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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 1:The Golden Fateful Encounter
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#4 金色の少女④

「全ての、魔法を“知る”、魔法?」


客観的な視点で見ても美少女に値するであろうパレットに、自身の右手を握られている事での恥ずかしさや高揚感、“それ以上”に気になったのは、パレットが口にしたその言葉の真意だった。


「うん。わたしは“魔力”に触れる事でね、その“魔法”がどんな“魔法”であっても“識る”ことが出来るんだ。」


「・・・“魔力”?」


“魔力”。またしても聞きなれない言葉だ。


いや、もちろん。どういうものなのか、イメージ自体は當真の中にもぼんやりとある。むしろ“魔法”が”生まれる前の世界”であれば、その言葉はごくありきたりな、空想の中の、付属品のようにそこに存在していたに違いない。


ただし、今、この世界には“当たり前”のように魔法が“在る”のだ。それゆえに、その言葉は、どうしても違和感として存在してしまう。


「“魔力”って、そのー、“昔”のゲームとかにあった、“魔法を使うための力”、みたいな?ヤツのこと?今の時代、それこそ“作り話”みたいなもんじゃ・・・?」


「んー。まあ、確かに、そういう意見がほとんどだよね。実際、わたしも“わたし以外”に、この話を理解してくれるひと、英国にも“ほとんど”いなかったし。」


パレット自身も、當真のリアクションに対し、少し諦めに似たような反応を見せる。おそらく、こうしたやり取りを、これまで幾度となく行ってきたのだろう。


「でも。わたしの“魔法”は、さっき話した通り、“全ての“魔法”を“識る”“魔法””なの。つまりね。わたし自身のこの“魔法”について、わたしはもちろん理解してるし、それを言葉にして人に説明すると、“そう”としか伝えられないんだよね。」


(・・・つまり。パレット自身は、自分の“魔法”を使って、自分の“魔法”が『“魔力”を読み解くことで全ての“魔法”を“知る”ことが出来る“魔法”』、だって事を“知っている”、ということ?・・・・・あぁ、うん、なんだろ、混乱しすぎて、ゲシュタルト崩壊しそう・・・)


ただ。そうした混乱の思考の最中。


自身の手を取り、まっすぐと見つめ言葉にするパレットと目が合った時、當真自身の中で芽生えた結論があった。


「じゃあさ、この手を掴んでるのと、パレットの“魔法”には、どんな関係があるんだ?なんというか、こっちとしては、少し気恥ずかしいような・・・」


照れ隠しからか、会話を続けようと発した當真の言葉を聞き、パレットの表情が少しだけ呆気に取られた、というか、驚きの表情に映り変わった。


「・・・?」


「え。ないと、わたしの話、信じてくれるの?」


まるで捨てられた子犬のように、と、あらゆる媒体で表現されつくしたような、ただ、そうした安易な表現でしか言い表せれない感情を、當真はパレットに見つめられる瞳から導き出した。


「いや?なんで?どういう意味?」


「だって。基本的に、誰も最初は信じてくれないんだよ?“魔力”って言葉の意味もだし、そもそもわたしの“魔法”が、“ほんとかどうか”なんて、証明する方法もないわけだし」


ここまでの話から、察するに。


彼女の生まれた場所では、“魔法”に関する感覚や価値観、歴史そのものが、當真がこれまでの人生で培ってきたものとは、根本的には違っていて。


だからこそ、そうした“進んだ”環境の中でさえ“不確か”と捉えられかねない、そのパレットの“証明”は、そう簡単には受け入れられてこなかったのだろう。


パレットの驚きの表情から、そうした背景が少なくとも感覚的に読み取れた當真は、率直に自身の思いを言葉にする。


「いや、まあ正直さ、“魔力”ってのはよく分かんないし、全ての“魔法”が分かるって言われても、それがどんなものなのかは分かんねえけどさ、」


一呼吸。當真は、“当たり前”のように言葉を紡ぐ。


「それがパレットを疑う理由にはならねえし、そう思える自分の感覚をさ、俺は“迷ったりしねえよ”?」


パレットの頬が、少しだけ赤らむ事にも気づくこともなく、當真はまっすぐとパレットと目を合わせ応える。


當真は自身の右手を掴むパレットの両の手が、少しだけあったかく熱を持った気がした。


「・・・ないと。わたしがかわいい美少女だから、信じてくれるんだね?」


「いや、なんでそうなる?ポジティブの方向性が迷子なのかね、パレットさんよ?」


當真のリアクションに、イタズラな笑顔のままケラケラと楽しそうに笑いだすパレットに対し、當真自身は、少し諦めに近い溜息をひとつ。でも、そこにはもう“淀み”はない。


「それで。話を戻すとして。この手を繋ぐのと、パレットの“魔法”に、一体どんな関係が?」


「うん。さっきも言った通り、“魔力”に触れる事で私はどんな“魔法”なのか、そこに“在る”魔法の全てを識れるんだけどね。その一番簡単な方法が、こうやってその人に直接触れて“魔力”の流れに一番近づくことなの。」


「んんん・・・いや、でもさ、俺『ゼロ』だけど?そもそも“魔法”、“使えない”んですが?」


“魔力”どうこうの話以前に、そもそも“魔法”を使えない當真にとって、その疑問が生じるのは当然のことであった。


そして。パレットももちろん、そうした反応が返ってくることは幾度となく経験しているのであろう。流れるように言葉を返していく。


「んとね。“きっかけ”さえあれば、人は“魔法”が使えるって言ったけど。わたしの“魔法”からすれば、その最大の理由が、『人は誰しも、“魔法”の源である“魔力”を生まれ持ってるから』なんだよ?」


「・・・んん?」


「つまり。わたしは、もし“今”“魔法”を使えない人でも、こうやって“魔力”にさえ触れられれば、その人が『どんな“魔法”を使えるかを“識る”事が出来る』ってこと。」


「!!」


鼓動が、早まる。


パレットの言う“魔力”の実態は正直分からないが、パレットの言葉通りなら、それはつまり、當真自身がこれから使えるであろう“魔法”の事を、この瞬間に知る事が出来るという事なのだから。


そして、高揚する感情を追いかけるように、當真が気にかかりだしたのは、ひとつの疑念。それがどういう“意味”を持つか、という事だ。



なぜなら。『この“世界”において“魔法”における解明すべき“全て”に重要な価値が見出されてる』のだから。



「なあ、パレット、お前って、実はめちゃくちゃすごいんじゃ・・・?!」


「えへへ。すごい?惚れた?」


當真の疑念を茶化すように、いやまるで“躱す”ように、飄々と笑顔で告げるパレット。


「っ!?ほ、ほれ、惚れるとか、そ、そういうのは、おま、何言ってー」


「あはは。ないとって、ほんとにからかいがいがありますなあ。」


感嘆の感情を言語化している最中に、笑顔で茶化してくるパレットに対し、一切の余裕がない初心な男子高校生、當真 夜。そして


「ないと。心の準備は、いい?」


握られた當真の右手を包み込む“熱”が、パレットの声を合図に、より一層広がっていくのを感じた。



「じゃあ。いくよ?・・・【ワールド・ディコーダー】」



金色の少女が謳う。その名が冠する理は、【世界を識る者】。



手に触れる熱量が高まっていき、金色の少女のその声に呼応するように、少年の右手を中心に一瞬の光が空間に拡がっていく。


その光の、一瞬の最中。當真は自身の右手を通して、なにか、“熱”を帯びた“流れ”がパレットの両の手に伝わっていく感覚を感じた。


不可思議と、期待。その入り混じった感情の全部が、自分でも分かるくらいに、心臓の鼓動のリズムを加速させていくことを當真は感じていた。


光の収束。日常の空間に、舞い戻ってきたような感覚。


ただ、目の前の金色の少女がゆっくりと視線を上げ、當真に“答”を告げようとする。心臓の音が、高まっていく。



「ないとの“魔法”はー」



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