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ユニークスキル ”シャカパチ” ただでかい音がでるだけじゃねーか

関東は台湾まぜそば食えるとこが少ない。

 ここは転生者が初めに召喚される街、トレスパークシティ。


 中世ヨーロッパ風ののどかな街並み。争いもなく街全体が活気に満ち溢れていた。異世界ライフをスタートさせるにはうってつけの街である。


 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ


 そんな平和な街に異様な音と異質な風貌と独特なにおいを醸し出している一人の童貞がいた。その名はパチ男。絶賛恋人募集中な悲しき童貞なのだ。今日も今日とて人の目を気にすることなくシャカパチにかまけていた。


 初めて来るので興奮して適当に街を見て散歩していたのだが、すぐに飽きてしまう。すると、丁度いい木箱があったのでそこに座ってシャカパチし始めたのだった。


 俺の目には俺だけにしか見えないシャカパチメーターが空中に表示されていた。一時間ほどシャカパチしているが、いまだ3%、先は遠い。


「いい、いい、いいよぅ 」


 手触り感は生前使用していたスリーブと同じものだった。表面はつるつる、裏面はざらざらしたザラスリがパチ男のお気に入りだ。滑らかに滑り込む感じが完全再現されていて、もう脳汁ドバドバのドびゅっしーだ。


 通行人の冷ややかな目を気にすることなく無我夢中でシャカパチするただの変態がそこにはいた。


「たまら、たまらなっっっ、いっぅっっ!! くっ、危ない意識が飛びかけた 」


 シャカパチメーターはまだ5%。この調子じゃ終わらない。こんな快楽を得られる単純作業他にはない。


「必ずものにしてみせる! 」


 指先に気合が入る。今まではシャカパチを疎ましい目で見てくる奴らに対抗心をもってやっていた。それが今は! 一目なんか気にしなくたっていいんだ。なぜならここは異世界だから!


「絶対引くんだ! 俺のドローをぉぉぉぉ! 」


 叫んだ。とにかく心の中で叫んだ。突然叫んだら迷惑だからね。


 風呂もトイレも食事も何もかも忘れて、彼はシャカパチをし続けるのだった。チャージと共に高まっていく体臭のことも忘れて。


ーーー転生三日目ーーー


 ついに彼の体臭は半径100メートルを大気汚染するほどまで匂っていた。周辺住民は外出を控え、窓を開けることすらできない状況だ。災害クラスの体臭を放っている男、釈迦 パチ男はそのことお構いなしにシャカパチを継続する。


 そこへ通報を受けて駆け付けた警備兵がやってきた。


「き、ぎざま! ここで何をじでい、ぶっ、だめだ! くざずぎる! 」


 あまりの臭いに鼻と目が犯される。涙が滲み目が開けられない。猛烈に臭すぎる。


「ええい、許ぜん! 汚臭と異音を撒きぢらじながら平和をおかずとは! 成敗! 」


 警備兵はあまりの臭さについうっかり斬りかかろうとした。


「、、、お構いなく 」


 パチ男は手のひらを相手に向けて唱える。すると、警備兵の刃は見えない障壁に弾かれ後退した。


 これが自分に干渉しようとする相手を完全拒絶するスキル ”お構いなく” だ。


 刃物すら弾いてしまうこの薄汚い男は魔族の使いに違いないと応援を呼びに立ち去る警備兵。大事になっていることなど気にせずシャカパチを続ける釈迦 パチ男。平和な街は彼の体臭によって混沌へと堕ちていく。


 少しすると、警備隊が彼の元にやってきた。警備隊長が彼に問いかける。


「貴様がこの街の平和を脅かす悪しき魔族か! 人の姿に化けて我が国侵入するとは許せん! 成敗してくれる! 」


 他の隊員たちは汚臭で苦しむ中、隊長はひるむことなくパチ男に向かって怒鳴りつける。隊長はどうやら鼻づまりらしい。だが、返答もせずシャカパチに没頭するパチ男に怒りの頂点はピークに達した。


「無視をするな! 市民の平和を守るため貴様はここで駆逐する! 覚悟しろ! 」


 と隊長は抜刀。すぐさま斬り捨てようとしたが、突然パチ男は立ち上がった。


「お構いなく、、、トイレはどこですか? 」


 隊長の渾身の一振りを弾くとすかさずトイレの場所を尋ねる。


「トイレだと?! 貴様! 漏らすというのか! 汚臭を撒き散らすだけに飽き足らず汚物まで垂れ流し我々の国を汚し犯し蹂躙すると! 魔族の分際でどこまで我々を愚弄するか! 殺してやる! 今すぐに! 」


「あの、漏らすなんて言ってないんですけど。トイレの場所を教えてほしいのですが 」


「ええい、許せん! わが主、ロード王よ! あなた様の尊き魔力お借りいたします! ファイア・オブ・ゴッド!! 」


 隊長の全身から魔力が放出される。その魔力は剣に注がれ、炎を生み出し刀身を紅く燃やす。


「おぉ、炎の騎士! 」


 パチ男は燃えた刀身に魅了され、見とれていた。ボケーっと見つめてくるパチ男にイライラMAXの隊長は掲げた刀を一気に振り下ろすと、炎の斬撃が解き放たれた。迫りくる炎の斬撃。危機的状況下でもパチ男は落ち着き詠唱する。


「お構いなく、、、 」


 かざした手の平は炎の斬撃を跡形もなく消し飛ばした。


「なっ、、、! 」


 奥義を無効化され目を丸くする隊長は、今起きた現象を飲み込む前に連撃を繰りだしていく。


「おおおおおおおおおお 」


 炎の連撃。これで多くの魔族を屠ってきた。これならと切らした息を整えていると、晴れた煙から無傷のパチ男が現れる。


「なん、だと、、、?! 」


「簡易トイレありがとうございました 」


 チャックを上げるパチ男はとてもすっきりしていた。何が起こったのかまるで分からないが、決定的瞬間を見ていた警備兵が震えながら言った。


「俺、みたんだ、こいつが片手で隊長の攻撃を打ち消しながら、もう一方の手で自分のマラを出し、おしっこしていたのを、、、 」


 隊長は大口を開けて吠える。


「わ、わたしの攻撃を使って、立ちションをしたというのか。おっしこは私の炎ですぐに蒸発する。貴様、計算ずくで防いだと、、、?! 」


 トイレを済ませ、再び木箱に腰を下ろしたパチ男はシャカパチを再開する。


 もうよくわからない隊長はなりふり構わず攻撃するが、全て弾かれる。そのため、同じ展開を夜が明けても繰り返すことになったのだった。


ーーー転生七日目ーーー


 街全体が汚臭に犯されていた。人々は荷物をまとめ隣街に疎開する羽目になる。パチ男の体臭は限界突破。街を丸ごと飲み込み、ついには国軍まで出動する事態に発展していた。軍は彼を包囲し、武器を構えいつでも殺せるようにしていた。


「構え~~~! 放て~~~!! 」


 魔力を装填してエネルギー弾を放つ魔銃。何丁もの銃口が彼に向かってラブコールを響かせる。


 だが、彼は進化していた。シャカパチをしながらスキル ”お構いなく” を発動できるようになる。そのため彼に向けて放たれたエネルギー弾は全て弾かれ、離散し、大気のマナに溶けていく。

 

 効率的にチャージが溜まるようになり、シャカパチメーターも98%。あと少しで一枚ドローすることができる。


 ここまで一週間もかかった。とんでもなく長かった。おかげで周りに佇む大人たちを怒らせてしまったがもうここまで来たら最後までやりきる。最高のドローをしてみせる。


「異臭を放つ魔物よ! ドミノ王国騎士団長である”ドラグーンエクィテス”に貴様の小細工など通じぬ! 喰らえ! ドラグーンランス!! 」


 槍使いの騎士団長が放つ必殺技”ドラグーンランス”はどんな頑丈な楯も無敵の防御魔法も無効化し貫通する、はずだった。


「お構いなく! 」


 それをパチ男は弾いたのだ。人生で出したことのないような一番大きな声で希望に満ち溢れまくった声で叫び騎士団長の槍を弾き返した。


「チャージ完了だ!! うぉぉぉぉぉ!! 」


 歓喜の雄たけび。一週間の風呂キャンの末にシャカパチの頂に達したのだ。人としての尊厳を捨ててまで獲得した。最高の一枚をドローする権利を! この手で掴み取ったのだ!


 左腕の手首が光る。パチ男はそれにそっと右手の人差し指と中指を添える。そして目を閉じ、意識を指先に集中。声高らかにデュエリストの魂を叫ぶ!!


 全身全霊を込めて最初の一枚を引いた。


「俺の、、、タ~~~~~~~ン! ドロー!! 」


 目を少しずつ開けていくと、俺の運命のドローカードが姿を現してきた。


「これは、、、! クリボー? 」


 突如カードが発光。初めてのモンスターがついに俺の目の前に現れたのだった。

たばこデビューしました。

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