壁画完成!さよならマリアンナ教会
次の日は言葉通りマックさんが朝7時に礼拝堂へ現れた。テーブルの上の手つかずの夜食を見たが、フローレンスが集中しているのを黙認すると、軽く頷きフローレンスの横に立ち作業を始めた。
お昼近くになりナタリーがやって来た。集中している二人の様子を見ると声も掛けずに、同じように作業を始めた。
「さあ!!みんなお昼ご飯よ~。」とサラが声をかけて初めてフローレンスは飲食をした。フローレンス達は昼食を取り終えると誰が声を掛けるでもなく、引き続き作業を始めた。
お昼を食べた後、3人の傍に来たカーネルさんが壁画の状態を見て「今日が最後になりそうだね。3人ともよくここまで頑張ってくれた。あともう少し頑張って欲しい。」と発破をかけてきた。「ええ、ここまで来たんだもの頑張るわ。」とナタリーさんが握り拳を突き上げながら元気良く答えていた。
会話もそこそこに3人は再び壁画に集中した。
結局完成したのは深夜近くだった。
カーネルさん、サラさん、ナタリーさん、マックさん、フローレンスと誰一人欠けてなかった。疲れていたのもあるのだろうが、マリア様の慈愛に満ちた表情を見ていたらフローレンスは自然に涙が溢れてきた。
そんなフローレンスをサラさんがゆっくりと優しく抱きしめて慰めてくれた。フローレンスさん、よく頑張ったね。よく頑張ったねと。
完成を満足するまでながめたら、それぞれが家へと帰って行った。フローレンスは教会から毛布を借り、椅子に座って毛布に包まりながら、完成した壁画をずっと眺めていた。達成感と疲労感に包まれて、あぁ幸せだなと感じていた。応募当初はどうなるかと思ったけど、本当に思い切ってやってよかった。
そのまま朝の7時にマックさんが現れた。「おはようフローレンスさん。」とひげもじゃの髭を触りながら挨拶してくれた。
「おはようございます。マックさん。」と、さっと借りていた毛布を畳んで椅子から立ち上がった。
「今日は後片付けだね。ナタリーさんが来るまでにやってしまおうか?」と言い出した。
2人でせっせと片付けをしていると、リカルドくんがとことこやって来て「今日おばあちゃん休み!」と大声で言った。マックさんが笑いながら「そうでありますか!!報告ご苦労様です!」と返していた。やはり深夜近くの作業は老人の体には堪えたのだろうか?
お昼を過ぎたあたりに、サフィノワ伯爵家の馬車がマリアンナ教会の玄関へ到着した。丁度マックさんは昼から休みを取っていた。
馬車から降りてきたのはマリーと何とお父様だった。フローレンスの顔を見るなり「ああ、フローレンス、元気そうで良かった。是非、こちらの責任者に一言挨拶をしたい。」と言い出した。
「分かりました。お父様少し待ってください。」と返事をするとカーネルさんを呼んだ。
「カーネルさん、おはようございます。私の父がこちらへ来ております。一度挨拶をしたいと申しております。」と話すと「わかりました。私も今回の件でお礼を言いたかったのです。」と話しながらフローレンスと一緒にお父様のいる玄関の方へと足を運んでくれた。
「お父様、こちらがこの教会のカーネル神父です。」
「私はストーク・サフィノワと言います。
こちらでうちの娘が大変お世話になりました。ありがとうございます。」とカーネルさんに向かってお父様が頭を下げてくれたのだ。その挨拶をみて合点が行ったという表情をしたカーネル神父。
「フローレンスさんは伯爵令嬢だったのですね。どおりで所作が綺麗だと思いました。伯爵様どうか頭を上げて下さい。こちらこそ助けて頂いたのですから。それより一度壁画をご覧になりませんか?」と声をかけていました。
「ああ、是非ともよろしいですかな?」と頭を上げた。
「こちらへどうぞ。フローレンスさん是非ともお父様を案内してあげてください。」と言われたので、礼拝堂へとお父様を促した。
壁画をひと目見るなりしげしげと「・・・・ああ、なんて見事なんだ。」と第一声がその言葉だった。「心が洗われる気がするよ。」とお父様も涙ぐんでました。
そして「神父様、僅かですがこれを。」と寄付をしていました。
フローレンスは教会から出る間際にカバンから手紙の束を取り出して
「カーネルさん、この手紙をそれぞれに渡してもらえませんか?」とナタリーさん、マックさんに宛てた手紙を渡した。
昨夜、毛布に包まりながら書いたものだ。仲良くしてもらったお礼を書いてある。
特にナタリーさんの手紙にはクリスマスの時のお礼の言葉と、フランさんとリカルド君への手紙も入っている。
「はい、確かにお渡ししますよ。また是非ともこちらに遊びに来てくださいね。サラと一緒にいつまでも待っていますよ。」とカーネルさんはさよならを言わずにお別れの言葉を言った。




