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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 1:The Golden Fateful Encounter
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#3 金色の少女③

「でもさ。この国の人はみんな親切だよね。“変わったおじさん”だけじゃなくてさ、いろんな人がわたしに声かけてくれたし。“魔法”も、なんか日常に自然と馴染んでるかんじで、ギスギスしてないというか。英国イギリスとは全然ちがうんだよ。」


「そうなのか?」


お腹がまだ満たされたないのか、金髪少女パレット=セブンデイズは、自身が速攻で完食した朝食ホットケーキの残り粒をフォークで搔き集めながら呟く。


これまでの人生で、外国はおろか自国ですらそこまでの大きな旅行をまだしたことのない當真 夜にとって、パレットの言葉は興味を抱くには十分すぎる理由だった。


「うん。“魔法”がまだ空想の中でしかない頃から、英国って“魔法発祥の国”ってイメージだったみたいでさ。いろんなファンタジーの生まれた場所って。他の国からのイメージはもちろん、自分たちも“そこ”にプライドみたいなのがあってさ。“魔法が生まれた日”に、“魔法それ”が全世界での“日常の景色”になってからもね。そのプライドとか歴史のせいで、“魔法”における研究とかにも国をあげて力を入れててさ。」


パレットは、どこか少しだけの憂いを表情に彩り、言葉をゆっくりと紡ぎ続けた。


「『ALL GIVE PRIORITY TO MAGIC』。“全ては魔法を優先する”。私たちの英国クニでは、幼いころからそれだけは徹底的に教えこまれるの。」


少しの溜息と、流れるような言葉の羅列。まだ自身よりも幼い眼前の少女が並べ立てるそれらの言葉や、伝わってくる感情に、當真はどこか既視感を覚える。きっとそれは、自身が感じていた窮屈さに近い日常の空気感のようなものだった。


「もちろん。その教えのおかげで英国は世界でも有数、というか多分一番の“魔法大国”になってるし、教育・研究、ありとあらゆる機関も優秀で、その恩恵もあるんだけどね。でも、ここでの人の優しさとか、日常の空気感に触れるとさ。やっぱり英国とは違うんだなあって思ったんだ。わたし、とってもこの国が好きなんだよ。」


パレットの言葉に。自分自身が褒められているのではないと分かっていても、どこか誇らしくも嬉しい気持ちになる當真。少女の心を動かした要因の一つに、自身の身内の行動が在ったことも、少なからず起因していたからであろう。


「“魔法”が使えない、俺みたいな『ゼロ』からしたら分かんない話かもだけどさ、いろいろあるんだな、世界には」


「『ゼロ』?」


世界への、何気ない感想を呟いた當真の言葉に、不思議そうに疑問を投げかけるパレット。


「ん?あー、『ゼロ』って世界共通、だよな?まあ、とにかくさ、俺は“魔法”は使えないんだよ?今は、つーか、このままずっと使えないままかもだけどさ。ははは」


「・・・ねえねえ。ないと。この国って“魔法学校(マジック・スクール)”とかないの?」


「“魔法学校(マジック・スクール)”?」


聞きなれない言葉に、首をかしげる當真。


「うん。英国ではね、子どもたちが一番最初に通う教育機関が“魔法学校”になってる場所がほとんどなんだよ?国民の義務教育機関が今ではそれになっててさ。」


当たり前のように言葉を続けるパレット対し、改めて文化の違いはもちろんであるが、自分自身がいかに世間知らず、いや世界知らずの人間であるのかを痛感していく當真。


「“魔法学校”に入学する前から“魔法”を使える子たちはもちろん、ほとんどの子が入学してから卒業するまでには“魔法”を“使える”ようになってるんだよ?」


「え、まじか?」


「うん。多分だけど。人口の9割くらいは“魔法”が使えるんじゃないかな?」


9割。その表現に驚きを隠せない當真。もちろん世界の8割近くの人間がいまや魔法を使える世界なのだから、決してその数値は不思議な事ではないのだが、ただ実際この国では“そこまで多くはない”のが実情なのだ。


當真のクラスメイトの多数然り、この国では多く見積もっても7割弱と言われていたのだから。


それゆえに、パレットの示した数値の大きさに驚くのも無理はないのだ。


「すげえな、でも、そんな学校行くだけで“魔法”って、使えるようになるものなのか?」


「んー。わたしも英国以外の事はそこまで詳しくわかんないけど。でも、“魔法”は“きっかけ”があれば誰しも発現される、っていうのが英国の魔法研究機関の結論だし、それに基づいて魔法学校では“ありとあらゆる状況や環境”を考慮して、カリキュラムが組まれてるからね。だから卒業する頃には、大体の子が使えてるイメージかな。」


「え、すごいな英国?」


「でも。その分ね、“それでも”魔法が使えないひとたちにとっては、あらゆる税金が高くなったり、レベルでの差別や区別だって分かりやすくあるし。どこにいてもさ。“魔法”が“第一”の空間しかない国だからさ、」


視線を落とし、パレットはそっと続きを呟いた。


「とっても“窮屈な世界”だよ。」


“窮屈な世界”。昨日の今日で、自身を取り巻く世界観が大きく動き過ぎていて、思わず羨望の感情が零れる當真に対して、その言葉はとても重く響いた。空気が、少しだけまた張りつめそうな・・・


「・・・あー、えっと、パレットは“魔法”使える、のか?」


「え?・・・使えるけど?」


「べ、別に、そのー、本場?英国産の“魔法”がどんなものか、見てみたいなあとか、べ、別にそんな理由ではないけどね?でも、パレットがどうしても見せたいっていうんじゃ、しょうがないから俺が見てやっても、いいんだぜ?全然その、え、遠慮とかしなくていいからさ?」


思わず話を変えようと試みる當真の、不器用で分かりやすく気遣ったような、でも、明るいその声色に。


一呼吸の間、パレットの表情も、和やかに緩む。


「あはは。本場英国産って、ないと、“魔法”そのものには、国は関係ないと思うんだけど?」


「!!」


(ド正論で返されると恥ずかしいな)


俯く當真に対し、パレットも優しく微笑みながら言葉を続ける。


「ふふふ。じゃあ、しょうがないな。ご飯のお礼に見せてあげよっか?」


パレットは座ったまま、手の力だけでグイッと當真の側に近寄ってきた。


距離を急に詰められた、それだけで緊張してしまうのは大前提として、その後にふいに右手を掴まれてしまい、どうしようもなく動揺を顔に見せてしまう當真。


「なっ?おま、え、なにしてんの?!」


戸惑う當真に対して、あくまで冷静なパレット。


と、當間は自身の右手が、どこか“あったかく”なっていくのを感じた。


恥ずかしさとか、緊張からくる体温の上昇ではない、間違いなくその熱は、自身の右手を掴むパレットの“両手”から流れてくる、“熱”だ。


「なんだ…これ…?」


パレットは言葉を紡ぐ。自身の中の“日常”に依る、当たり前の“特別”を。



「わたしの“魔法”は。『全ての“魔法”を“る”“魔法”』。」



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