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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 1:The Golden Fateful Encounter
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#5.5 Introduction

「で。これから、どうするんだ?“なんでも知ってる”パレットさん?」


「きーッ!?イヤミ?!イヤミなの!?ないと!?わたしの“魔法”、信じてないでしょ?!ヴウウウッッッッッ!!!」


當真の言葉に獣のような呻き声を出しながら臨戦態勢をとるパレット。


黙ってさえいれば可憐な少女であるなんて野暮なことは思わないようにと、この短時間で理解した當真は、そんなパレットを宥めるように声を落ち着かせて言葉を続ける。


「イヤミではあるが、まあ別にそれで信じてないわけじゃねえよ?」


「それはやっぱり、わたしが可愛い美少女だから?」


「自己肯定感が高いのは結構ですがね、それは特に関係ねえよ?ただまあ、現実問題、この先どうするんだ?パレット、行く当てとかあんのか?」


淡々と実情を告げる當真に対し、パレットの感情もようやく落ち着きを取り戻して来た。


「んーん。行く当てどころか、最初に話した通り“記憶”がないんだもん。」


「あー、そっか、そうだったな」


“魔法”の話に意識が傾いていたため、すっかり忘れていたが、そもそもの話、目の前の属性盛沢山の少女には、“その問題”が残っていたという現実に、當真もようやく思考が追いついた。


「どうすりゃいいいんだろ・・・記憶喪失なんて、テレビとか漫画の世界でしか見たことねえしな・・・とりあえず正蔵さんか、警察に・・・」


「ないと!!ひどい!?こんな可愛い美少女をポリスに突き出すと言うの!?シクシク!!」


大袈裟でヘタクソな泣き真似を演じ、声を荒げるパレット。


「なんだその大根芝居は?というかさっきから気になってるんだが、“可愛い”と“美少女”は相容れねえからな?属性盛ればいいってもんじゃねえからな?」


「ゾクセイ?ハテ??」


「なんで急にカタコトになるんだよ?さっきまで流暢に話してただろうが?」


當真の対応にケラケラと笑うパレット。その姿があまりにも自然な姿で、どうしても目の前の少女が“記憶喪失”なんて重責を持っているとは、思えなくなってしまっていて、


「はぁ。でも、そろそろ行こうかな。たくさん笑わせてもらったし、お腹もいっぱいになったし。」


ふいに。訪れた、その別れのきっかけの言葉に、當真は胸の真ん中あたりが急に重たく感じてしまった。


「・・・いや、行くって、どこに?」


「んー。まあ、なんとかなるでしょ。それに」


ふいに。パレットが、その視線を窓の外に向けた“気がした”。


些細な機微と捉える間もなく、言葉を続けたため、特に當真が気に留める理由にはならなかったのだが。


「・・・ほら?こんな屋根の下に、可愛い美少女と二人っきりだと、ないと、間違いをー」


「いや、起こさねえけどっ!?」


ケラケラと笑いながら、そのまま玄関口へと向かうパレットの後を追う當真。


靴を履き、ふいに振り返るパレット。その表情は、柔らかくもどこか儚いような表情で。



「でも。キミの優しさに、ほんとに救われました。ありがとう。」



小柄な体躯が、小さく折り畳まれるように深々と頭を下げるパレット。


「・・・キミじゃねえよ。ちゃんと名前で呼べよな、」


頭をゆっくりと掲げるパレット。そして


「・・・“ないと”、でいいからさ?もし困った事があったら、いつでも訪ねて来いよ、な?」


照れくさそうに、クシャクシャと自身の頭を掻きながら呟く當真に、パレットは満面の笑みで応え、扉に手をかけた。


「ありがとう。ないと!じゃあね!」


ガチャリ。


閉まる扉の音、遠ざかる小さな足音。


空間が、一気に静寂に包まれ、熱も一緒に旅立っていくような感覚。


當真は、いつも通りの土曜の朝の静けさに戻ったことに、まだ少しの違和感を感じつつ、扉に背を向け、一呼吸。まるで、一夜の夢のような



バアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンンンンンン!!!!!!!



「ヒャアッッッッ!!!!!????」


それは、豪快に開け放たれた玄関の扉の音、そして突然の轟音に思わず可憐なレディのようなリアクションを声に叫んでしまう當真。


「ないと・・・・え?“ひゃあ”?なに?女の子みたいな声出して?(笑)」


「おま、そらビビるだろうが!!?急にドア開けんなよ!?インターホン鳴らすとか、くっ、恥ずッ・・・なんだよ、どうした?」


扉を急に開けられたことへの驚き、リアクションをイジられたこと、いろんな羞恥の感情が混ざり合って慌て叫ぶ當真を、パレットはニコニコしながら眺め、そして言葉を続けた。


「あのね。言い忘れてたんだけど。わたしが“ここ”にいたことは、誰にも“ないしょ”で。お願いなんだよ?」


「内緒?いや、別に誰に話すとかでもないけどさ、なんで?なんか理由でも・・・」


「『ないと。女の子にそんなに一気にたくさん質問するもんじゃないよ?嫌われちゃうよ?落ち着いて深呼吸でもしたら?』」


「え?なにこれ?デジャブ??」


「あははー。でじゃぶー!!それじゃ、ないと。ばいばい。」


唖然とする當真に笑いながら手を振り、また勢いよく扉を閉めるとパレットは立ち去って行った。



嵐のような、一間。だが、つい直前までの寂しさに似た感情を吹き飛ばすような、早すぎる来訪と再会と、別れに。



當真は自然と笑顔になっていた。金色の少女の持つ、“魔法”のような空気に、心をまるごと暖められたような気分。


扉を背にし、今日という、いつもの日常へ向かって歩みを進めようと



ピンポーン。



「・・・いや、流石に情緒おかしくなりますよ、パレットさん?」


鳴り響くインターホンに、脳内のモノローグを搔き消され、思わず呟く當真。


溜息ひとつ、諦め半分に、でも嬉しさも半分。當真は振り返り、扉に手を伸ばす。


「まぁインターホン鳴らしただけ、学習してるのは偉いけどさ、パレット、今度は一体どうし・・・」


ガチャリ。扉を開け、同時に言葉が自然とフェードアウトしていく當真。



なぜなら。そこにいると思っていたのは金色の少女、パレット=セブンデイズ、



“ではなかった”から。



「突然、失礼。少し聞きたいことがあるんだが?」



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