を見て、悟志は一度外に出る。


「ゴン太~、待たせたな」


 冷ましていたゴン太用の白焼きをトレイのままゴン太の前に。

 わん、と吠えると尻尾を振って勢いよく食べ始めた。


「もう少しでまた四匹焼けるぞ」


「じゃあ次は俺の分かな~? あ、たぶんうなぎ余るから。あと俺用に白焼き二匹焼いてもらって。そんで残った分は全部じーちゃん持ってってよ」


「いいのか? 悪いな」


「いやいや、熟練の職人に焼いてもらってんだからこっちが悪いって。あとで井戸水も出すから」


 自分のうな丼は絶対二匹!

 そして俺の予想があってればそろそろ腹ペコガールがやってくるはず……。

 なんて思っているとやっぱりやってきたあいつ。


「悟志さーん、莉子さんが来ました~」


「すいません、お昼に桃叶ちゃんのお弁当いただいたお礼に伺いまして……。って桃叶ちゃんから今日の夜はうなぎって聞いてましたけどずいぶん本格的なんですね。いいなあ~……」


 桃叶の案内で庭に通された莉子が物欲しそうにちらちらとうなぎを見ながらそう言うと、桃叶も悟志にねだるような視線を向ける。

ここまで予想通りかと、少し面白くなりながらも悟志はわざとらしくため息を軽くついてこう言った。


「はぁ~……。ま、何匹か余ってるしたまにはいっか。うなぎ、食ってきな」


「え、いいんですか? やったー! ありがとうございます!」


「莉子さん、よかったですねぇ!」


「じゃあ店で待ってな。焼きあがったらすぐ作るから」


 きゃっきゃと喜びながら店へと戻る二人。


「ちなみにこのうなぎくっそ高いからな! 蒲焼き一匹で三万くらいするんだ。味わって食いな!」


 悟志が莉子に向かってそう声をかけるとびくっと背中を震わせて振り向く。

 冗談だよ、暑いんだから早く中入りなさい。

 焦る莉子に笑いながらそう言う悟志は、少し意地悪な顔をしていた。

本当は土用の丑の日に更新したかったですけどね……。


次回は来月の後半に更新することになると思います。

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