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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 1:The Golden Fateful Encounter
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#2 金色の少女②

「パレット、セブンデイズ・・・?え、というか、“ないと”って、なんで・・・?」


目の前の少女が名乗ったこと以上に、そもそも自身の名前、いや“呼び名”が少女の口から発せられたことに驚きと混乱を隠せず立ちすくむ當真。


そんな少年を見かねたように、金髪少女、パレットは自身に向かって、手振りをしながら優しく声をかける。


「まあまあ。落ち着きなって?ひとまず座ったら?そんな風に立ってたら、疲れちゃわない?」


「あ、ああ、うん、そ、そうだな。じゃあお言葉に甘えて・・・」


促されるようにパレットの向かいに腰をつく當真。そして


「いやッ!?俺んち!!?ここ俺んちですけどもッ!??」


當真の正論ノリツッコミに、ケラケラと笑いだすパレット。張りつめかけた緊張感が解けていく。


「あははは。ないとはツッコミ気質なんだねえ。」


「いやいやいや。誰だってこの状況なら叫ぶだろ!?というか、君、日本語話せるん・・・」


「また“キミ”って言った。ちがうちがう、ないと。私の名前はパレット、なんだよ?ちゃんと名前で呼んで欲しいの。分かる?」


首を傾げたまま、やや上目遣いでそんな風に言われてしまうと、どうしようもなく照れくさくなってしまうのは致し方ない・・・と、自分の心の中で感情の理由を言語化して、當真は言葉を続ける。


「じゃあ、パレットは、なんで日本語そんな話せるんだ?この国出身、って事ではないよな?」


「んー。イマドキさ、母国語以外の外国語なんて話せて当たり前じゃない?」


「いや、別に当たり前じゃねえですけど?そんなに文化は簡単にグローバル化しませんが?こちとらバリバリの日本語オンリーでやらしてもらってますが?」


「ふーん。まあ、どっちでもよくない?あ、ちなみにわたしは生まれは英国イギリスなんだよ?」


「わあ、すげえ流暢に淡白なアンサーするのね、パレットさん?・・・まあ、じゃあそれはいいや。そもそもさ、パレットはなんでここに?というか、“ないと”って、なんでその呼び方も知ってるん・・・」


「ちょっとちょっと、ないと。女の子にそんなに一気にたくさん質問するもんじゃないよ?嫌われちゃうよ?落ち着いて深呼吸でもしたら?」


「この状況で冷静でいられるほど出来た人間じゃねえよ?」


「・・・お茶でも、飲む?」


「いやだからここ俺んちですけども!?」


ひとり声を荒げる當真を、ドウドウと手振りで落ち着かせ、台所に向かいコップひとつ、そして冷蔵庫からお茶を取り出してくるパレット。


なんだかんだで、差し出されたお茶を一口流し込むと、落ち着いて呼吸がしやすくなるのを當真は実感していた。



「ふう。オッケー。じゃあ、まず最初に。パレットは、なんでここに来たんだ?」


「んー。何でかって聞かれるとなあ・・・なんだろ、『よくわかんない』。」


「・・・は?」


一呼吸の後、満面の笑みで想定外の返答を口にするパレットに対し、思わず當真の開いた口は塞がらない。さらに


「『わかんない』って言うかね。記憶がね、ないの。」


「・・・・・・は??」


「うん。どこに生まれたとか、自分の名前とか・・・んー、“大体の事”は覚えてるんだけどね?」


一瞬。視線だけを當真に向けて、言葉を続けるパレットだが、当の當真はパレットの口から紡がれる非日常の言葉に混乱を隠せない。


「でも、ここ何日かの記憶がないんだよ。気がついたらさ、この街にいたの。」


(だめだ。こんな見るからに外国の少女で?日本語話せて?記憶喪失?いや属性盛沢山過ぎでは?え?なにこれ?そもそもどういう経緯で、ここに・・・)


パレットの言葉を自身の中に咀嚼するように、ブツブツと独り言を呟き思考も気持ちも整理しようとする當真を、不思議そうに眺めるパレット。


「それでね。お腹空いて、あてもなくこの街をブラブラ歩いてたんだ。そしたら、“変わったおじさん”がね、この場所を教えてくれてね。『そこにいる“ナイト”に助けを求めればいい』『そいつ単純だから、君みたいな可愛い子が分かりやすく英語で“助け”を求めたら、とりあえず状況分かんなくても助けてくれるよ?これで“オールオーケー”だぜ?』って」


(あんの!!クソ!!!親父がああああああ!!!!!!!!)


身振り手振り口ぶりでだけで、いとも容易く眼前の金髪の少女をこの場所に差し向けた首謀者を理解する當真。当の本人はフランクに家出宣言をしながらも、こうした状況を息子に託しているのだ、行き場のない怒りが當真にこみ上げるのも無理はない。ただし


(でもまぁ、“見過ごさない”のは、親父らしいけどな)


生まれてから、記憶がある中で、幾度となく“こうした経験”を見てきたのだ。當真が、拳を握りしめる理由にはならない。それに


「それでね。言われたとおりにしたら、ほんとに“キミ”が助けてくれたってワケ?」


屈託のない笑顔でそう答えるパレット。そんな表情を見せられて、自分のしてきた行いを否定する理由など、微塵もないのだ。


「・・・“キミ”じゃない」


「ん?」


照れくさそうに、ただ、まっすぐと當真はパレットに向かい合い目を合わせる。


「あと“ナイト”でもないよ。俺の名前は“當真 夜(とうま よる)”。ほら、ちゃんと名前で呼んでくれよ、な?」


「・・・“よる”、」


少女の名乗りを意識したアンサーで応える當真の名乗りに、言葉を繰り返すパレット。そして、満面の笑みで言葉を続けた。


「だから“ナイト”ってことか。うん。じゃあ・・・よろしくね?“ないと”!」


「・・・いや、そこは結局そのままなのかよ?」


悪戯そうな、でも感情そのままに笑いながら手を差し出してくるパレットの手を、その呼び名にツッコミを入れつつも照れくさそうに手を取り返す當真。


ふたりの間の緊張感にも似た空気の糸が、どことなく柔らかく、温かくほどけていった時間であった。



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