141.反乱2
海王星を過ぎた辺りで晩ごはんを食べたら休みましょうよとアイリーンが言い出した。
寝るのはいいのたけどカプセルベッドが2台しかないことが判明する。
「昴くんはあの日の九論に良くそんな強気の発言ができたわね朝からピリピリして……なんかえらく怖かったわよ」
「僕も余裕がなかったんだよ、出発予定時間が迫ってた中で九論があれもこれも積んでそれは下ろしてくれとか言うもんだからさ、もう天手古舞い状態だったんだからね」
「あれーっおかしいわね、パワードスーツ着込んで作業してたわよね」
「着てたさ、でも初めて着たんだよ力加減とかわからなくてさあ、苦労してる時に九論が『それを潰すと恐ろしい事が起きるからな』とか言って脅すんだ。精神的にも疲れたよ」
「それは災難だったわね、でもそれとこれとは別にしてもらうわよ、だからうちとレヴィがそれぞれカプセルベッドを使わせてもらうからね、昴くんは昔なつかしの副操縦席で寝てもらえるかしら、キャプテン・ザ・シートでも良いわよそれともうちと一緒に寝る? 」
〈ブッ〉
どこかのスピーカーから何かが潰れた様な音がした。
「もう愛鈴、冗談は休み休み言ってよね。もし二人が一緒に寝れるんだったら愛鈴とレヴィさんが一緒に寝て、僕が一人でカプセルベッドを使わせてもらうよ」
「あら、うち達がそういう仲になっても良いのかしら」
「あ~っもう……そういう仲ってどういう仲なのか説明してもらいたいよ! まったくもう~、わかったよ僕は自分の席で休むからね、たまにはスターキッドAIと語り合いながら寝るのもいいかも知れない」
昴くんは言葉通りに副操縦席で休みスターキッドAIの恋愛論を聞きながら眠りに落ちてゆく。
〈昴くん、昴くん起きて下さい〉
「う~ん、あと3分……」
〈天王星のレッド隊長より通信が入ってますよ〉
昴くんは文字通り跳ね起きた。
「うゎわわ……はい、こちらキャプテンキッド……うゎわわ違った」
〈サブキャプテンしっかり目を覚まして下さいよ、違うもなにも今手にしてるのはマイクじゃないですよ〉
「あわわわわ、マイクはどこだ~」
〈ヘッドセットが肘掛けの中にありますって〉
昴くんは深呼吸をしてレッド隊長に対応した。
「ふう、通信終わり。ねえ何で愛鈴を先に起こさなかったのさ」
〈こんな中途半端な時間に起こしたらどんな目に遭わされるか想像もしたくないですし、好意を持って連絡してきたレッド隊長の前に不機嫌なアイリーンを出したくなかったのです〉
「十分理解できたよ、それで明日の朝は6時に起きる予定だったからあと1時間後には僕が愛鈴から痛い目に遭わされるんだね」
〈頑張ってください〉
(何を頑張ればいいのやら)
翌朝レッド隊長からの通信のことをアイリーンに話したけど、返事が欠伸まじりにかえってきただけで何事もなく過ぎたので安堵の溜め息を漏らす。
今はうずしおに向かって進行中であと1分もしない内に突入する。
昨夜のレッド隊長からの連絡は『〖うずしお〗の準備は完了した。急いでる様子だったから手続きは省略するので真っ直ぐ入ると良い、次に来る時はゆとりを持って来て欲しい』と言う内容だった。
「10秒前、9・・・」
昴くんがカウントダウンを始めている。
「突入!」
アイリーンが号令を掛けた。
〖うずしお〗はトンネルと違って入口と出口の間に距離がない。
「離脱!」
だからその言葉はアイリーンの号令に重なった。
「無事に抜けたわね……少しだけびびったけど」
「愛鈴が減速する時間が勿体無いなんて言い出すからだよ」
〈そうですよ、あれからだと最大マイナス10Gに耐えてもらえばそんなに時間ロスせずに済んだと思いますよ〉
「お酒のビンが割れたりしたら大変でしょう」
「お酒を積んだの?」
昴くんが知らないふりをして聞く。
「あっ! しまった。お酒じゃないわよ……あれは一体何だったかしらね」
アイリーンはしらを切った。
〈アイリーン惚けてみても無駄です。フルボトルワインを5ケースと他にも色々積みましたね。それと信じられない事が起きてますので倉庫へ急いで行って下さい〉
「何なのよはっきり言えばいいじゃないの」
(まさかうちが内緒で積み込んだ色々な物が消えちゃったとか言うんじゃないでしょうね、増えたんなら喜ぶのだけど)
「愛鈴、僕が行って見てくるよ、君は操縦席から見守っててよ。基地から通信があるかも知れないからね」
「私も一緒に行きますわ。何かありました時は一人より対処し易くなりますでしょう」
レヴィが環境管理席から立ち上がってくる。
「そうしてもらえると助かるよ、愛鈴それでいいかなあ」
「うちはいいけどレヴィは大丈夫なの凄く危ないかも知れないわよ」
「えへへ、私はこう見えて結構強いのです」
(その細腕のどこが強いんだろうか)
昴くんは心配した。
「わかったわ行ってらっしゃい。お願いだから暴れて周囲の物を壊さないでね」
アイリーンがレヴィに言う。
「私が頼んで積んだ物もありますからそんなヘマはしません」
(なんだ、愛鈴だけが隠れて積んでたんじゃなかったんだ、面と向かって言わなくて良かったよ)
「レヴィって強いの?」
倉庫へ行く途中で聞いてみる。
「そうですわね、回し蹴りさえ決まれば大体ケリがつくと思われますわ」
「蹴りでケリだね。レヴィも中々言うんだね、その鱗の足で蹴られたらさぞ痛いだろうね」
レヴィの足はびっしり鱗で覆われてて見方によってはキラキラとよく光っていて美しい。
「ズボンは穿かないの……」
(ヤバイよセクハラ発言になるかも知れない)
「そうなのですわ、本当は穿きたいのですけど直ぐに鱗でボロボロになってしまうのです。だから地肌なんですから……あまり見ないで欲しいです」
「あっ、やっぱり気にしてましたですよね、すみませんでした!」
昴くんは平謝りに徹した。
「この扉を開けると倉庫です、開けますよ」
扉を開け照明を点灯させて二人で奥へと進む。
「そう言えばスターキッドAIは『信じられない事が起きてる』としか言わなかったよね」
(この辺の宇宙って確かヘンナ私兵艦隊との大規模戦闘があって大勢の人が死んだ場所なんだよね『宇宙幽霊』とかじゃないといいな)
昴くんがレヴィに近づく。
「誰か居らっしゃいますか? 居らっしゃいましたら出て来て下さいな、今なら手荒なことはしないですよー」
倉庫内でレヴィの警告が反響する。
「ひえ~っ!」
昴くんが悲鳴じみた声を上げる。
レヴィはその声に驚いて昴くんにしがみついてきた。
「昴くん、変な声を出さないで下さい私が驚きます。あっ、どうしたのですかそれは……」
レヴィが昴くんの肩に乗ってる小柄な生物を指差しながら聞く。
フレア族の精霊獣フレアホースがすまなさそうに昴くんに頬擦りしている。
「えっ、スーちゃんなの」
「えっ、もしかして精霊獣なのですか? そして仲良し」
「うん、スーちゃんが居るってことはロースさんも居るはずなんだけど」
「精霊獣が居るのならば精霊さんも居ておかしくはないです」
「ロースさん出てきて下さい。大丈夫ですよこの人は海王族のレヴィさんで今は一緒に旅してるのです」
昴くんはレヴィさんの口癖が移ったみたいな喋りになった。
「海王族と言ったら準妖精族。私達の親戚筋に当たる」
コンテナの陰からロースさんが出てくる。
「もうスターキッドAIもはっきり言ったら良かったのに、気苦労のし過ぎだよ」
〈ハッキリしなかったのですよ〖うずしお〗の中での出来事だったので情報不足だったんです。もしかしたら影だけが映り込んだのかも知れないと思ったんで人の目で確認して欲しかったんです〉
「え~っ、スーちゃんとロースさんが来てるんだったらうちも行けば良かったよ」
アイリーンがコクピットでスターキッドAIのスピーカーから流れる音声を聞いて残念そうに言う。
「二人でってことはシューウォッシュナビで跳んで来たんですか? でも4年後に到着する妖精さん達のドーム建設なんかを手伝って欲しいって言われてC2に残ってたんですよね」
昴くんがコクピット迄の帰り道に質問責めにしている。
その内容はスターキッドAIの中継によってアイリーンにも伝わっていた。
「昴くんずるーい、うちもお話したいのにぃ、こっちに戻ってから一緒にお話ししましょうよー」
「愛鈴にも聞こえてるよね、ちゃんと受け答えできてるみたいだし問題ないよね」
「スピーカー越しじゃなくて直接会って話したいのよー」
「わかったよ、もう着くから休憩室じゃなくてコクピットでいいんだよね」
「うん、そうしてよね昴くんが戻ってきたら直ぐ司令官に連絡しましょうね、レッド隊長から前もって連絡入れてもらってるのだけど、なんかここ最近は伝言ばかりで直接話ができてないらしいの」
(オビスのおっちゃんに連絡取れないって変ね、元気にしてるといいんだけど、まさか病気で寝込んだりとかしてないよね)
アイリーンがオビス司令官の心配をしていると扉が開き昴くんたちが入ってくる。
「あっロースさん久しぶりスーちゃんも、二人共シューウォッシュナビで跳んで来た割には元気じゃない」
(昴くんの肩の上に居るスーちゃんも、うちの中ではあれからまだ3日も経ってないのに何かしら凄く懐かしいわ)
「うん、久しぶりアルファ星C2の地球人達からずいぶん力を分けて貰ったから余裕で来れた、それにあれから4年間、訓練もたくさんして上達できた」
「4年!?」
アイリーンと昴くんは二人して、ロースさんの言葉を聞き間違えたと思った。
4年の発言について問い質す前に東域宇宙和平維持連盟地球防衛基地よりラース司令官を名乗るリザード星人からの通信が入ってくる。




