十三話
構わず真っ直ぐ進み、令嬢たちを囲む子息の一角を、有言実行で蹴り飛ばしてやる。おお、なかなかいい飛びっぷりだなー。
「うぎゃあっ!?」
「げひっ!?」
二人ほどその場に転がり、別の二人ほどが五メートルほど吹っ飛んで道脇の芝生の上で、蹴られた背中の痛みに呻いて転がりまわる。
突然降って湧いた事態に、それまで調子付いていた子息たちが固まり、囲まれていた令嬢たちは驚きの視線でこちらを見やる。
「ライハウント子爵家嫡男である俺の前を塞ぐとは何事だ?
しかもその二人は、俺が目を付けていた者達では無いか。一体誰の赦しを得て、こんな真似をしているのだ貴様らは?」
可能な限り傲慢に、口調と台詞で嘲る振りをして、奴らが立ち直る前に一方的に告げてやる。これでもし俺より爵位が上の相手が居れば、それこそ自分の首を絞めてしまうが、今回に限ってそれは無い。
何故なら下級クラスの者達は、全員がそれを表す銀のブレスレットを目に付くように手首に嵌めておかなければいけないからだ。在学中はな。因みに上級クラスは金だ。
そしてこの場に居るのは総じて銀、詰り全員が下級クラスであり、ならば俺の身分が有効となるんだよ。
うん、もし金が居たら、多分こんな真似してません。何しろ凡才ですから、自分。
「こ、これはライハウント様で在られましたか。ご無礼を平に謝罪させて頂きます。
しかし、我らはデブロッド子爵家由縁の者。貴方様も、この意味はお分かりに成りましょう?」
「無論判るとも。で、そのデブロッド殿は今何処に居られるのかな?」
「はい、我らが成果を持ち帰るのを、自室で待ち兼ねられております。」
「ほう、此所には居られないと。詰まり、貴様らは俺より身分が下であると理解しながらも、それに抗弁するというわけだな?」
「え? い、いえ、ですから我らはデブロッド様の――」
「だまれっ!!」
「「「っっ!?」」」
レベリングで鍛えた肺活量で、あらん限りに一喝してやる。あー、くそ。この演技、地味にストレス感じるな。
「この場で尤も上位者は誰だ? 貴様か、それとも貴様か? 俺が子爵家の者だと知って、なお口答えをするのだから、当然同位かそれ以上であろうなぁ? ん?」
「そ、それは……。」
「貴様らに許されるのは、俺の意に従うか、無礼討ち覚悟で抗うかだ。さっさと選べ。」
「っ!? で、デブロッド子爵家と争われる御積もりですか!」
「ん? 貴様はデブロッド殿ではないのだろう?
ならば問題ないな。争うとすれば我が家と貴様の家が当事者と成る。デブロッド家には、何の瑕も付かないであろうよ。」
「……っ。」
まあ、実際如何だか分からないけどさ。こう云っておけば相手には報告として、必ず伝わるだろうし。
『ライハウント家は、デブロッド家と争うつもりは無い。』って言葉裏の意味が、ね。
配下の一人が別の家の者に手討にされるとか、そりゃ確かに面子の問題に成るだろう。
だが、相手が自分たちと同様に横暴な貴族で、しかも同爵位と来ればまだ腹の収め様はあるのだ。同類だと思うと妙に気を許しちゃう、あれだ、同じ穴の狢って奴?
これが正義感を振り翳してきた相手なら、『正しさ』を争う必要が出て来るだろうが、『女を奪い合う』という下劣な争いで声高に家の面子を押し出せば、恥を掻くのは向こうになるからね。
だから最悪、本当に手討にする事に成っても、この取り巻き君の家を切り捨ててデブロッド子爵家は関係ない。という態度に出る可能性が高いんじゃないかなー?
あれだ、政治家の不正が暴露されたら、『それは秘書が勝手にやりました』理論という奴だな、うん(偏見)。




