#21 迅雷風烈 ④
全身、映る景色の全てを、“比喩ではなく現実”として赤で染め、その周囲を回転するように波打ちながら、幾つもの“赤雷”を纏い始める、双葉カエデ。
當真が見てきた中でも、その“質と量”はこれまでとは比べ物にならない程の“圧”を見せつけ、文字通り“非日常”を“圧倒的”に印象付けている、この現状において
双葉カエデの表情は、“かつてないほどの緊張感”を漂わせていた。
「・・・・・チッ、“化物”がいよいよ“本気”出してくれるってワケ、ですか?」
ヴッッッッッヴォォォォォォッッッッッゴォォォォォォォォォヴォォォォォォッッッッッッッッッッ
吹き荒れ轟き続ける、“暴風”の不協和音。周辺一帯の“風”の“全て”が、目に見えて緋色の少女の“右手”に集約されているのを、誰しもが本能的に“理解せざるを得ない”ほどの、超常現象の重圧がそこには在った。
“言うなれば”、つい直前まで“護る”為に展開されていた“暴風の鎧”の“全て”が、その“右手”に集約されて、圧倒的質量と存在感を放つ“暴風の巨大砲弾”が形成されているかのようで・・・
「“もう一度聞く”けど、“理由”を話す気にはならない?“・・・・・・・全力”だと、私、“手加減”出来ないけど?」
荒ぶる“暴風の塊”を纏った“右手”を掲げて差し向けながら、ただその口調は冷静なままに、楓は双葉カエデに言葉を届ける。
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾッッッッッッッッッッッッッ
“重圧”と“存在感”が“風”に乗って伝播するように、離れている當真の元にまで届いてくる。対峙している双葉カエデの受け取った“それ”は、當真の比ではないのは言うまでもないが。
短い付き合いではない當真も、“数えるほど”しか体感したことがない“それ”の“正体”を、當真はすでに“知っていた”。
“それ”は、この世界でも数少ないとされている『レベル・2』の“魔法使役者”が見せる、“本気”の“証明”。
(距離が在るにしても、“巻き込まれない”とは言えない・・・少しでも“嫌える”ように・・・)
大地を踏みしめる両脚に“改めて”力を込め、いまだ目を覚まさないくれはとパレットの二人の前に仁王立ち、“その余波”が万が一にでも“届いた”場合を想定し、當真は自身の“右手”をまっすぐと掲げ、固唾を呑んで動向を見つめる。
「・・・はっ、言ったじゃん?“理由”ならアンタが勝ったら教えてあげるってさあ?だからー」
バヂッ、バヂヂヂッッッッ、バヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂリリリリリリリリリリリリッッッッッッッ
“赤雷鳴”が轟き、掲げた“左手”に収束されていく。囂々と戦慄きながらその手に形成されるのは、“巨大な赤雷の砲弾”。
「アンタが“理由”を聞けることはないんだよおおおおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」
ゴッッッロロロロロロロ!!!!!!ドッッッッッッッバヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂッッッッッッダッッッッッッバアアアアアアアアンンン!!!!!!!!!
叫び、放たれる、“赤雷砲”。それは、これまでのような“変化に富んだ”攻撃などではない。
小手先など一切無い“正面突破”、真っ向からの“最速最大”の一手。赤き雷鳴轟く、瞬迅の“開戦と終戦”を告げる一撃。
その手から放たれた瞬間に、爆ぜる様に空気を“焦がし”、“裂き”、戦慄き猛威を叫びながら楓の元へと一直線に邁進する“赤雷閃の一撃”は、周辺の空間の色彩を“支配する”ように、當真の視界の“色”を、夜闇に包まれた“黒”から瞬時に“赤”へと染める煌めきを放ち、瞬く間に楓の元に届ー
「『緋色の暴風』」
緋色の少女は、謳う。自らの“魔法名”を冠する“、その魔法”を。
ゴッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!ガッッッッッッッヴウウウウウウウォォォォォォォヴアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!!
“瞬間”。“空気”が揺れる、いや“大気”そのものが全てそこに吸い尽くされていくような感覚が空間を支配していく。そして、収束され続けながらも一気に“膨張”していく“暴風”。超常たる非日常の“現象そのもの”が、楓の“右手”から解き放たれる。
囂々と、触れる大地を削り、“巻き込み上げ”ながら猛進する“暴風”そのものは、楓に向かって放たれた“赤雷閃の一撃”さえも瞬時に“呑み込み”、その内側で“四散”させ“同化”させながら唸り、その勢いを止めることなく、むしろさらに“暴走”させるように加速し続けていく。
その景色はまさに、“触れる全て”を巻き込み、拡張し続け破壊し邁進する、“非日常の暴力”。
世界の自然法則を“否定”するかのように“不可思議”に“暴れ狂う”、“超常自然災害”の“縮図”であり、それすなわち、『レベル・2』が世界に影響を与える程の“魔法”で在る事の存在証明の顕現。
「ッッッ!!?なん、なんだよッ、こんなの、“ありえなッッッッー!!????」
ドッッッッッッッッッッッッッヴァァァァァァァァァァァァァァンンンンンンンンンンンンンッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
双葉カエデの叫び、声、言葉も瞬時にして掻き消す程に、その“暴風”の“全て”が空間を“穿ち駆け抜ける”。
相対する者の、抵抗する“意志”も“意識”、全ての思考と視覚や方向感覚、あらゆる“存在感覚”を“吹き飛ばす”緋色の一撃。
“暴風”が、双葉カエデの意識と同時に、赤に染まるその小さな肢体を後方の壁面へと“吹き飛ばし”、打ち付ける。
打ち付けた壁面ごと、その四肢を砕き割る音。戦う“意識”も抗う“意志”も、物理や精神の垣根さえも“破壊する”、圧倒的“超非日常”の一撃が、双葉カエデの“全て”を“吹き飛ばし尽くす”。
閑話ではあるが。壁面への衝突の瞬間、“風の層”が双葉カエデを包み込み、その“衝撃”を緩和しつつ壁に“着弾”させていたのだが、それを差し引いても“超常現象”の“刹那”の中なのだ、楓のそうした“配慮”を視認し理解できる者など、この世界中を見渡しても『ゼロ』に近いだろう。まさに、そこに在るのは“超常の非日常”なのだから。
ビュッッッウウウウウウウウウ!!!ヴゥゥゥゥゥワァァァァァァァァlッッッッヴゥオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!
“風雷の結末”、その衝撃の“余韻”でさえ、自然現象の“台風”など軽く凌駕する勢いの“暴風”を無尽に撒き散らし、周囲一帯へと四散する“風の波”は、距離の離れた當真たちの元へと否が応にも“届いてくる”。
巻き上がる砂塵、飛び交う割れ果てた大地の破片、そして猛威を振るい続ける“風の波の壁”。
その場にじっと佇む事さえ“困難必死”な“不可思議”の現象を目の当たりにして、當真は必死に、背後の二人へと意識を向けながら、その“右手”をまっすぐと掲げ、払い続ける。
(おおおおおおお!!!耐えろよおおおおおッッッッ!!!ここを、緋色に、“任されてんだろ”!!!!!!!!!!)
眼前の“超常”の“邂逅”に入り込む余地が『ゼロ』である事を受け止め、自分のすべきことを“選択”した當真にとって、この場所を、その背に受けた二人を“守り通す”ことが、當真にとっての“闘い”であり“覚悟”の証明である。
どれだけの“暴風”にその身を打たれようとも、大地を踏みしめるその両脚が例え折れようとも、その手でこの“超常”の“魔法”の残滓を“嫌い”続け、二人を“守り通せる”のなら、彼の心が“折れる”理由などない。
時間にすれば十数秒足らずの“余波”。だが、その場に巻き込まれた者にとっては、“地獄のような十数秒”の“超常異常現象の最中”。
“嫌い”、抗い耐え続けた、その十数秒先に辿り着いた、未来。
地獄の刻を経て、巻き上げられた砂塵と空間の残滓と共に、吹き荒れた“暴風”は“夜風”となって空へと消え去り、ようやく當真は“呼吸”を意識して行える思考的猶予を取り戻した。
「はぁ、はぁ・・・終わった、のか・・・?」
言葉と感情が零れる、そして全身の力が抜け落ちたように、そのままその場に跪く當真。
自身の呼吸音が五月蠅く聞こえる程に、全身を覆い尽くす疲労感。當真自身が直接対峙したわけではないが、“超常の衝突”がもたらした“余韻”でさえ、ここまで体力も精神力も削られるのだ、改めてその『レベル』の強大さを、當真は実感していた。
と、當真の下ろした視線の先に、降り立つ“小さな風音”。そして、當真の視線の先に差し出される、“手の平”。
「ちゃんと、“無事”?」
その声に反応するように、手を差し出してきたその声の主に向かって、當真はゆっくりと視線を向ける。
穏やかな夜風に赤色の髪を靡かせながら、この“非日常たる現状”に対しての“申し訳なさ”を伺わせるような、どこか複雑な表情を見せながら、當真に手を差し伸べる楓。
「いやいや?無事じゃねえですよ?ったく、やりすぎじゃないですかね?見て?俺のこのボロボロの満身創痍っぷり?!」
吹き荒れる“暴風”の余波と、巻き上げられた砂塵の渦を全身に浴び続け、服装はもちろん満身創痍の悲惨な状況を、“憎まれ口”として“明るい“呆れた表情と共に楓にぶつける當真。
當真としてはもちろん、それは“本心”などではない、彼なりの“フォロー”のつもりではある。だが、
「それは、その・・・・“ごめん”、」
(ん?おやおや?“素直”?それは、そのー、“思ってた”のと違うんですけども?!)
楓がいつになく“しおらしい”表情で、その言葉を小さく呟いた事で、當真は逆に焦ってしまう。
楓自身、流石に“自覚”があったのであろう、自身の“魔法”によって生じた“非日常の現状”に対して、“巻き込んでしまった”という彼女なりの“責任感”からくる“申し訳なさ”を、ありありと目の前にした事で。
ゆえに。當真は“すぐに”、差し出されたその手を掴み、まるで何事もなかったかのように立ち上がり、楓に向かって言葉を返す。
「でもまあ、お前の“暴走”っぷりなんて俺にとっては“いつも通り”だしな?何ら“日常”と変わんねえよ?」
「!!」
「それにさ、“だからこそ”、こうやって二人の事も“救ける”事も出来たんだ。だから、まあいいんじゃね?“嵐ガール”?」
トントン、と。屈託のない“いつもどおり”の笑顔で、楓の肩を軽く叩く當真。
そして、その表情に、逸る鼓動と頬を少し“赤らめた事”を決して悟られないように、楓が視線を“逸らして”俯いた事なども、もちろん気にも留めずに、両腕を上げ背伸びをし始めていた。
そんな“いつも通り”なままの當真を改めて見つめ、赤雷が靡く暴風が通り過ぎた“晴れやかさ”の如く、楓の心も“軽く”なっていく。そして、當真に聞こえない程度に小さく、そして“微笑み”ながら呟く。
「誰が“嵐ガール”よ?・・・ったく」
日付が変わる直前の頃合い。連日続いた“とある喧騒”も、ようやくその終劇を迎えようとしていた。
グラッ
と、その直後。気が抜けたように、バランスを少し崩しながらよろめく楓。思わず當真は手を差し出し、
「おい!?お前、大丈夫か!?ほんとに“無茶”してんじゃね!?」
差し出した當真の手を遠慮がちに制止しながら、深呼吸ひとつ、楓が応える。
「ふぅ・・・大丈夫よ。“無茶”というか、まぁ、『緋色の暴風』使うと、体力も根こそぎ持ってかれちゃうのよね?“しばらく”はまともに“魔法”も使えなくなっちゃうしー」
「へェ。それは“イイこと”聞ーちゃっっっタ!!!」
その“声”に。當真が視線を“向ける”、と同時に、響きわたる“雷鳴”と“砲撃音”。
ゴッロロロロロッッッッバッッッッッッッリリリリッッッダッガンンンンンンンン!!!!!!!!!!
當真の視界の焦点が、その“声”の方向に向いた瞬間、視界を埋め尽くすのは“赤黒の閃光”。
それは明確な“破壊”の意志を持った“赤雷の砲撃”、そして“標的”が“當真に向けられた”一撃。
(あっ、ぶッー!!!??)
状況を“理解”するよりも早く、當真の全身を駆け巡る“イヤ”な感覚に反応した防衛本能が、咄嗟に“右手”を掲げるように全身に号令を促すも、到底“間に合わなー
ドッ、ン
それは、“小さな衝撃”。當真が“右手”を掲げるより早く、楓が両手を突き出し、當真をくれはやパレットの側まで突き飛ばし、そして當真と入れ替わるように“その場”に楓が降り立つ。つまり
「おいッ、緋色ッ!!!!?」
突き飛ばされる形で後方に倒れ込みながら、手を伸ばす當真。その視界に、楓の姿がスローモーションで映っていくも、瞬間、横切るように“赤黒い雷閃”が楓に炸裂し、薙ぎ払う様にその肢体を“吹き飛ばしていく”。
ドッッッッッ!!“ヴゥワッッ”!!バヂリリリリリリリリリリリリリリッッッ!!!!!!!!!!
響く衝撃音、その垣間に僅かな“緩和音”、そして突き抜けた先の、爆ぜる“雷撃音”。
當真は“音”を後追いする様に、“赤い雷閃”が楓を吹き飛ばした方向へと視線を向ける。十数メートル先、焦げ割れた大地の中に、當真になり代わり雷撃を全身で受け止め、だが“なんとか”その場によろめき立つ楓の姿を捉える。
一瞬の安堵、だが、その思考を一瞬で凍らせるように、現実が“声”と同時に鳴り響く。
「咄嗟に“風”を集中させて衝撃を“緩和”させたのは流石だけどさァ、流石に“満身創痍”だよねエ?“ヒーロー”ちゃん?」
“声の主”は、視界に捉える間でもなく、双葉カエデの“声”だ。だが、しかし、當真が視線を向けた先、
“世界は変容していた”。
バギギギギリリリ、ヂヂヂヂヂギギギリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!!!
赤に染められた逆立つ黒髪と、虚ろな表情だが原型を留めている顔を“除いて”、そこに顕現しているのは、人の形をした“ナニカ”。
渦巻く“赤黒い雷閃”をグルグルグルグルとその身に周遊させながら、全身を“紅蓮の電光”、いわば“赤雷の鎧”で包み込み、SF映画の中の慄く幽霊やテレビゲームの中の“ゴースト”のような、“この世ならざる怪物”と言わんばかりの“異相”へと『変容した』双葉カエデの姿が、そこに在った。
「なんで・・・“動ける”、の?『緋色の暴風』は、“間違いなく”直撃してた、はずなのに・・・?」
“赤黒の雷閃”の直撃の瞬間に“風”を寄せ集め、辛うじてその衝撃を“緩和”するも、全身に伝播する衝撃と痛みや痺れに耐えつつ、荒ぶる呼吸と共に単純な“疑念”を言葉にして零す楓。
ガリッ、バリバリバリッ、ガリガリガリ、バリリリリ・・・・・カランッ
大量の“咀嚼音”。“BOOST”、持ちうるその“全て”を“呑み込み”、“白のケース”を投げ捨てる、双葉カエデ。
「“直撃”、してたヨ?意識も“ブッ飛んだ”し、四肢ゼンブの骨が“折れてる”だろうシ?・・・でもさア、もう“関係ない”ヨ、この“特別”で“動かせる”し?」
言葉の真意を探るように、視線を動かす楓。両手両脚を見せつける様に動かす双葉カエデ、そして、“気がつく”。その両手両脚の部分を覆い尽くす“赤黒の鎧”、その周辺の空気が“歪み”、まるで“無理矢理”動かしているような“挙動”のようで・・・・・
「“磁場”を纏わせてエ、電気で自在に引きつければさァ、“物理的に不可能な動き”でも“再現”出来るシ?アハハ!!あとさア、感覚つーか痛覚も、もう何も“感じない”から問題ないんだよねエ?(ハハン)」
不敵な笑みを浮かべる双葉カエデ。折れた四肢も、磁力を利用して無理矢理“操り”、痛覚さえも“トんでいる”、まさに“不可思議の操り人形”と成った、“赤雷の怪物”。
そして何よりも、その挙動、言動、様子に。これまでとは違う、明確な”違和感”が・・・
バギッッッ!!!ドッッッンンン!!!!!!!!!!!
轟音、大地の割れる音と同時に、當真の視界から“消え”、瞬く間に正面を横切る“赤黒の雷”の“残像”。
そして、瞬時に楓の前に降りたつ双葉カエデ。その手を真っ直ぐと楓に差し向けると、全身を覆う“赤黒の雷”がその手に収束され、その手に生じる“赤雷の球体”。
「この距離、というか、もうアンタの“魔法”じゃア、防ぎきれない一撃だよね?これ?」
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾクッッッッッッッ!!!!!!!!!!!
當真の全身を駆け巡る“悪寒”。その“球体”から迸る、圧倒的な“嫌悪感”、いや、それは間違いなく“殺意”。
「緋色ッッッッッッ!!!!!!!!!!」
駆け出そうとする、その“刹那”、双葉カエデが“もう一方”の手を、當真“たち”に向かって差し向ける。
「動くなよ?動いたら、“そいつら”ごと“消す”ヨ?トーマ?」
「!?」
言葉ひとつと一挙手。それは、一瞬の“牽制”。
だが、その牽制によって、當真の“足”が“一瞬”止まったのも、事実。
今の双葉カエデにとっては、その“一瞬”は、十分すぎる“瞬間”であった、
視線を戻し、掲げたその手に“チカラ”を込めて、双葉カエデは“約束された結末”に笑い叫び、解き放つ。
「アハハ!!!アンタを越えるこの“特別”でエ!!!!終わりだよオオオオオッッッ!!!!!!」
“バヂリ”、“ドッ”・・・バギリリリリリリッッッッッ!!!!!ザッッッッ!!!!!バリイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッッッンンンンンン!!!!!!!!!!!!!
夜闇を染め上げる“赤黒の雷咆”、爆ぜる“衝撃音”と絶叫するように空気を鳴り割る“雷撃音”。
巻き上がる粉塵に視界が隠されていく中で、その“結末”の行末を、當真はただただ“見送る”事しか出来なかった、
その“瞬間”の間際、自身の“後方”から光速で駆け出す、“紫電”をその身に纏い、楓の元へと向かう、その“小さな背中”を。
「・・・・・なんデ、」
砂塵が“風”に舞い消え、その“結末”が鮮明に現実の景色へと現れていく。
双葉カエデの解き放った“赤黒の決殺”の一撃が無慈悲なままに炸裂したのは、躱しようもない、“魔法で”防ぎようもない、無防備なままの楓ー
「何で、ナンで、なんでエッッ!!!??????なんでアンタがああッ!!“こんなヤツ”の事を“庇う”んだよ!???“くれは”!!!!???????」
“ではない”。
両手を広げ、楓の前に仁王立ち、その小さな体全身で、“赤黒の雷撃”を受けきったのは、紫電を全身に纏った、『双葉くれは』だった。
焼け焦げつくような匂い、裂傷による血飛沫が舞い、目の前に充満していく“不穏不吉”の空気。そのボロボロな小さな“後ろ姿”に、瞬間、楓は心が張り裂けるほどに感情の全部を声に変えて、叫ぶ。
「くれはっ!!!!なんでッ!!!!!?」
両腕を広げたまま、その声に反応するように、ゆっくりと顔だけを半分振り返り見せながら、“紫電”の少女は、精一杯の“笑顔”で、謳う。
「遅くなってごめんね、かえでっち。ヒーロー、参上・・・なんて、ね?」
ドサッ
言葉の終わりと同時に、くれはの表情とその身に纏った“紫電”が瞬く間に“消える”。そして、その場に“力なく”倒れ込む、くれは。
「あ、ああ、あああ、アァァァァッッッ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああアあアあアあアあアあアあッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ」
その光景を目の当たりにして。“壊れた”ように空へと向かって咆哮する、双葉カエデ。
その目に光はない、意識も、形容する感情も、何もかもが“爆ぜる”ような感情の昂り、
そして、その叫びに共鳴するように、空気が“割れる”、次の瞬間、
ゴッッッッッッロッッッッッッ!!!!!バッッッッッッヂヂヂヂヂッッッッドッッッッッッッガッッッッッッッッッギャッッッッッッンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!
空を包み隠すように立ち込める“黒雷雲”から、双葉カエデに向かって降り落ちる“巨大な赤雷の柱”。
大地と空気を震えさせる圧倒的衝撃圧が、この空間を伝播し、當真たちの視界は“赤雷光”によって一瞬で支配されていく。
暴風と赤雷が吹き乱れ鳴り響く“邂逅”。紫電によって告げられたその“終劇”と共に、『巡る二つの回想』の先、世界は再び“非日常”の続きを謳い始めるのであった。




