王城へ
昨日、宰相様から 明日の昼頃お時間がございましたら、お手数お掛けしますが城の方までお越し頂けないでしょうか?
と伺っていたので、ただ今お城の一室で陛下方がいらっしゃるのをお待ちしているところです。
しばらくお待ちしていると陛下と宰相様がいらっしゃり、
私に対しての補償?と言いますか、お詫び金と
その他の物。
を私に、と目録を渡されてしまいました……
物は侯爵家に届けさせるので、との事で私が何か言う前に大量のお金と宝石などを頂いてしまいました、
たしかに今の私は無一文ですのでお金はありがたいですが……
そうですね、ありがたく受け取りましょう。
そして少し待っていて欲しい、と陛下が仰りベルを鳴らすと王太子殿下とウィルトス様が入室されました…
王太子殿下は入室すると私に向かって歩み寄って来ましたが…なんでしょうか?
バッ
消えた……?!消えましたよ?!
思わず下を見ると……
いた!え?何をなさっているのでしょうか…?
えっと、どういうことなのでしょうか?
「この度は……私の思い付きで攫ってしまいすみませんでした。」
お、思い付きで攫って…と言われましても……
国王陛下が深いため息をつかれるのが聞こえたかと思うと……
ゴンッ
「うぐっ」
「王太子よ、そなたは謝る気があるのかの……?」
「あ、ありますよ!だからこのように…」
「誠意が全く伝わらないどころか、寧ろ相手に不愉快な思いをさせていると気付かないのか!」
「王太子である私が頭を下げているのです!十分過ぎる誠意でしょう!」
「ただ下げれば良いというものではない!お主はそんな簡単な事も分からんのか!!」
「分かりますよ!私が頭を下げるだけでは気が済まないという事なのでしょう?
おい!お前はなにが望みなんだ?!
あぁ、分かったぞ、俺の側室じゃないのが気に入らないのか、いいだろう、俺の側室に戻してやろう。
どうだ?これで満足だろう?光栄だと思え!!」
………唖然、再び。
王太子がこんなアホだったなんて……
なんてことでしょう……
私が唖然としていると、
「そうかそうか、嬉しくて言葉も出ないか。当然だな。この大国の王太子であるこの俺の!側室に戻れるんだからな!
好きなだけ俺に感謝すればいい!
それにお前、なかなか悪くない容姿じゃないか、可愛がってやろう、感謝するんだな!
おい親父!これで満足だろう!この女も俺も満足。どうだ!」
「殿下……」
ウィルトス様……はぁ、その様な射殺す様な視線を主君に向けてはなりません。国王陛下もいらっしゃる場で……はぁ。まったく。私は幸せ者ですね。
陛下と宰相様は唖然、呆然。
ウィルトス様は王太子殿下を射殺す様に睨んでいますし……
本人は本気で良策だと思っている様ですし……
王太子の教育はどうなっているのでしょうか…?
私よりは年齢は上だと思いますが、、、
何時国を任せれてもおかしくない年齢の筈なのですが……
ま、まぁ私の精神的な年齢は置いておいて……
はぁ、どうすれば良いのでしょうか?
「おい、お前、行くぞ。俺の側室に戻してやるんだ。ありがたく思えよ。」
「いえ、結構でございます。」
「は?」
素っ頓狂なこの王太子は少し矯正が必要ですね?
「は?ではありませんよ?
私はあなたの側室になりたいなど僅かにも思っておりませんよ?
寧ろ迷惑ですし嫌です。こちらからお断り申し上げます。
あなたの側室になるくらいなら自害しますよ?
別にあなたの側室など私には微塵も価値はありません。
そもそも私は隣の大国、アウストラリス王国の王女ですよ?
アウストラリス王国では実力主義の為、王太子という制度は無く、国王に実力を認められた者が男女問わず次期国王になるのです。
そして私はその次期国王筆頭でした。
あなたの側室なんかより価値があります。
それなのにあなたの思い付きで攫われました。
貴族の令嬢が攫われたらどうなるかくらいご存知ですよね?私の場合は王族ですよ?貴族以上の事が起こるのですよ?
私の人生は大きく狂わせられ、国に戻ったとしても幸せな結婚も今まで通りの生活も無いでしょうね?腫れ物扱いされ続けるのでしょうね?生きている限り。
そして父上は大群を率いてこの国に攻め入って来るでしょうね。
あなたを殺すために。
それに私は国でも多くの民に慕われておりました。今からでも国へ戻り、私が此度の件を多少脚色してアウストラリス王国で話せば士気は上がり、私の名声や地位を取り戻すなど容易でしょうし、寧ろ今回の件を最大限使い、次期国王となるのも容易いでしょうね、そしてこの国を攻め落とすのも、ね。
それにあなたは私に対して過失しかありませんよ?あなた何様なのです?先程から偉そうに。ご自分の為さったことを全く理解していないのですね。王太子?たかが王太子でしょう?いい気になって思い上がっているようですがあなたに何が出来るのですか?
命令すれば聞くだろうと?信頼も実績も何も無いただ長男だから王太子と言われているだけのなんの価値もないあなたに?
ふっ傍ら痛いですねぇ、あぁ、おかしい。
こんな王太子が次期国王だなんて、リビティウム王国の民が可哀想ですねぇ。
現実を見なさい王太子。これ以上敵国であり大国であるアウストラリスに喧嘩を売ってどうするのですか?
あなたの思い付きの所為で多くの民と騎士を殺すのですよ?その家族はどうなるのですか?残された家族は。路頭に迷うのですよ?親子は離れ離れになるでしょうし生活には困り生きて行けなくなるかもしれません。
あなたは命令すればいいだけで高みの見物かもしれませんが、積もりに積もった民の怒りでいつか殺されるでしょうね?
寧ろその方が世の為人の為……
あぁ、そうです!あなたも攫ってアウストラリス王国の王城に一人置き去りにし、近くにいる部下に適当に下賜しましょうか?死ななければ好きにしていい、と言って。
いいかも知れませんねぇ?供も連れず一人で敵国の王城に置き去りの上誰とも知らない者に下賜され、死ななければ好きにしていい、と。
もちろん無一文ですし身に付けている宝飾品程度しか賄賂はありませんし、そもそももうその人の物ですからね。巻き上げられるだけでしょうか?
アウストラリスの人々は私が攫われ下賜されあなたへの印象は最悪ですからね、それに殺しても誰も文句は言わないでしょうね
それか寧ろ殺さずに奴隷として最下級の仕事を一生死ぬ迄させられるか……
とね。あなたのした事の重さを理解しましたか?
あなたは王太子なのですよ?民を守り国を栄えさせる為の存在です。民がいなければあなたはただの無能です。民のためになることをなさりなさい。分かりましたか?」
「は、はい……。」
「そうですか、では着替えていらしては?」
「……?っ!」
だだっ!
走り去る……と思いきや立ち止まり…
ばっ!
振り返った……?何故でしょう?早く着替えた方が宜しいかと……、
「お前、絶対に俺を認めさせてやるからな!
その時はお前を正妻にしてやる!
べ、別に感謝している訳じゃない!
感謝するのはお前だからな!!」
………?……え?なぜ?
「私はウィルトス様と結婚しますので。」
「はっ?何故だ?!」
「何故?あなたが下賜し、私がウィルトス様からの婚約を受け入れたからに決まっているでしょう?」
……ウィルトス様……?まさかお伝えしてないのでしょうか……?目でそう訴えます。
「あっ……国王陛下、王太子殿下、宰相閣下。この度はご報告がございまして……、ひと月後の私の誕生日にフィーリアと式を挙げることになりまして…ははっ?」
侯爵閣下が思い出したようにひと月後の結婚式、挙式を発表。
「「「………………」」」
皆さん無言。
ですよね……
とりあえず着替えに、と王太子殿下が部屋を出られると宰相様が慌てて侍従長を呼び説明や今後のお話を…
そしてアウストラリス王国への報告もしなくてはならないしお城はてんやわんや……
呑気な侯爵と王太子。
ど、同類だったのでしょうか………?!
国王陛下から、
ほんとにいいのか?こいつで大丈夫なのかっ?
と切実で心配そうな視線が、、、
いえ、陛下。私も全く同じことを考えております、
ものすごく心配です。
と、目で会話をしていると…
「フィーリア殿、王太子を、ありがとう。本当はワシ等がもっと早くしておかなければならなかったのだが……。感謝申し上げる。」
「いえ陛下。私もこの国の民になるのですからね、あのような王太子では不安ですので、自分の為でもありますし。それに王太子殿下には少々怖い思いをさせてしまったようですからね。謝らなくてはなりませんね。」
「い、いや、謝られる方が酷というもの、それはお止めくだされ……」
………?
「そうでしょうか?分かりました。」
そして着替えて戻ってこられた王太子殿下からまともな謝罪を受け、それを受け取り、陛下から、アウストラリス国王には今回の下賜の件、正直に話し謝罪すること、王太子は陛下が認めるまで王太子としての権限の全てを剥奪されることに決まったと報告を受けた。
それが一番ですね、父上に嘘をつくのも、王太子殿下に今の権限を与えたままにするのも危険ですからね。
そしてこの日は解散となりまた後日……と。
後日……?
聞き間違えでしょうかね。
そしてウィルトス様と一緒に馬車でお屋敷へ帰る道中
そう、結局侯爵家にお世話になっているのです……
お忙しいのにご迷惑をと申し上げたのですが、
大丈夫です、ここに居るのはお嫌ですか?!という主にメイドさん達からのお言葉…圧力…?によりお世話になる事に、ウィルトス様もウィルトスさんも認めて下さったのでそのまま…と。
良いのでしょうか?……と考えていると
「フィーリア、ありがとう、その、殿下のこと。」
「いえ、私もこの国の民になるのですからね、お気になさらずに。」
「いや、そうじゃなくて」
「そうじゃないのですか……?」
「正妻、側室の事だよ。殿下の方が君に裕福な暮らしをさせられるだろうし、殿下の方が」
「あのまま殿下の正妻になると言った方が良かったのでしょうか…?それがウィルトス様のお望みだったのですか?
たしかにウィルトス様が多少嫌な思いはなさるかもしれませんが…今の王太子殿下なら大丈夫だと思うのですが…
ご迷惑だったのなら、申し訳ありませんでした、
私が勝手に」
「いや、僕は君が僕と結婚するからと殿下の話を断ってくれて嬉しかった。だが、君の将来を思うなら、それに今までの王族の暮らしを殿下なら与えられる、だから」
「私はウィルトス様と結婚するのですよ?侯爵家と結婚するのではありませんよ?
それに王族の暮らしがしたい訳ではありません。私はのんびりと穏やかに暮らしたいのです。
愛していると心から言える方と。」
「っ………。」
「ご迷惑でしたか?」
「いや。フィーリア、君を幸せにする。」
「ふふっ、もう幸せですよ?私を愛してくれる方がいるのですから。そうでしょう?」
「あぁ、もちろん愛している。それに僕ももう充分幸せだよ。」
「良かったです。でもまだ結婚もしていませんよ?それで充分なのですか?」
「そうだね、充分以上は何というのだろう?」
「ふふっ、それはこれから知って行けばいいのでは?」
「そうだね」




