64、指南と警護3
身に付いたものを直すではなく、崩す。
そんな時に有効なのは地面!
この森は初心者にはぴったりな場所が多々ある。
例えば、この川沿い。
大雨時には30メートルの川岸が全て川になるが、普段は川幅は2メートルもない。
川から近ければ小石ばかりで、川から離れると石の大きさがデカくなる。
倒木もあれば、あちらこちらに苔や草もが生えていて足場が悪い。
「あの川の水に触ってから戻ってこい」
「指南の一つか?」
「じゃなければここにはいない」
「分かった」
ただ歩くだけでも整地された地面と岩場は全く違う。
ここで指南書のセリフも付け加えておく。
「常に周囲も気を配れ」
その言葉に足元ばかりに目線を下げていたのを上げるだけでも、足元がふらつく。
「次は素振りをしながらの往復を3回してこい」
「分かった」
ちょっと自信が強い奴だとここで反抗してくると指南書には書いていたが、流石は良を貰っているだけあり、反抗もせずに歩み始めた。
何度も足を踏み外しながらの往復で、三度目には踏み外す回数も格段に減った。
そして、言っていた3回目が終わるとこちらを仰いだ。
「ここまでだ」
その言葉に少し目を見開き、そのまま思案顔になった。
「……もう少し頼みたい、先ほどの邪魔を加えて欲しい」
指南書には、不と良の差2ついて一言書いていた。
不は帰り、良は追加を望む。
その良の場合には、追記がある。
追加指南は3手までで、あとはギルドに依頼として出すよう伝えることと。
書かれていた通り、先ほどの邪魔を3手のみだと伝え、クセのある動作時に邪魔を仕掛けた。
「まだ続けたいのなら、ギルドに依頼しろ」
「貴方を指名しても?」
「断る」
若干不服そうな顔をしたが、それはそれ。
子供の世話は、弟達以外は楽しくない。
何をするにも楽しいと言う感覚は大事だ。
ギルドでの評価ではなく、自分の判断基準というか、重きをおく箇所。
例えば、意外な依頼を見つけるとか。
魔物や依頼内容のカウント数を増やしていくとか。
魔物数は分かりやすい。
たが、依頼内容のカウント数は内容の難易度ではなく、方向性でカウントしたりしている。
一番は、依頼達成時の自己満足度。
それらを楽しみとして活力に変換する。
ポイ活という僅かなオマケも貰える楽しみ。
まあ、ようはなんでも楽しんで勝ちである!
「終わりだ」
また何か言われそうなところをそんな返答で回避。
今日の依頼は余り楽しくはない。
もしまたこんな依頼ならそれは逃げようと思う。
必要不可欠なら仕方がないが、それ以外の依頼の根底は楽しむ、それが大事。
掲示板を思い出す。
足を痛めた農家の代わりに踊り人参掘り。
あの楽しそうな依頼は誰か受けただろうか。
残っていたら、この依頼の口直しに受注したい。
まあ、受けた依頼内容と現実との差があるのも、ある種の楽しみだ。




