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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 1:The Golden Fateful Encounter
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#6 来訪者①

そこには。男が、二人。


扉を開けると、春先なのに深々とトレンチコートで身を包み込んだ、“いかにも”な二人の男が立っていた。


手前の一人はガタイもいいが、作り笑いでできた目尻の深さからも、自身の父親よりも年上な気がしたし、対照的にその後ろに佇む一人は、どこか掴みどころもないような、気配すらも薄い印象の優男に見えた。


「えっと・・・あ、仕事の依頼の方とか、ですかね?事務所、下なんですけど・・・や、だめか、親父まだ帰ってきてないじゃん」


突然の来訪者に驚きつつも、きっとそれが自身の父親の仕事の依頼人であると予想しながら受け答えしつつ、だがその当人が“絶賛家出中”だったことを思い出し、セルフツッコミをいれる當真。


「いや?“そうじゃない”んだ。聞きたいことがあるというかー」


手前の男が、コートの内ポケットに手を伸ばし、おもむろに何かを取り出す。それは


「・・・警察?」


「そうそう。警察官だよ、我々は」


言葉に続くように、男の突き出した警察手帳に再び視線を向ける當真。


浮かび上がる感情を言語化するなら、それは些細な“疑念”。そして生まれる、一瞬の、“間”。


それを不思議に思ったのか、男が少し明るめの口調で声をかける。


「どうしたんだい?そんなに珍しいかい?」


「え?あ、あー・・・いや、珍しいというか、昨日もちょっと、警察の方にはお世話になったと言いますか、連日なのでびっくりしただけっす」


「昨日も?それはまたすごい偶然というか、一体何をー」


「ややっ、全然、ちょっとしたことですよ?というか、その、聞きたいことって?」


少し慌てつつも、話を本題へと戻す當真に対し、男も特に追及することもなく話を続けだした。



「いやね、我々は今“とある人物”を探しているんだが。この“女の子”なんだけど」


警察手帳をしまい、それと入れ替わるように、男は一枚の写真を取り出し、當真に見せてきた。


そこには。つい先程まで當真の家にいた金髪少女ことパレット=セブンデイズの姿があった。


決してそれは、カメラ目線ではなく、その場にいるであろう誰かに向けた満面の笑顔で写真に写る少女。


「この少女はね、“とある事件”の被疑者を探す上で重要参考人となっていてね。この周辺での目撃情報があったから、今こうして聞き込みをしているところなんだ」


「“とある事件”?」


その言葉に引っ掛かるのは当然だろう、ただ當真のその一言に対し、正面の男は写真をしまう素振りと同時に、視線を逸らし言葉を濁す。


「・・・まぁ、詳しい事は話せないんだがね」


ただし。別に、そこまでおかしな話でもないのだ。一般市民である當真に対し、警察が話せない事情があるのも不自然ではない。ただし、


「どうだい?何か心当たりはないかい?知っていることは何でも教えてほしんだが?」


男の口調は、確信を持っているような、そんな明るい口調であった。


もちろん。別に隠す必要はない。


記憶喪失の少女なのだ、警察の方から探してくれているのであれば、つい先程までの他愛のない、むしろどうでもいいような當真とのやり取りで良ければ、喜んで情報を提供すればいい。


そう、間違いなく思っていたのだが。


(うーん・・・パレットの言葉・・・それに、この人たち・・・)


蘇るのは、金色の少女の置き土産ならぬ置き“言葉”。


脳裏に思い起こされるのは、少女のまっすぐな笑顔。そして、先程生まれた、ひとつの“疑念”。


當真は目の前の男たちに、もう一度視線を向ける。心は、決まった。當真は迷わず、告げる。



「いやあ、さっぱり分かんないですね、こんな子?」


「・・・分からない?」


まるで“糸目の誰かさん”のように飄々と答える當真。


確信を裏切られたのか、あまりにも予期していた反応と違っていたせいか、當真の言葉に男は分かりやすく動揺の感情を言葉に乗せる。


「え・・・いや、しかしだね、さっきまでこの辺りに・・・」


再び写真を取り出し、見せつけてくる男に対し、當真は間髪入れずに言葉を続ける。


「いやあ、そもそもこんな“外国の女の子”とコミュニケーション取れるほど、俺、自分の英語力に自身なんかないですよ?・・・“英語しか話せない”んですよね、この子?」


「あ、いや。ああ、そうだね」


當真の言葉に対し、あきらかに動揺しつつも、男は諦めたように写真を片しながら応える。


「いや、すまないね。どうやらこちらの“勘違い”だったみたいだ。知らないならいいんだ、すまないね」


「いえいえ。こちらこそ、力及ばずですみません」


當真の“わざとらしい満面の愛想笑い”を見届け、二人の男たちは玄関を後にし、ゆっくりと階段を下りていく足音が遠のいていく。



そして。ようやく、一息をつき、當真はスマホと財布を手に取り、とりあえず玄関の扉を開け、外へと駆け出す。



呟くのは、彼の心によぎった、ひとつの懸念。



「なんで“ニセモノ”に追われてんだよ、アイツ?まだ近くにいればいいんだけど」



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