67、ポイ活の裏側 3
監視対象の後ろで起こった三件トラブルの内、しっかりと音が出たのはケンカの一件のみ。
町中の音に紛れて、前方の二人は気付いていない。
この三件は自然に発生している。
でもこの区画で問題が起きたことは、前回の自身の時と同じような事柄。
だからこそ、今回の依頼の不可思議さが増すばかり。
この監視の依頼をしている自分が試験にかけられているのでは、と疑心感さえ湧き上がってくる。
もしかすると、この監視対象の駆け出しの冒険者がそれなのかもさもしれないとさえ頭を過ったその時。
前方から悲鳴が上がり、見ると馬車が御者もなく走って来ていた。
馬車のわずか後方には、御者であろう人の声。
何かのトラブルにより馬が走り出したのだろう。
さて、このトラブルの対処を考える。
このまま馬車をやり過ごしてしまえば、少し先にある区画はここよりも人が多いから、惨事になるのは目に見えている。
一番早いのは、馬や御者席に乗り込み制すること。
それをこの駆け出しの冒険者(多分)に出来るのかどうか。
そんなことを思いつつ、跳躍する為にアンの足に力が入ったタッチで飛び出した影を見て、アンは力を抜いた。
誰かが御者席に飛び乗り馬車を制す。
その誰かのおかけで被害は免れた。
その場にいた全員が飲んだ息を吐く。
もちろん、監視対象の二人も無事。
その二人も手を取り合って、すごいすごいと飛び跳ねる子供と良かったと安堵の表情の冒険者。
そして、周囲にはその誰かに送る拍手や歓声が沸き起こった。
馬車の御者も追いつき、感謝を述べているだろうが歓声で聞こえはしない。
丁度逆光で顔は見えなかったし、御者席から降りたからもう人混みの中。
微かに見えたのが学園の制服のような服に見え、学園に平民街でこんな風に動ける貴族はそういない。
奇特なと思いつつ、人混みから離れていく監視対象を追ってそこから離れた。
結局のところ、その後も監視対象に直に起こるトラブルというものはなかった。
何事もなく冒険者は子供の送迎を終え、依頼完了の送迎元の大人と子供が書くサインを貰ってからギルドへと引き返す。
この冒険者の依頼はこれで終わり。
だが、こちらの依頼はこの冒険者がギルドに依頼完了を渡すのを見届けるまで。
この依頼だけは、子供の無事を確かめるために依頼完了後、すぐにギルドへの報告となっている。
買い食いなど寄り道もなしにギルド報告に戻ることを最後に念押されるくらいに。
その冒険者は、それらを守り寄り道もせずにギルドに戻った。
律儀である。
ちなみにアンは当時。
次の依頼を受ける為に走って帰ったと思い出した。
その時の監視していた冒険者に一瞬だけ同情したが、一瞬だけであった。




