ももかちゃんぱわーあっぷ!なのです!(後編)
本日2話更新しております。
こちらは2話目です。
1日で1万文字書いたの本当に久しぶりだったなぁ。
忙しさに加えて、転職による交代勤務の発生。
9月12日のアイドルちゃんのデビューライブの制作の絡みでネタが全然浮かばなかったりしてたんですが。
Prettical Reactionの雪音ももさんが活動休止ということで。
あ、これやろうって衝動的に書いた桃叶回というw
桃叶が戦いを始めた頃、一匹の犬がゴン太を訪ねて神代家へとやってきた。
井戸の横の庵、そこでくつろぐゴン太を見つけるとわんと吠えて中に入る。
『お前は……、何かあったのか?』
「わんわん!」
『おう、それで?』
「わーんわん、くぅーん」
『よし、わかったありがとうな。喉乾いたろ、この水を飲んでちょっと休んでるといい』
井戸水の入った器を前脚で差し出すと、ゴン太は庵から出て駆け出す。
『悟志ー、瑠実殿、乃亜殿! 桃叶殿を助けに行ってくる!』
座敷にいた悟志たちがゴン太の一言に慌てて集まる。
「ねえ、ゴン太ちゃん! ももを助けるってどういうことなの?」
「説明してください、ゴン太さま!」
「詳しく話せ、ゴン太」
瑠実はヨーグルトの入った器を持ったまま、乃亜もマグカップ片手にゴン太の元へ
そわそわしたゴン太の顔を包み込むように持つと、ゴン太の目を見てゆっくり話す悟志。
それで少し落ち着いたのか、ゴン太は理由を説明しだした。
『昨日な、桃叶殿が修業に行っただろ? みんなとお話しできない一人は嫌~。って言ってたやつ。だから、あっちの仲間に桃叶殿になんかあったら知らせてくれって頼んどいたんだ。そしたら、朝に嫌なにおいのするやつが桃叶殿のところに来てな? 嫌なにおいの結界を張っていったんだ。そのあとに桃叶殿の匂いがしなくなったらしい。きっとなんか大変なことになってる! だから行ってくる!』
修業の内容はしっかり聞いていた。
自らを見ている神を呼び、話し、その神の力を借りるための儀式。
その神の力を持って、人々を守るための誓いを立てる。
その間、他の人の匂いに触れないように他人との接触をしてはいけないと。
それが本当なら、桃叶は今一人で戦っている。
「人と関わっちゃいけないなら、確かにゴン太が一番か……」
「悔しいけど、ゴン太ちゃんが行くしか……」
そう言って俯く悟志と瑠実。
それを見た乃亜もまた辛そうな顔をしていた。
が、悟志が突然ぷっと吹き出して笑い出す。
「いやいやいやいや、ちげぇちげぇ。よくよく考えたら俺は無理だけど瑠実ちゃん達は行けるじゃん」
その言葉に乃亜も瑠実も自分が何者だったかを思い出す。
「あっ、そうじゃん! 私、プラム様の眷属で上級神! 神だった!」
「私もそういえば邪神だった! うどんのことばっか考えて忘れてた!」
「でも、私たちにゴン太ちゃんも行ったら誰が悟志くんを守るの?」
三人娘がいなくてもゴン太はいた。
今までも誰かしらは悟志を守るものがいた。
しかし、今回は誰もいなくなる。
やっぱり誰か残るべきか、瑠実と乃亜がそう思った瞬間だった。
「話は外の犬に聞かせてもらったぞ! お主らは助けに行ってくるといい! お主らがおらん間、わっちプラム・ウィータが悟志を守ってやるでな!」
ババンと登場したのはプラム様。その後ろには
「やぁ、久しぶり。僕もここにいてちゃんと守るから安心していいよ」
とリステもやってきた。
「じゃあ!」
「うん、いこ!」
「あ、待って! 厨房の冷蔵庫の沸かした水! あれ持ってって!」
駆け出そうとした瑠実と乃亜、それに続こうとするゴン太に悟志が声をかけると突然瑠実の周りが光り出す。
「これは……召喚?!」
「るーみん! 今助ける!」
そう言って瑠実の手を取るも間に合わず、瑠実と乃亜の姿は消えてしまった。
「……これ、やばくね?」
『いなくなった……』
悟志がつぶやくが、事態は深刻だ。
すぐに気持ちを切り替える。
『悟志、俺だけでも行ってくる!』
「ああ、でもちょっとだけ待ってくれ。ゴン太でも水を運べるようにするから」
すぐに悟志は厨房へ向かうと、小さいペットボトルに沸かした井戸水を移しかえ続ける。
五つほど用意すると、普段とは違うハーネスをゴン太に付けた。
「これよさそうって思って買ったハーネスがこんなところで役に立つとは……」
タクティカルミリタリードッグハーネス。
収納がたくさんついたハーネス。
そこに先ほど水を移しかえたペットボトルを詰め込んでいく。
「よし、ゴン太頼んだぞ!」
『おう、任せろ!』
こうしてゴン太は家を飛び出していった。
「なかなかやるな……、娘」
「……これでも大事なお役目を一年と少し務めてますから」
悟志たちが桃叶の危機を知ったころ、謎の男と桃叶の戦闘は意外にも桃叶が少し優勢で進んでいた。
しかし、術に使う札は手元にあと少し。
どこかで決着をつけねば……。桃叶が次の手を考えていた時、突然戦況が変わった。
「すまんが、長いこと遊んではいられない。決着をつけさせてもらう」
黒い札に赤い文字、禍々しい札を男が宙に放るとそこから出てきたのは異形の怪物。
大きな鬼のようで、鬼じゃない。例えるとするなら怨念の塊。
「これは邪なる神を呼ぶ札。出し惜しみはしない、上から三番しっかり呼んで君の心を折らせてもらう」
『ももか! あぶない!』
コンがいち早く邪なる神の攻撃に気付くと、体当たりをしてそれをそらす。
黒い球が空へ飛ぶと結界にぶつかって、散り散りに。
その散り散りになった黒いものが先ほど男が出した蛇のように変わって、桃叶たちを襲う。
「コン! こっちへ!」
コンを呼び寄せると札を一枚取り出し、盾を作って防ぐ。
それを見た男が次の札を取り出すと、また次の邪なる神を召喚する。
「ふふふ、今ので終わっていればよかったものを」
次の邪なる神の姿はムカデ。その口からは毒らしき液体を滴らせて今にも桃叶に噛みつきそうだ。
「虫は……苦手なんですよ!」
『毒虫は焼いちゃえ!』
桃叶が札から出した炎と、コンが尻尾から出した炎。
それらが合わさって、ムカデ型に当たるが特にダメージはなかった。
「やっぱり……」
予想はしていた。しかし、それが現実になると歯噛みせざるを得ない。
「邪なる神二柱、ここまでは今の君でも万全な状態だったら倒せただろう。だが! この神だけはとても危険ということ以外私も知らない! 最恐最悪の神! ふはははは! さあ、全て諦めるがいい!!」
男が最後の札を使った瞬間、空気がゆがみ、大地が震える。
地面からゆっくりと姿を現したそれは……
とても見知った顔だった。
「……あ、もも!」
「もも! 大丈夫?!」
その顔を見た瞬間、気が抜けて座り込む桃叶。
そう、目の前にいたのはもものおねえちゃん。
「るーさぁん……、のあさぁぁぁん!!」
来栖瑠実と澤城乃亜、その二人だった。
「ねぇ、ももが私を呼んだの?」
「いきなり召喚陣がね、るーみんのところに出てきたから助けようとして手を掴んだんだけどね。私も連れてこられちゃった」
さっきまでの緊迫感が嘘のように、やわらかい空気に包まれる。
それを邪魔する、男の叫び声。
「なんなんだ! お前は! お前は私が呼び出した最恐最悪の邪神なんだ! 私の言うことをきけぇ!!」
その感情に呼応するかのようにムカデ型の邪神が瑠実たちを襲う。
だが、その攻撃は瑠実たちには届かない。
「我が名はノアール・シロップサワー。異世界の神にして、汝を誅す者なり! いけっ、断罪の白線……マセラフィラリオン!」
乃亜から放たれた白線、マセラフィラリオンは断罪の白線。
罪なき者を守るための正しき帯。
「ちょっと~、こういう虫は苦手なんだけど!」
続いて瑠実から放たれたのは超重力の闇。
それがギチギチとムカデの身体を締め付ける。
「私が何だって言ったよね? 私は来栖瑠実、もものおねえちゃん! そして、かつてバティーカ市国、及びリステ神教が全てをかけて封じ込めた、最高にジーニアスで最強の邪神……クルエラ。クルエラ・スヴァンヒルド! 邪なる神の名において、悪しきものへと裁きを下す。我が右手に宿れ、レヴィアタン。そして、この手に宿れ、煉獄の炎。左手に宿れ、ベルゼブブ。この手に宿すは超重力の闇。……私の家族を傷つけるものを、私は絶対に許さない! ヴァルグラリクラトス!!」
ピンク色の球がムカデに放たれ、それが当たると炎に包まれながら潰されていく。
まず一柱。次は……、と静かにしていた最初の異形を見やると今まさに桃叶に襲い掛かろうとしていた。
「もも、危ない!」
『ももか!』
瑠実とコンがほぼ同時に桃叶に声をかける。
異形のものが謎の霧を吐き出した。
札を出しても間に合わない、やられる!
そう思った桃叶にコンが覆いかぶさる。
白い毛並みに黒い霧。じゅうっと焼ける音と匂い。
続いて、異形のものが振るった拳で桃叶たちは吹っ飛ばされてしまう。
二回、三回と転がると地面に横たわる桃叶とコン。
「コンちゃん、どうして……」
『ももかはお友達だもん……』
涙ながらに問いかける桃叶に、力なく笑うコン。
「ふはははは! いい、いいぞ! どれ、そのおねえちゃんとやらの心も折ってやる。弱いが数だけは多いこいつ、お前たちはどうさばく!」
別の札を取り出すと蜂のような式神を呼び出す男。
「あいつ、さいってー! もう許さないんだからー!!」
「ほんとにね!」
桃叶のところに行かせるわけにはいかないと全力で虫を払う瑠実と乃亜。
しかし、異形のものはどうにもできない。
万事休す、その時聞こえる犬の鳴き声。
毎日聞いている、馴染みある音。
『桃叶殿! 大丈夫か!!』
飛び出してきたのは犬。
犬が異形のものの首へと噛みつくとそのまま身体を振って、倒す。
口をぱっと離して、くるりと回ると綺麗な着地。
てしてしと歩いて桃叶の元へと向かったのは神代悟志の飼い犬にして、犬の神ゴン太。
「ご、ゴン太さま……。ゴン太さまも来てくださったんですね」
『桃叶殿が大変だって聞いたからな! 痛かったな? でも、俺が来たからもう大丈夫だぞ! ほら、悟志からだ』
そう言うと桃叶の頬をぺろりと舐めて、身体を横に向けるゴン太。
ハーネスの収納部分に何かあるのだろうと傷む身体を起こしてチャックを開ける。
そこにはペットボトルに入った水があった。
「……ありがとうございます、悟志さん」
一本手に取ると、ふたを開けて自分ではなくコンに。
「コンちゃん、これとってもすごいお水なの。飲んだらきっとよくなるから、飲んで」
辛そうなコンの口元にペットボトルの飲み口を傾けるとゆっくりと落ちる水。
コンの舌にそれが触れると、コンの身体が光り出す。
黒くなった毛は元の白さを取り戻し、身体は一回り大きく。
尻尾が九本になった。
それを見届けると、桃叶もペットボトルに残った水を飲み干す。
さっきまでの不調が嘘のように元通り、むしろより強くより元気に。
『ももか! これなに? 痛いのが治って、力が湧いてくる!』
「これはね、とっても優しいおじさんしか汲めない、とっても特別な井戸水なの。これがあったら……」
『うん!』
『「何度だって立ち上がれる」』
『もも、いける?』
「うん、でも札が破れちゃった」
『大丈夫、戦うって気持ちがあればなんとかなる!』
コンが鳴くと桃叶の髪に灯った小さな光。
それがだんだんと大きくなって、桃叶とコンの身体を包む。
『もうわかるよね』
「うん! ……いくよ、コン」
『任せて!』
ゴン太によって倒された異形のものが身体を起こして暴れ出す。
それが背中から触手を伸ばしたかと思うと、自分を召喚した男を捕らえ、取り込みだした。
「……なぜ、なぜだ! ぎゃっ、ぎゃあああああああ!!」
汚い絶叫の後、男は完全に取り込まれ、異形のものはより禍々しさを増した。
それを見ても桃叶は恐れない。
凛とした顔で立ちふさがると言葉を紡ぐ。
「……九尾の白狐、その神威。我が身を守る鎧とならんこと。その尾は祓いの矛とならんこと。その魂は我が魂と共に。今、雪村桃叶の名において畏み申す。狐霊鎧装、白面金毛九尾狐!」
桃叶が言い終わるや否や、目を閉じると金色の光が周りを包む。
守りたいものにとっては癒しの、滅すべき悪しきモノにとっては滅びの光。
コンの身体が十二単のようになり、桃叶の身体に重なると、その尻尾はピンと立ち桃叶の背中へと付いていく。
閉ざされた桃叶の目が開かれると、その瞳は金色に変わっていた。
虫を必死に払っていた瑠実や乃亜も、その虫がいなくなったことで桃叶を見る余裕ができた。
「あれって……、ももだよね」
そんな乃亜の呟きに
「うん……」
と返す瑠実。
男が張った結界も壊れ、異変を感じた祓いの者たちが続々と集まってきた。
異形のものはそれに目もくれず、一番の脅威であろう桃叶に向かって歩き出す。
『これ、挨拶もなく近付くとは。うぬは礼儀というものが足らんの。どれ、この我ももコンが躾けてやろうぞ』
背中にある真ん中の尻尾が揺れると、異形のものは上から押さえつけられたかのように倒れこむ。
だが、触手を伸ばして反撃をしてきた。
それに慌てることなく、右端の尻尾を手に寄せると剣へと形を変えて切り刻む。
『つまらん、つまらんぞ。じっくりいたぶってやりたいが……身体に負担をかけ続けるのもようないでの。これでしまいじゃ。乃亜姉上、すまんがちぃと力を貸しとくれ』
「えっ、私?! わかった!!」
ものすごいキャラ変に呆気に取られている中声をかけられ、慌てて白線で異形のものを包んで持ち上げる乃亜。
それを見上げたももコンは右手を空にかざして祝詞を唱える。
「祓い給え、清め給え、守り給え。我らが心乱れず、願い揺るがず。我が名において、来たりし穢れを燃やし給え」
水色の火がまるでこの世とあの世を分けるかのように境界線を引く。
それは異形のものを囲い、燃え上がった。
ごうごうと燃える火は桃の花のように見える。
『狐火・桃花魂葬』
その技名が聞こえると花火のようにぱっと火が散り、異形のものもその姿を消していた。
こうして、桃叶の危機は脱したのである。
「はやく~、はやく~、帰らなきゃ!」
戦いが終わって、駆け付けた大人たちの調べによると男の名は木原健吾。
かつて活動方針を巡って雪村家と争って負けた家のものだった。
その際に判明した、今までうまく隠されていた人命軽視のやり方を問題視し、家は取り潰し。
以後、祓いの仕事には就けなくなっていたらしい。
それを怨んで今回の凶行に及んだわけだ。
『ももか、うれしそうね』
「うん! やっと帰れるんだ!」
問題なくコンとの誓いの儀式を済ませた桃叶。
何かあるといけないからと念のためもう一日だけ離れで過ごし、先ほど解放された。
電車で最寄り駅に着くと、思わず駆け出す桃叶。
その横には姿を隠したコン。
いそげ、いそげ、と走り、見えてきたのは神代亭。
時間は夕方。今日は夜営業もなかったはず、なのにのれんと看板が出ている。
あれ? おかしいなと思いながらも店のドアを開けるとそこにはみんながいた。
「あ、桃叶ちゃんおかえり~」
「おかえり、桃叶ちゃん」
と森川梓と美森露羽が桃叶に声をかければ。
「ももちゃんおかえり。なんかめっちゃがんばったんやって? すごいやん!」
と夏目瑞穂。
「桃叶ちゃんおかえり。久しぶり、元気だった?」
観月莉子も手を振って笑顔で迎える。
その他田崎をはじめとした常連たちが桃叶に次々とおかえり、を言う。
「もも、おかえり。よくがんばったね、えらいえらい」
「おかえり、もも。おつかれさま。みんな、もものこと待ってたよ」
瑠実と乃亜が笑顔でそういうと、厨房からやってきたあいつ。
「桃叶ちゃん、おかえり。みんな桃叶ちゃんを出迎えるんだって聞かなくてさ。今日は特別夜営業することになっちまった。疲れてるところ申し訳ないけど、着替えて店降りて来てよ。あ、でも悪い。着替える前にこれだけ三番テーブルに持ってってくれない?」
悟志が笑って、皿を差し出す。
桃叶はにっこり笑ってこう言った。
「ももにおまかせなのです! なんてったって、ももかちゃんぱわーあっぷ!なのですから!」
この作品を生み出すきっかけになったのが雪音ももさんで。
なんとなく最近の様子からそうかもな、なんて思ってたりしてました。
「ちゃんとあおとさんのこと大好きですよ」
いつか言ってくれたその言葉、俺らしく応えるにはってことで考えたのが今回のお話です。
今までの話も含めてよーく読むとわかる小ネタがあったり?
「1日で1万文字書きあげちゃうくらいには、ちゃんとゆきねちのことを愛おしく思っています」
こころはタマゴって曲があるんです。
それを雪音もも、ゆきねちに聞いてほしいかな。
影山ヒロノブさんの35年前の神曲。
瑠実や乃亜、莉子、梓、露羽、瑞穂のモデルの子たちとゆきねちは会おうと思えば会えるけど。
俺はそうはいかない。
だから俺はこの作品を書き続けるよ。
せめて夢の中では一緒にいられるように。
戻ってくるの待ってるから、また会える日を楽しみに待ってるから。
神代亭が完結するまでには戻ってきて欲しいなぁ笑
ひとまず、いってらっしゃい。




