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白亜のノート ―元中学生、文明を書く―  作者: 伝説の男前
第一部 生き延びる

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18/105

第18話「木の家が立つ」

 刃物とのこぎり、そして釘という新たな道具を得て、集落の景観は、目に見える速さで変わり始めていた。


 これまでの住居は、木の枝を組み、獣皮や葉で覆う、簡素なものがほとんどだった。雨風をしのぐことはできても、耐久性には限界があり、大雨や強風のたびに補修が必要だった。


 だが、のこぎりで加工された木材と、釘による強固な接合が可能になったことで、イワとドウは、まったく新しい構造の建物を作り始めていた。


 湊はこの過程に、できる限り関わろうとした。とはいえ、実際の建築技術については、湊自身、断片的な知識しか持ち合わせていなかった。せいぜい、柱と梁を組み合わせる基本構造や、屋根の傾斜が雨水を流すために重要だという程度の知識だ。


 それでも、イワとドウにとっては、その断片的な知識さえも、新たな発想のきっかけになった。


 ドウは、まず建物の土台部分に着目した。地面に直接柱を立てるのではなく、石を組んだ基礎の上に柱を据えることで、木材の腐食を防ぎ、建物全体の耐久性を高めるという工夫を編み出した。これは、湊が何気なく口にした「木は湿気に弱い」という一言から、ドウ自身が発展させたアイデアだった。


 イワは、建物の意匠面において、独自のこだわりを発揮し始めていた。単に機能的であるだけでなく、柱や梁の接合部に、彼らしい装飾的な彫り込みを施すようになったのだ。実用性を求めるドウと、美しさを追求するイワの間には、時折意見の食い違いも生じたが、その衝突自体が、建物の完成度を高める原動力にもなっていた。


 最初に本格的な木造建築として完成したのは、集落の中央に建てられた、共用の集会所だった。これまでの焚き火を囲むだけの広場に代わり、雨天時にも人々が集まれる、屋根付きの空間だ。


 完成した集会所は、これまでの小屋とは比較にならない規模と堅牢さを誇っていた。太い柱が屋根を支え、壁は隙間なく板が張られている。内部は広々としており、集落の全員が一堂に会することができた。


 完成の日、集落中の人々が集会所に集まり、その空間の広さと快適さに驚きの声を上げた。オルガもまた、その場にいた。彼女は柱に施されたイワの彫刻を、興味深そうに眺めていた。


 この集会所を皮切りに、集落の住居も、一軒また一軒と、木造建築へと建て替えられていった。もちろん、すべてを一度に建て替えることはできない。優先順位をつけながら、少しずつ、着実に進められていった。特に、シラの薬草保管庫や、タギの鍛冶場といった、専門的な作業に使われる建物から、優先的に整備が進められた。


 湊は、この変化を眺めながら、ふと、恐竜という存在への警戒を、改めて意識するようになっていた。


 これまで集落は、比較的恐竜の往来が少ない場所に位置していたため、直接的な脅威に晒されることは少なかった。だが、木造建築が増え、集落の規模が目に見えて大きくなるにつれ、その存在は、遠くからでも目立つようになってきている。


 湊は、ガルにこのことを相談した。ガルもまた、以前から同じ懸念を抱いていたようだった。特に、雨季に入ると、水を求めて大型の草食恐竜の群れが、集落の近くまで移動してくることがある。これまでは幸運にも大きな被害はなかったが、いつまでもその幸運が続く保証はない。


 湊は、レポート用紙に、次なる課題を書き記した。


『木造建築が本格化。集会所を皮切りに、専門施設から順次建て替えを進行中』

『恐竜の脅威への備えが急務。防壁や堀といった防御施設の検討を開始すべき』


 書きながら、湊は、これまでとは異なる種類の緊張感を覚えていた。これまでの課題は、主に「生き延びる」「発展させる」という、内向きの努力だった。だが、これから向き合うべき課題は、外部からの脅威に対する「守り」だ。


 集落が発展すればするほど、守るべきものも増えていく。それは、豊かさの証であると同時に、新たな責任の始まりでもあった。


 夜、湊は完成したばかりの集会所の中で、火を囲む人々の姿を眺めていた。木の壁に囲まれた温かい空間、笑い声、そして安心感。この光景を守るために、次に何をすべきか。湊の頭の中では、すでに次なる構想が、静かに形を取り始めていた。


 堀。壁。防御のための土木技術。それは、ドウの領分であると同時に、集落全体を巻き込む、次なる大きな挑戦になるはずだった。


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【第18話 時点 文明発展状況】

人口:33人(集落含む)/漂着後 205日

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01 生存・サバイバル ★★★★☆ 継続中

02 食料・農業    ★★★★☆ 継続中

03 畜産・動物    ★★☆☆☆ 継続中

04 漁業・水産    ★★★☆☆ 継続中

05 狩猟・採集    ★★☆☆☆ 継続中

06 水・衛生     ★★★☆☆ 継続中

07 医療・薬学    ★★☆☆☆ 継続中

08 住居・建築    ★★★★★ 木造の集会所が完成、専門施設から建て替えが進行

09 土木・インフラ  ★★★☆☆ 防壁・堀の必要性が浮上

10 火・エネルギー  ★★★★☆ 継続中

11 鉱業・金属    ★★★☆☆ 継続中

12 製造・工業    ★★★★☆ 継続中

13 科学・技術    ★★★☆☆ 継続中

14 言語・文字・出版 ★★★☆☆ 継続中

15 教育・研究    ★★★☆☆ 継続中

16 経済・商業    ☆☆☆☆☆ 未着手

17 政治・法律・行政 ★★★☆☆ 集会所の完成により集落運営の中心地が誕生

18 外交・交通・情報 ★★☆☆☆ 継続中

19 軍事・防災・治安 ★★☆☆☆ 恐竜の脅威への備えが急務として浮上

20 文化・娯楽・思想 ★★★★☆ イワの装飾文化が建築に統合され始める

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【新規記述書物】『木を組む書・第一葉』(木造建築の基礎技術記録)

【次なる課題】防壁・堀の建設、恐竜襲来への備え】

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