#15.5 Proof of a “Fake” (Answer)
言葉のあと、一瞬の静寂。
燃え広がっていくオレンジの景色を背景に、次第に少し遠くから広がり戻って来る人々の声、喧騒。メラメラと謳う炎の声、温度。そして五月蠅い程に鳴り響く“灰色のビル”からの、赤い警報音。
だが、その全てを気に留める余裕がない程に、楓と當真の視線は“そこ”に釘付けとなっていたし、少し後方に構えるパレットも、“そこ”から伝わってくる“音”に表情を“曇らせていた”。
炎熱の余波など気にも留めないように、身の丈以上の大きめの黒のパーカーをその身に纏い、被ったフードから覗かせる黒髪のショートヘアー、そして何よりも三人にとっては“見覚えのある”、その場所に立っている事が“嘘”であって欲しいと願った、整った顔立ちの人物。
「・・・“嘘”、でしょ・・・?」
隣から零れる、その感情を示す言葉を受け、當真は視線を楓に向ける。
これまで“見たことのない”ような、蒼白を画に描いたような表情を浮かべる楓の姿を目にし、當真は意を決し、改めて眼前の“探し人”へと視線を戻す。
“迷っている”暇などない、この状況で、動き出せるのは自分自身しかいないという事を、本能で感じ取った當真は、一歩前へと踏み出し、叫ぶ。
「双葉!!お前・・・何、してんだよ!?“理由”があるなら、ちゃんと話してくれ!!」
“迷うことなく”、最初に自身に声をかけてきたのが當真である事に対し、少し驚きの表情を見せつつも、すぐに口角を少しだけ上げ、双葉は応える。
「トーマがここにいるのは、ちょっとビックリしたけど、まあでも、問題“にも”ならないからいいか。“理由”、ねえ?そんなの決まってるじゃん?」
その“右手”を、まっすぐとこちらに向かって、いや、正確には“楓に向けて”まっすぐと伸ばす双葉。
バヂッ、バヂヂ、バヂヂヂヂヂリリリ・・・・
その“右手”に、“不可思議”に、不協和音を響かせながら“雷光”が纏わりついていく。そして
(おい、嘘だろ!?“まさか”・・・)
その光景、そして起こりうるであろう『未来』から感じ取った“イヤ”な感覚に従う様に、視線を楓に向ける當真。
だが、楓は呆然とただただ立ち竦んでいる、いまだ信じ難い目の前の“嘘”のような、その光景を受け入れられずに。
バヂッッッッ!!!!バヂヂヂヂヂ!!!ドッッッッバッッッンンンンン!!!!!!!
その“右手”に収束された“雷光”が、一閃、空気を裂く音と共に、一気に楓に向かって放たれる。
ガッ!!ギィィィィィィィンンンンンンン!!!!!
放たれた“電光”の波動、その衝撃音に粉塵が巻き上がる。吹き上げる“自然”の“風”によって、徐々に視界は鮮明になっていく中で、
「“理由”なら、そこの“ヒーロー”に、この“特別”を示す為だよ?・・・って言うか、昨日も見てて思ったけどさ、君の“魔法”もなかなか“凄い”んだね?トーマ?」
淡々と言葉を続ける双葉の視線の先、粉塵から姿を現したのは、楓に放った自身の一撃を、届き切る直前に楓の前に立ち、その“右手”で払った當真の姿だった。
(痛ッ・・・咄嗟に“嫌えた”から良かったけど・・・つーか、)
“右手”を中心に全身に伝播していく“痛み”よりも、呆然と立ち竦む楓の心情を背後からヒシヒシと感じ取った當真は、視線を強く双葉へと向け直す。
「何考えてんだよ、お前!?友達に向けて・・・冗談なら全然笑えねえぞ!?」
「はは。何言ってんの?」
再び、“右手”を無作為に振るう双葉、その動きに反応するように、宙に“不可思議”に現れた二つの“雷光”が、再び勢いよく當真たちに向かって“突撃”してくる。
ガッ!ギィィィ!!ガッッ!!ギィィィィン!!
明確な“意志”を持った、小さな“雷”の如く、その“攻撃”を。當真は“右手”を振るい、上空へと“いなす”。
「“冗談”なわけないじゃん?」
その言葉に温度はない、それが“嘘”のない“敵意”であることを、當真は本能で理解していた。
だが、それでも、握った“右手”を“まだ”向ける事は出来ない。ゆえに、必死に声を荒げるように叫ぶ、
「なんでだよ!?双葉、お前、昨日は俺のことも助けてくれたじゃねえか!?なのに“魔法省”を襲撃して、その上で狙いは緋色って・・・一体、何考えてんだよ!?」
だが、當真の言葉や想いも、響くことなく、淡々と受け止め、その“答”を淡々と双葉は口にする。
「別に?昨日のは、トーマの事を助けたワケじゃないよ?“今上”が“暴走”してたからさ、一応“計画”に“便乗してる”身としては、大事になりすぎる前に“止めた”だけだし?」
(“計画”に・・・“便乗”・・・?)
双葉の口から出てくるその言葉の意味を、當真はまるで理解出来なかった。だが、その混乱はまだ続く。
「一応、“魔法省”が“アイツら”の最終目的なのは間違いないけど・・・まあ、もう“どうでもいい”んだよ?だって、“こっち”の本来の狙い通り、“緋色 楓”はここに来てくれたわけだし?」
伸ばした“右手”の指先を、まっすぐと楓に向ける双葉。
「きっと“ヒーロー”ちゃんなら、『レベル・2』なんて“特別”への自惚れと、そのバカみたいな正義感でさ、ここまで辿り着くって思ってたしね。だからね、ここで、この“特別”で示すんだよ、緋色 楓よりも“上”だって事をね?」
両手を広げる双葉、戦慄くように、その両腕を中心に小さな肢体を“雷”の波動が包み込んでいく、
そして、背後に燃え盛るオレンジの景色の影響か、その“雷光”は、徐々に、“赤く”染まっていき・・・
ザッッッッ
“迷わず”駆け出す當真。すでに、その“右手”を力強く“握りしめて”。
そして、自身の背後にいる楓、を越えた先のパレットにまで届くように、叫びながら。
「パレット!!嵐ガールを連れてそこから離れてくれッ!!!俺は!!!双葉を!!“止める”!!!!」
「う、うん!!わかったんだよ、ないと!!」
真っ直ぐと“迷わず”にその一歩を踏み出し、駆け出していく當真の背を見送りながら、受け取った言葉に従う様に楓の元へとすぐに寄り添うパレット。
「かえで!いくよ!!ここにいたらー」
パレットに掴まれた手に反応するように、表情はいまだ疑念と蒼白に染められたままの楓が、力なく“呟く”、
「・・・“嘘”、よ・・・“くれは”じゃ・・・ない・・・」
「かえで!!信じたくない気持ちは分かるんだよ!!でも、“あの子”の“音”、少し“変な感じ”もするし!!とにかく今はここから“離れなきゃ”ー」
一方で。遠のくパレットのそんな叫びを自身の背後から受けながらも、駆け出し双葉へと距離を詰めていく當真の胸中も、正直、混乱で渦巻いていた。
(双葉と緋色の間に“何が”あったかなんて知らねえし、双葉が何考えてんのかも、正直全然分かんねえ・・・)
だが、その“右手”を力強く握りしめながら、まっすぐと双葉を見据える當真。
(でも!どんな理由が在っても、この状況を、このまま黙って“見過ごせねえ”!!)
一方で。軽く鼻唄まじりに、自身に向かってくる當真を見据え口角を上げる双葉。その両腕を再び掲げると、空気を割るような音を放ちながら“赤い雷光”が双葉の周辺に瞬き始める。
「別に、トーマには“興味”はないんだけどさ。向かってくるなら・・・ねえ?」
一縷の躊躇もなく、その両腕を當真に向かって振り下ろす双葉。
バヂヂヂヂ!!!リリリリリリッッッッッ!!!!!!!
“赤い”雷撃が弾丸のように、當真に放たれる。だが、當真も今度は“迷いなく”、握ったその“右手”を雷撃に向かって突き出す。
ガッッ!!!ギィィィィィ!!!!
當真の“右手”に触れた瞬間、その腕に沿う様に“雷撃”は流れ、“いなされる”。
触れた拳に伝わる、衝撃と、ひりつくような痛み、熱。どれも一瞬で“嫌った”とは言え、その残滓は歯を喰いしばる程の痛みを當真に与えている。
だが、だからといって、それで當真が足を止める理由にはならない。
(・・・アイツの、あんな表情、“初めて”見た・・・そりゃそうだよな、“だから”)
互いの距離が、『ゼロ』に近づく。當真は右腕を振りかぶり、“迷うことなく”真っ直ぐと突き出す。
「お前が“本気”なのも理解ったから!!今は!!“俺”が止める!!!!」
その拳を、双葉の腹部に向けて一閃する當真。動きを、あわよくば“気を失って”でも、まずは止められれば・・・
「へえ?容赦ない感じ、男女平等の鑑じゃん?だったらー」
バッッッ!!!ヂリッッッッッ!!!!!ドバアアアアアアンンンンンン!!!!!!
双葉が右手を振るう、瞬間、當真の拳にカウンターで合わせる様に放たれる“赤い雷撃”。
互いの距離が『ゼロ』に近い事が、當真にとっては“いなす”余裕を与えない。
“右手”に触れた“雷撃”の衝撃は、その場で一気に“爆ぜる”、當真と双葉の互いを“巻き込むように”。
「ぐっ、は!!!!!?」
『ゼロ』距離の衝撃。伝わってくる単純な痛み以上に、その衝撃波により“数メートル”近く吹き飛ばされた副次効果によって、當真の視界は一瞬、自身の居場所を見失う様に、地面を転げ回らされていた。
だが、状況は“互いに同様”で在ることを、本能で感じ取ってた當真は、“心配”するように咄嗟に顔を上げ、自身と双葉がいたであろう“その場所”に目を向ける。そこには
バヂ、バヂリリリリ、バヂヂヂヂヂヂリリ
双葉の姿は『なかった』。
そして、當真と双葉が邂逅した場所から“十数メートル”離れた場所に、“赤い雷光”を纏いつつ、悠然と立つ双葉の姿を捉える。
その姿、“まるで何もなかった”ように“不可思議”に悠然と立ち、双葉は気怠そうに欠伸を抑えるような仕草さえ見せていた。
「まさか・・・あの“一瞬”で、あの距離を・・・?」
そして。當真のその“疑念”に応える様に、双葉の全身を覆う“赤い雷光”が、その細く華奢な両脚へと収束されていき
バヂッッ!!!ドバッッッッッッッンンンンンン!!!
轟音、一瞬にして巻き上がる粉塵、そして、“消える”双葉の姿・・・
次の瞬間、二十メートル離れていたであろうその距離を、一瞬にして『ゼロ』にするかのように、忽然と當真の目の前に飛び出る様に現れる、“赤い電光”を両脚に靡かせた双葉の姿。
「なっ!!!?」
「でも、“不思議”な“魔法”だよね、実際のところ?あの距離で喰らっても致命傷にはなってなさそうだし・・・“右手”で“しか”使えない感じなのかな?」
突如として目の前に現れた双葉に対し、両腕を上げて物理的に距離を取ろうとする防衛反応を見せる當真に対し、伸ばされた“右手”に触れ、不思議そうに眺め呟く双葉。
「ちっ!!?」
咄嗟に。無作法なままに力強く“右手”を払う當真、だが、その手が双葉に届く事はなく
バヂッッッ!!ドッッッッッ!!!!!!!
瞬間の轟音、そして再び當真の“目の前”から消えると、そして数メートル先、両足に“赤い雷光”を靡かせながら悠然と“着地する”双葉。
「まぁ、この“特別”を使えば、こんな風に爆発的な脚力も実現可能なワケで?・・・ちょっとだけさ、トーマに“も”興味は沸いたけど。“時間”もあんまりなさそうだし・・・“終わらせよ”っかな」
カリッ、カリッ。
言葉の終わり。パーカーのポケットから取り出した小さな白いケースからタブレット菓子を二口、噛み締める双葉。
一瞬。ほんの少しだけ、當真の目には双葉の表情が“物哀しそう”に見えて・・・
だが、その思考に感情が追いつく暇もない程の“非日常”の景色が、両腕を左右に広げた双葉を中心に、瞬く間に訪れる。
ゴッッッッ!!!ロロロロロロッッッッッ!!!バヂヂヂヂヂヂリリリリリリッッッッッッ!!!!!!
“右腕”の周辺には、これまでと比にはならないほどの“赤い電光”が渦巻き収束されていく。それはまるで、“赤い雷群”。
そして
バヂリッッッ・・・・ザザザザ、ガッ!!!!ゴッッッッッッ!!!!!!!!
“左腕”の周辺、空間が徐々に歪み、その周辺の空間の景色が不鮮明に変わっていく。そして、次の瞬間、まるでその“不可思議”な空間に引き寄せられるように、どこからともなく現れた石片や鉄骨などが“引き寄せられていく”、まるで“強力な磁場”が発生したかの如く生じた、まさに“不可思議な磁場の世界の収束”。
引き寄せられた“異物”は、まるでひとつの巨大な“弾丸”のような、巨大な“異塊”となり、双葉の左の掌の上で浮遊している。
「多分だけどさ、その“魔法”、“魔法”に対しては“発揮”されても、こういう“物理”は許容範囲外だよね、きっと?」
「ッ!?」
突き付けられる“事実”。そして、双葉は左腕を當真に向かって、まっすぐと振るう。
ゴッッッッッッ!!!!!!!!ドッッッッッッッッ!!!!!!!!
巨大な“異塊”は、“弾丸”、いや“砲弾”のように、加速し、當真に向かって放たれる、
「ああああああっ!!!???」
直前、感じ取った“イヤ”な感覚に、當真の防衛本能が反応し、無理矢理その身体を“イヤ”な感覚のする“真逆”の方向へと“捻り倒す”。
瞬間。轟音と聞き慣れない歪んだ音をたてながら、當真の元いた場所を通り過ぎる“異塊”の“砲丸”を、まるでスローモーションで再生しているかのように、躱した視界の先で捉えると同時に、その巻き起こす風圧に、その場へと屈服させられるように身を倒される當真。
間一髪での“回避劇”。だが、しかし
「これで、トーマの手は“届かない”よね?それじゃあ、“終わり”にしよう・・・全部さ?」
「ッ?!待っー」
上体を起こした當真の視線の先、双葉が右腕を真っ直ぐと振り下ろす、
その矛先は、當真を“超えた”先の、パレットに手を取られ後退しつつある、いまだ呆然と立ち竦む事しか出来ていない、楓に向けられて
バッ、バヂッ、バヂヂヂヂッッ、バヂヂヂヂヂヂ!!!!ゴッッッ!!!バガッッッンンンンンン!!!!!!!!!!!
収束、凝縮、そして、それは“非日常”の中の“電磁光線”の様に、鋭利に研ぎ澄まされた“赤の雷光”が、一気に楓に向かって放たれる。
「くっ、そ!!届っー」
“赤の雷光”の、楓に至るまでの軌道の先へと、上体を起こし必死に“右手”伸ばす當真、だが、その指先に掠る事もなく、瞬く間にその軌道上は通り過ぎていく“赤の雷光”。
迫りくる“決殺”に至る一撃を目の前にして、楓は、ただただ“何もすることが出来ない”ままで、
パレットは、例えその行為に意味などないにしても、“それでも”、自身の身を挺し、投げ出し、楓の前に両腕を広げて立ち塞がり、
「パレット!!!!!緋色ッ!!!!!!!!!」
その景色の先を見据える當真の叫び声と同時に、“赤の雷光”は轟音と共に辿り着く、
バヂヂヂヂヂヂヂヂリリリリリリッッッッッッッ!!!!!!!ガッッッッバァァァァァンンンン!!!!!!!!!
爆発音に近い衝撃と破裂音、周囲一帯の視界を一瞬にして微睡む程に巻き上がる粉塵、コンマ数秒遅れて通りを駆け抜けていく風圧。
その全てに。當真は緊張感と絶望感が混ざり合った、最大級の不穏感と嫌悪感が全身を一瞬にして駆け巡っていく。
空虚。永遠のように感じる程の、数十秒の幕間。
巻き上がる粉塵が、夜風によって、景色の視界を鮮明に取り戻していく。
當真の絶望の視線の向かう先、そこにはー
「遅くなってごめんね、“かえでっち”。」
バヂヂヂヂッッッッ、バヂヂヂヂヂリッッッッッッッ
“赤い雷光”、その全てを覆いつくすように掴みつくす“紫電”をその身に纏い、楓とパレットの前に仁王立つ、白いパーカーを着た『ひとりの少女』。
そして、十数メートル先に立つ、双葉と“瓜二つ”の、いや、言葉に“偽り”なく表現するならば、“同じ顔”を持つ、小柄な美少女。
それはまさにー
「嘘・・・だろ?同じ“顔”・・・まさか・・・『双子』・・・!?」
當真の口から零れ落ちる、ありのままの素直な感情。
そして。眼前の、窮地を防いでくれた、『探していた少女』の登場に、困惑ながらも表情に色が戻って来る楓と、當真同様に状況がまるで呑みこめず、ただただアワアワし続けるパレット。
そんな混沌の状況の中で、『双葉くれは』は右腕を真っ直ぐと、『もう一人の双葉』に向けて差し向けながら謳う。
「でも、もう“大丈夫“だから。あの子”は・・・『双葉 カエデ』は、“姉”である私が必ず止めるから!!!!!!」
“赤の雷光”と“紫電”が轟き渦巻く初夏の夜、そして、訪れたのは“二人の双葉”の邂逅。
“偽り”の証明、その“答”によって。“魔法”の在る世界における“非日常”の物語は、再びその続きを紡ぎ始めるのであった。




