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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 1:The Golden Fateful Encounter
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#5 金色の少女⑤

「・・・“わかんない”。」


ゼロ。その瞬間、まるでこのあたりの空間全部の音や、空気感が無くなっていくような感覚。


高まる期待と早まる鼓動が、その熱量を徐々に沈めていく。


「・・・えーっと・・・なんて?」


あえて、問おう。もしかしたら、そのアンサーは、當真の聞き間違いだったのかもしれ


「だーかーらー!!わっかんないの!!ないとの“魔法”、さっぱり“わかんない”の!!!こんなの初めてなんだよ!?ねえ!!!なんで!!?」


「いや、その言葉そっくりそのままお返しするんですがッ!?」


頬を膨らませ、挙句の果てには當真にその矛先を向け、泣きじゃくる子供のように喚き散らかすパレット。


「今までこんなこと一度もなかったんだよ?“魔力”に触れれば、こう、頭の中にバーッて、文字が流れ込むみたいに【聞こえる】のに。すぐに!わたし!その魔法を“識れる”のに!!なのに!!」


パレットは再び、怒りの勢いそのままに當真の右手を掴む。


「!?」


「もういっかい!もういっかい!!【ワールド・ディコーダー】!!!!!」


叫び声、いやどちらかと言えば怒号のような咆哮を謳うパレット。


少女の両手から當真の右手を中心に、光が瞬く。そして。


「・・・あのー、パレットさん・・・」



「ヴウウウウウウウウウ!!!なんで!!!?“モヤっと”してて!!ぜんぜっんわかんないぃぃぃぃぃ!!!!?」



まるで漫画やアニメの世界のリアクションのように、その華奢な両拳を床にドシドシと叩きつけながら悔しがるパレットのその姿が、どうにも可笑しくて、當真は思わず笑いを堪えられなかった。


「あっははは。よくわかんないけど、おもしれえな。なんかパレット、駄々こねてる子どもみたいな・・・」


ギロリッ。視線に、そんな効果音が見えるような迫力で、睨みつけてくるパレットに対し、言葉をフェードアウトする當真。


「こんなの。初めてなんだよ?なんでだろ?ないとって、もしかして・・・宇宙人?」


「原因を俺に転嫁するでないよ?いたって普通の男子高校生ですからね?」


冷静に切り返す當真。だが、その本心は、ほんの少しだけ残念な気持ちもあった。


昨日今日と、自身を取り巻く状況に置いて、あまりにも“特別”とか“非日常”と言われるようなことが続く中で、パレットの言葉に、言葉にしなくとも自分自身も“期待”している展開が待ち受けているものだと思っていたからだ。



結果として。世界はそんなに簡単に変わらないという、ありふれた現実の景色しか見えてないのだ。



見えないように、透明の溜息をひとつ。當真は思考を切り替える。いや、元に戻す。


「まあ、パレットの“魔法”の事は、ひとまず置いといて。パレット、この後どうすー」


「ー!!わかった!!わかったんだよ!!ないと!!!」


「ん?・・・えーっと。なんて?」


ふいに立ち上がり、両手を腰に当て仁王立ちするパレット。


その表情、自信満々で得意げなニヒル顔に、どうしても當真の心情は不安ひとつしか生まれないが。


「ふっふっふー!!ないと!!わたし、わかっちゃったんだよ?わたしの“魔法”は“全ての“魔法”を“識る”“魔法”、だからね?」


「あー、うん。そうみたいですね・・・それで?」


「つまり、だよ?ないとの“魔法”は、“わかんない”、ってことが“識れた”ってことでしょ?」


「・・・?」


パレットの言葉の真意がまるで読み取れず、疑問を表情に見せて視線を送る當真。に対し、とても自信ありげなパレット。


「つまり!!ないとの“魔法”は!!『誰にも“識られることがない“』“魔法”なんだよ!!」


ドヤ顔で言い放つパレット。どうやら導き出したその答えに、とても満足している様子だ。


一方で、理解という感情はとっくに通り越したので、當真にとってはもはや、ただただ可愛いだけの金髪の少女が自信満々に仁王立ちしている姿を傍観するだけでしかない状況でもあったが。



ひとまず。空気を戻すために。當真は冷静に言葉を返す。


「あのう、パレットさん?つかぬことをお聞きするのですが・・・」


「どうしたんだい?ないとくん?」


合わせるように演劇っぽさを入れてくる目の前の外国の少女だが、もはやもうそこはスルーする當真。


「その“魔法”、いつ、どこで、果たしてどうやって使うんですかね・・・?」


「フッフッフッ。ないとくん、よく聞きたまえ、なんだよ?」


「はい」


パレットは右腕を突き出すと、チッチッチと右手人差し指を突き立て細かく揺らしながら、當真の質疑に応えるのであった。


「ないとの“魔法”は誰にも“識られない”んだから。そんなの“わかんない”に決まってるじゃないか?」


堂々巡りとは、まさにこの状況の事を言うのであろう。数秒前の事実だけが広がる世界に舞い戻った。


それゆえに。當真は、告げる。淡々と。



「そんな魔法ならいらない」




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