十四話
結果として、子息たちは怯えた風にすごすごと立ち去って行った。さっきはああ云ったけど、向こうが如何出るかは未知数だもんなー。はぁぁ、やらかしたなぁ……ちくしょう。
そして気疲れが酷い。こんなん二度とやりたくねー。
「ご立派で御座いましたよ、坊ちゃま。」
「うん、俺頑張った。だからあとで甘えさせてくれ。」
「はい、お望みのままに、幾らでも。」
うんざりとして肩を落としながら、レイセルと口直しに軽口を叩きあう。
そんな俺達を、困惑しつつ窺う二人の令嬢に改めて顔を向けたんだけど。
うん、凄い怯えられました。理由は判るけどさぁ、そういう態度されると地味に傷つくからね?
「「ひっ!?」」
「あー、目を付けたってのは方便だよ、方便。実際に何かする算段なんかねーから。いやほんと。」
「「……。」」
うん、さっきの今で、口先だけじゃそら信用し難いわな。口調もいきなり砕けてるしさ。でもなー、実際何もする気が無いし。
んー、彼らに声を掛けられるくらいには、容姿が整ってる二人なんだけどね。
下半身的な事情は、レイセルとアリアで十分間に合っていますし? わざわざ嫌がる令嬢を手篭めにするほど、悪趣味じゃございませんて。
「まあ、今後は何か言われたら、俺の派閥に入っているとでも答えとけばいいさ。うちより上の家格の相手でなければ、多分それでどうにか成るから。んじゃーね。」
「あ、あの、本当に……」
「んー?」
「その、夜伽、とか、呼ばれないの、ですか?」
「うん、必要ないな。間に合ってる。」
チラリと隣のメイド、レイセルに目配せしてやれば、意味が判ったのだろう令嬢たちは頬を染めながらも、ひそひそと言葉を交し合う。
やがて結論が出たのだろう、後ろを向いて泣き顔やらなんやら取り繕ってから、改めてこちらに向き合いカテーシーをして見せる。
「ライハウント様、お助けいただき、ありがとう御座います。」
「そして先ほどのお言葉、ありがたく甘えさせて頂きますわ。」
と言う訳で、作る気もなかった派閥のメンバーが初日から二人増えましたと。うん、これ以上はいらんな。めんどい。
それに、今回の二人は一応助けられたけど、俺の知らないところで餌食になる令嬢まではどうしようもないからね……。所詮は偽善だよ。
明日から暫らくは、そんなこんなで雰囲気最悪の学園生活になるんだろうなぁ……(げんなり)。