貴族、そしてお屋敷へ
「どれも驚く程に美味しかったですね、あの様に楽しくお食事をしたのは初めてでしたわ、」
「君が楽しんでくれて何よりだよ、」
「リビティウムの方々は貴族に対してもあの様に友好的な方が多いのですね、大変驚きました。」
「いやぁ、あの人たちは君と僕だったからあんな風に気安く話し掛けてくれたんだと思うよ、」
「私とウィルトス様だから…?どういう事でしょう?」
「貴族にも色々いるからね、君の妹さんがそうなんだっけ、まぁその、爵位のある者が絶対。という貴族絶対主義の貴族も少なからずいるからね、そのような者には気安く話しかけたりしないよ。」
「たしかに……下手すれば不敬罪だのと幾らでも言われそうですからね…」
「そうなんだ。
実際に王都でもパン屋なんかで街の人達が並んでいる列を無視して一番前に割り込んで「貴族である私の前なのに何故頭を下げずに立っておるのだ〜」とね、
他にも「何故貴族である私が待ってやっているのに私より先に下賎な庶民なんぞに先に料理を出すのだ〜」とね。
そういう事をするのは所謂 下位貴族と呼ばれるものに多いんだ。勿論、そうでない貴族もいるけどね、
元が爵位を持っていなかった所謂平民出身の者だと、それが特に顕著に見られるんだ。
元平民からすると貴族は絶対でありなんでも許される、敬われ、優先されるのが当然だと思っている節があるようなんだよね、
元々貴族家で生まれ育った貴族は学園なんかで貴族としての最低限の心得なんかを学んでいるからね、特権階級であり特権があるのは理解しているが、平民に態々敬わせたりはしないよ。
寧ろ敬わせたり無理を言っている貴族絶対主義の貴族達を白い目で見たりしている貴族も多かったりするんだよ、見苦しい、貴族の恥晒しだ、とね。
貴族絶対主義、つまり身分が全てなんだ。だからその者達は自分よりも爵位が高い者や、街の有力者、大店の役員なんかが居るとそのような行いは一切しないんだ。寧ろ不自然な程媚びへつらうんだ。
確実に自分より立場が下の者の前でしかやらない……
それも王都に住んでいる貴族の情報は殆ど頭に入っている様でね。当主はもちろんその奥方、娘、息子程度は頭に入っているようなんだ。
他にも大店の役員の家族の情報なんかもね。
それで貴族絶対主義を掲げている訳では無いが、特権階級である事、そして高位貴族である事、その家族であることを鼻にかけている連中に媚びへつらい、上手く自分の地盤を強くして行っているんだ。
だからその高位貴族の影響力がある場所では少しくらいの蛮行は見逃されるしその貴族との関係をチラつかせて無理を通したりするんだ。
その経験から更に気を大きくして……ってね、
覚えるのが得意なら他のところで役立てて欲しいもんだよ、全く同じ貴族として恥ずかしよ。
中央の高位貴族達も問題視はしているんだけどね、領地のことなんかもあるし、恐喝紛いなことはしているが脱税なんかはしていないし無理な徴税もしていない。だから国として出来るのは注意位なもんなんだよ、情けないことにね。」
「そうなのですね……。爵位の無い環境で育ったからこそ分かることもあるでしょうに……勿体無いですね…。」
「全く君の言う通りだよ。」
「そのような貴族絶対主義の貴族が少なくないこの街で、貴族と思われる私たちに声をかけて下さったのですね…それに果物などもご馳走して下さいましたし……今まで貴族に対して嫌な思いもしたでしょうに……」
「あぁ、全くだよ。」
「勇気を持って声をかけてくださったのでしょうかね…」
「う〜ん、勇気を持ってかは分からないけど、貴族絶対主義の貴族ではない事はわかっていたと思うよ。」
「そうなのです…?その方達は派手な装飾のある衣服でも纏っているのでしょうか?」
「いや、まぁ、多少衣服は派手かもしれないけどね。
衣服じゃ無くて、僕達は僕達自身で街に来ているし、自分たちで買い物しようとしたり、歩いていたり、こういったことは貴族絶対主義の者はしないからね。
買い物は執事やメイド、召使いや小間使いがするんだ。
本人が行くのは宝石店くらいかな?衣服は服屋を屋敷に呼んで作らせるしね、まぁ大店の店には本人が態々行って媚びへつらっているけどね、ははっ。」
「そうなのですか……私もまだまだ知らない事ばかりですね……。
ウィルトス様、私がおかしな事をしていたり、この国の常識と掛け離れた事をしていたら指摘して頂けませんか?
私、自分で思っていたより生活する上で必要な知識が足りないようです…。
気を付けますが、もしご迷惑をお掛けしてしまったらすみません…。」
「わかった、何かおかしなことしていたら指摘するようにする。
迷惑なんかじゃないから気にしないでね、寧ろ君がこの国に馴染もうとしてくれるのは嬉しい。
……今までの生活とは大きく変わるかもしれない、だからあまり無理はしないでおくれ。」
「ありがとうございます、ウィルトス様。」
「あぁ、じゃあ帰るか。」
なんとなしに王城へと向かっておりましたが…
「王城では無いのですか…?王城とは少し方向が違うように思いますが…」
「あぁ、本当は王城へと戻る筈だったんだけどね、王城で一人で泊まるよりは婚約者である僕の元で……と先程、侍従長が言伝に来てくれたんだよ、陛下なりの心遣いだろう。」
「そうですか……次にお会いした時にお礼を伝えるのを忘れないようにしなくてはいけませんね、
……、侯爵家にお邪魔してもよろしいのでしょうか?
こんな夕刻になってから伺うのは失礼かと思うのですが……
それも突然…ご迷惑になる様でしたら今からでも宝石を買い取っ」
「大丈夫だから!家に勤めてくれている家令や執事、メイドや料理人は皆優秀だし、一人くらい増えても大丈夫だから!お願いだから宝石を売るのは止めてくれ!」
「……、そうですか…わかりましたわ。」
「うん、よかったよ、」
……?何がでしょう?、
「いや、なんでもないよ。そろそろ着くよ、」
また顔に出てしまったようですね……
むぅ、これはまた訓練が必要ですね…
「フィーリア、フィーリア!着いたよ!」
ん?もう着いたのですか……?早かったですね、
着いたお屋敷は…とても大きいですね…
歴史のある建物のようですし、ウィンクルム侯爵家は歴史のある家のようですね…
門番さんが門を開けて下さりウィルトス様と中に入ります、
これまた大きなお屋敷があってもまだまだ広いお庭が広がっていました……
よく手入れされてる綺麗なお庭ですね……腕の良い庭師がいるのでしょうね、
お屋敷の扉に近付くとひとりでに扉が開いたかと思うと玄関に家令と思われる男性、執事と思われる男性達、メイド長と思われる女性にメイドさん達が綺麗に並んでいました、
王城でも時々見る光景ですね……
まさかここでも見るとは……
この風習はどこでも同じなのですね、
その者達を代表して、執事長らしき男性が一歩前へ出てきた、
「おかえりなさいませ、ウィルトス様。
旦那様が女性をお連れになるとは、、、
明日は雹でも降るのでしょうか? (ぼそっ)
そしてお客様、ようこそお越しくださいました。
私は執事長を勤めております、セルスと申します。
本日はごゆるりとお寛ぎ下さいませ。御手数ですが…不明な点は我々にお尋ね頂ければと、」
「セルス様、ご丁寧にありがとうございます。
そして他の皆様にもまずはお詫びを。
突然先触れもなしに訪れる失礼を…申し訳ありません。
本日は侯爵閣下のご好意でお世話になる事になりました、よろしくお願い致します。
遅くなりましたが私は」
「フィーリア!侯爵閣下は止めてくれと言っただろう?!それに本日はご好意でお世話に〜なんて他人事な!」
「い、いえ、ですが……」
「君は畏まり過ぎるんだ!」
「い、いえ、ですが、突然よその家へ、それもこんな夕刻に先触れも無しに訪れるなど無礼極まりないではありませんか。無礼を、そしてご迷惑をお掛けしてしまうのですからお詫びを言うのは当然でしょう?」
「だから……フィーリア、、、」
「それに今日は陛下のご好意ですが、明日からは王城に泊まることになるかもしれませんし……本日は、というのも間違えではないでしょう?」
「たしかにそうかもしれないが!」
「でしょう?」
「そうじゃなくて!君は僕の」
「何を玄関で騒いでいるんだ?」
「ウィルトスさん、お帰りなさいませ。」
「フィーリアさ、さん?!どうしてこちらに?!」
「城では心配だろうと陛下のご好意で本日はお世話になる事になりまして、」
「あ、兄上……。本当に何をなさったので?」
「い、いやぁ、はははは。」
「お帰りなさいませウェルトス様。失礼ですが、こちらの女性は……?」
「あれ?セルスならわかると思うけどなぁ」
「私が……?」
無礼にならない程度の視線で私を観察するセルス様、そしてドレスで目が止まり…またもやお顔が……
「こ、これは誠に失礼を……、アウストラリス王国の王族の御方とお見受け致します。先程は……!!第二王女殿下でしょうか?!」
「えぇ、ご挨拶が遅くなりましたが、私はアウストラリス王国第二王女フィーリア・レーナ・アウストラリスと申します。そして」
「僕の婚約者さ」
「「「「「「「…………!!!!」」」」」」」




