表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/36

おばあちゃまのリンゴの木の下で。


結局は図書館で1時間ほど過ごしたと思う。結構な人が調べ物をしていたり、司書に蔵書の相談をしていたりと様々だ。フローレンスも普段から利用して居たら、もっと上手く図書館を利用しているのかもしれないが、人生の中で数えるほどしか利用した事がないのだ。


何冊か手に取ると、イスに座ってパラパラと本を流し読みしたり、また彩り豊かな挿絵を眺めたり。殆ど外に出る事のないフローレンスには新鮮な経験だった。興味深い分野の本を読んで得心すると、椅子から立ち上がり、本を返却し今度はハインツ様を探し始めた。


暫く探してみるとハインツ様は医療関連の本棚にいた。何か考え込んでいる様だったが、フローレンスに気がつくとにっこりと笑い「――――そろそろ帰りましょうか?」と声をかけて来た。


「はい、結構時間を過ごしてしまって。気がつくとこんな時間でした。ハインツ様、お時間の方宜しかったですか?」と聞くと「あぁ大丈夫ですよ。」と答えると腕を差し出して、馬車乗り場までエスコートした。


フローレンスを馬車に乗せると「今日はお疲れ様でした。早く休んでください。」とフローレンスに言い、馬車の御者に無事に自宅まで送り届けるよう話した。




その週末にシシリー辺境伯様から紹介して頂いた庭師の親子がやって来た。


サフィノワ家の庭園をさっと見ると幾つかのプランを示してくれた。中々斬新な物もあり話を聞いているだけでフローレンスは楽しくなった。


特に息子さんが新しい技術や流行りを取り入れ、それをお父様に提案をしている様だ。そしてお父様の方はやはり王宮の庭園作りにも参加されたと言う。


一度サフィノワ家の庭園を手がけて頂く事になり、次の機会に細かい所を詰めましょう。とこの日は一旦お開きとなった。



それから約1週間後、王宮医療チームから検査結果が来た。



フローレンスの体はほかの人間に比べると多少虚弱体質の傾向があり、特に季節の変わり目や急激な温度変化に注意する事などを留意すれば、ほぼ健常者と変わりなく生活が送れる。

リンダ医師の妊娠に関する診察は特に問題は無いでしょうと言う事だった。



この結果を受けお父様が大変喜び「フローレンス、ゆっくりでいいからマナーや一般常識を身に付けて行こう。講師を雇い入れよう。」と決めてしまった。フローレンスは結婚できるかもしれない、諦めていた子供が産めるかもしれないと考えると嬉しいような驚くような変な気持ちだった。


そしてこの結果がサフィノワ家に送られてきた翌日に、クリス侯爵様からハインツ様との婚約の打診が来たのだった。


これにはさすがにお父様がびっくりしてました。そしてフローレンスに向かって「ハインツ様はここまでやるほどお前が欲しいんだよ。もうあきらめろ。まあ、父親としたら複雑だけどね。」と一言。


そして次の週の週末には、クリス侯爵様と奥様とハインツ様が揃ってサフィノワ家に訪問されました。


「いやいやいや~。ストーク伯爵、大変急で申し訳ない。ハインツがどうしてもと言って聞かなくてね。」と応接室へ案内するなり開口一番そうおっしゃいました。


「それでフローレンス嬢どうだろうか?ハインツとの事少しは考えて貰えないだろうか?」とソファから体を乗り出しフローレンスに伺ってきました。


フローレンスは一呼吸すると「――――私はハインツ様をお慕いしております。」と一言言った。ハインツ様を見るとびっくりした顔でフローレンスを見つめている。


「ただ、昨日もお父様と話をしたばかりなのですが、私自身が幼少の頃から病弱だったため、普通のご令嬢が身に着けている事が何一つ身についておりません。マナー講師をお願いする方向でいる程です。もう少し待って頂けないでしょうか?」とクリス侯爵ご夫婦に向かってはっきりと言ったのだ。


このタイミングでマリーが丁度お茶を運んでくれて雰囲気が変わった。


周囲が一息ついたのを見届けると、フローレンスが「ハインツ様、気候も良いので少し外へ行きませんか?」と誘った。「分かりましたフローレンスさん。」とハインツが答えると2人とも庭園へ出た。


ちょうど庭園のチューリップが見ごろを迎えていた。



赤、白、黄色と目に楽しい色合いが並んでいる。その間をハインツ様と2人無言で並んで歩いて行く。


そして離れの方へ歩きながら「このレンガは私が気に入ってマリーと庭師とで並べた物なんです。雨に濡れても色が気に入ってて素敵なんです。」と下を向いて話した。ハインツ様はその話を頷きながら聞いていました。


そして2人の歩みがリンゴの木の下に差し掛かると、フローレンスは歩みを止めハインツ様に向き合い


「――――ハインツ様お待たせしてしまったかもしれません。こんな私を求めて下さりありがとうございます。」と話し、「私はハインツ様が好きです。」とハインツを見ながらはっきりと告げたのだ。これにはハインツも直ぐに言葉が出なかった。


ハインツは嬉しいのか泣きたいのかわからない、と言った表情でゆっくりとフローレンスに歩み寄り、フローレンスを抱きしめた。それに応え手を回し抱きしめ返すフローレンス。


フローレンスの頭上から「参りました。フローレンスさん。男の私が先に言いたかったのに、フローレンスさんに先越されてしまいました。」と声が聞こえた。そして、ハインツはフローレンスを見つめると


「フローレンスさん私も好きです。愛しています。待つのは少しだけです。本当なら今すぐにでも貴女と結ばれたい。」と熱っぽくフローレンスに告げた。


「――――あまりお待たせしない様に頑張ります。」と小さな声で申し訳なさそうに返事をするフローレンス。


想い出のリンゴの木の下で口づけする2人を、離れからお婆ちゃまがにこにこと笑って見ている気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ