62、指南と警護1
今日のポイ活は、初心者冒険者の魔物退治の指南と警護の二重依頼。
6星以上の冒険者は、二年に一度は確実に受けなくてはいけない必需依頼。
対人能力向上の一環で、対応冒険者からの評価でポイント減の噂があったりする。
ちなみにシェルは、従者という対人能力が必要不可欠な仕事をしつつ、冒険者業も行っているので、実質免除扱い。
集合場所の門近くに余裕をもって待っていると、見知った顔が歩いてきた。
「あっアンさん、こんにちは!お久しぶりです」
「お久しぶりね。お元気でいらした?」
「ああ、変わりない。今日はお出かけか?」
ミリー嬢とハイシリーズ夫人のお二人が、庶民の買い物風な出で立ちで表れた。
「ええ、今日はミリーとカフェに行くの。この子の見送りも兼ねて」
ハイシリーズ夫人の後ろから、小柄なミリー嬢より少し身長が高いが、幼い顔の男子が表れた。
「始めまして、エントです。今日はよろしくお願いします。この手紙を手渡すよう言われました」
手紙を渡されて、今日の指南と警護相手を視認した。
「アンだ。先に読ませてもらう」
コクリと頷くエントから手紙を受取り、ザッと目を通す。
ハイシリーズ宰相補佐その人からの手紙。
今季学園に入学し、冒険者登録をしたばかりの親戚筋の子であり、一通りの低級魔物退治の指南と警護を氏名依頼として頼む旨が書かれていた。
「依頼実績は?」
「はい、採取をっ」
「口調は崩せ。無理にでも使い分けろ」
「っ、わかった……採取や手伝いだけだ。剣と魔法は10歳から習っている」
また、はいっと言おうとしてどうにか押さえたエントは頭の回転が早くすぐに順応した。
「そうか。早めに帰宅させる、家まで付き添いも必要か?」
後半の言葉はハイシリーズ夫人へと向けた。
「あらっ、それは二重に助かるわ。そうだわ、夕食をアンさんもご一緒にどうかしら」
「断る」
「残念ね。また誘っても?」
「断る」
ふーっと息を吐いたハイシリーズ夫人は、残念そうに肩をすくめた。
「意地っ張りね、もう……よろしく頼むわ」
先ほどまでの甘々な夫人風から、一瞬だけ隙のない夫人へと雰囲気を纏った。
庶民上がりでもしっかりと社交のイロハは身に付いけていることに尊敬を込めて。
「任された」
そう言って踵を返して門へと進み出すと後ろで3人の挨拶が聞こえる。
「では、行ってきます」
「いってらっしゃい。盗めるとこはしっかり盗んでらっしゃいねー」
「いってらっしゃーい」
ハイシリーズ夫人の声かけに笑みが出そうになるのを表情筋に喝を入れて耐えた。




