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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 3 : Anti-Fake Strength
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#9 ボーイ・ミーツ・バイオレット②

「・・・・・・」


(・・・・あれ?いや、でも、“間違いない”、よな?)


無言のまま、不思議そうな表情のまま見つめてくる“小柄な美少女”が、あまりにも無反応なまま、しかしジーっと見つめてくる事に対し、當真は自身の反応リアクションを見誤ったかと不安になり、再度、相対する“小柄な美少女”の全身を見返す。


色味は正反対とはいえ、その装いと雰囲気は昨日の出会いそのままの“小柄な美少女”。


フードを目深に被り、黒髪がその両の瞳を少し遮ってしまっているが、その奥の大きな茶色の瞳は、一切ブレることなくしっかりと當真を見据えていた。


その割に、表情に一切の変化がないまま、謎の空白の時間が刻一刻と生み出されていく。そして



「・・・・・・誰?」


「うええっ!?こんだけマジマジと見た結果、それ!?いやいや!ほら!昨日、駅まで道案内した・・・」


思いがけない応答に、當真は両手を振り上げながら説明を試みる。だが、その間も不思議そうに當真の全身を品定めするように眺め続ける“小柄な美少女”。


「昨日はなんか、気がついたらお前いなくなってたけどさ。嵐ガールに会うまで駅まで一緒だったじゃん?えーっと・・・あっ、そうだ、“くれは”だっけ?」


「!?」


過去の記憶を必死に手繰り寄せ、その“名”に辿り着き口にする當真に対し、ここまで変化のなかった“小柄な美少女”の表情が、ようやく変化を見せる。


「・・・“いで”」


「え?」


昨日の一連で抱いた“疑問”を投げかけようとする當真の言葉を遮るように、“小柄な美少女”は當真を“睨み上げ”、そして続きを返す。


「気安く“名前”で呼ばないでくれる?」


仁王立ちするように両腕を組み、だが“小柄”な体格が災いとなってか、まるで子猫が敵意を示すような“小さな威圧感”を、當真に向ける少女。


(なんか、昨日と雰囲気違くね?・・・まぁ、そもそも、“嘘”つかれてたわけだし?この子のほんとのところなんて知りもしないんだけどさ、)


「悪い悪い。でもよ、ほら?名前もちゃんと知らねえし、何て呼べばいいとかも分かんねえし・・・あっ、ちなみに俺は當真 夜。嵐ガールとは・・・あー、なんだろ、“よく知った顔見知り”ってとこかな?」


楓の事を思い浮かべ、その関係を言い表す言葉を“まだ知らない”當真は、なぜだか少しだけ体温が上がるような気恥ずかしさに疑問を抱きながらも、だが、思いつく限り分かりやすく、楓の友達であろう目の前の“美少女”に説明を試みた。


「・・・“よく知った顔見知り”?」


「ん、ああ、まぁ、いつもあの“魔法”で吹っ飛ばされたり、会うたびにギャーギャーうるせえし、てかそういや昨日も謎のラリアット喰らわされたな・・・顔見知りつーか、“被害者”だな、うん」


“美少女”の言葉に対し、思い返してみると、その“ほとんど”がボロボロな“悲惨な記憶”しかないような気がして・・・だが、もちろん“それ”だけじゃなくて、“救い”や“力”になった瞬間も、ここひと月では特に在ったりもして・・・


「“被害者”、ねえ・・・(ははん?)」


まるで當真の胸の内の淀みを見透かしたように、口角を少し上げ、いかにも悪戯ワルそうに鼻で笑う“美少女”。


「おい?やめろ、その顔?言いたいことがるならちゃんと言いなさいよ?ねえ?」


當真の、どこかもどかしい反応に、“美少女”は“左手”をふいに差し出しながら言葉を告げる。


「まあ、“それなら”いいよ。名前は『双葉』、名前で呼ぶならそう呼んで?“トーマ”?」


「双葉か。それじゃ改めて、」


差し出された手を軽く握り返し、當真は改めて疑問を投げかける。


「なんか二日続けてこんな風に会うなんて、ちょっと不思議な気もするけど・・・そんで、双葉は何してたんだ?今日は嵐ガールとは一緒じゃないのか?」


「一緒じゃないよ、というか“こっち”来たばっかりだから、いろいろと散策してたとこ。“行きたい”場所もあるし・・・」


スマートフォンを取り出し、画面を眺めながら呟く双葉。と、ハッと何か思いついたように表情が映り変わると、視線を再び當真に向け直し、


「そうだ。トーマは、この街が地元?」


「ん?まあ、一応そうだけど?」


「じゃあさ、ちょっと“付き合ってよ”?この街、案内して欲しいんだけど?」


「え?」


昨日の“英語”を使った救難信号メーデーとは打って変わったようなその態度に、當真は少しだけ戸惑いを覚えるも、それが“見過ごす”理由にはならなかった。


ただし、


「いや、まぁ、俺で案内できるところなら別にいいんだけど・・・あっ、ちょっと待ってくれ」


相対する双葉と同様に、當真も自身のスマートフォンを取り出し、時間と“再度”メッセージを見返すと


「ちょっとだけ時間もらっていいか?流石に“限界”なヤツがひとりいるんで?」


「限界?」


當真の申し訳なさそうな反応に、不思議そうな表情を見せる双葉だったが、一旦は當真のその願いを了承した。



十数分後。



「にゃいと(もぐもぐ)ほんとに(もぐもぐ)おしょいから(もぐもぐ)にょっと(もぐもぐ)じんぱい(もぐもぐ)じてだんだよ(もぐもぐ)?」


當真と双葉の目の前にいるのは、自身の顔よりも大きなクレープを頬張りつつ、もう片方の手にも同じサイズのクレープを持ちながら、身に纏った白いローブの腰元まで伸びた金色の髪を靡かせる(腹ペコの)『金色の少女』。


「いや、お前が心配してたのは俺じゃなくて“おやつ”の方だろうが?パレットさんよ?」


「・・・いや、なんでトーマは普通に会話できてんの?」


呼び出した“腹ペコモンスター”ことパレット=セブンデイズの機嫌を損ねないように、すぐ側のクレープ屋でセレクトしておいたクレープを差し出した後、何を言っているか常人には理解できないであろう状況でも何事もないかのようにスムーズに会話を繰り広げる當真に対し、双葉は引きつった表情で疑問を投げかけていた。


「にょころで(もぐもぐ)にゃいと(もぐもぐ、からの二つ目のクレープへ移行)、ぞのごは(もぐもぐ)でゃれ(もぐもぐ)だんだよ(もぐもぐ)?」


「とんでもないスピードで二つ目食べ出すんじゃねえよ?というか、いっつも言ってるけど食べながら喋るんじゃありませんよ!!お行儀が悪い!!」


「・・・いや、なんでトーマは普通に会話出来てんの?」


冷静なツッコミを見せる當真、に冷静にツッコミを入れる双葉。そんなやり取りの合間、あっという間に二つ目のクレープを食べ終えたパレットは、双葉に向き合うと


「んんと。それで、この子は誰なんだよ?ないと?迷子?」


「はぁ?!」


自身よりも僅かに背の低い双葉に対し、まるで小さい子をあやすような表情で問いかけるパレット。當真でなくても、その瞬間に、双葉の表情に怒気が満ちたのは理解できたであろう。


「誰が迷子って?口元にクリームつけっぱなしの自分よりも“ガキ”っぽいあなたには言われたくないんだけど?!(ははん)」


「にゃ!?にゃにおおおおお!!?」


顔を真っ赤にしつつも自身のローブの袖で口元を拭いながら双葉に敵意を剝き出しにするパレットを、どうにか諫めるように二人の間に慌てて割って入る當真。


「ちょいちょいちょい!!喧嘩やめろって!!双葉も、ほら?“行きたい”場所あるんじゃねえの?どこなんだよ?」


二人を引き離し、双葉に視線を向ける當真に対し、パーカーのポケットから“小さな白いケース”、タブレット菓子のようなものを取り出し、ひとつ口にして一呼吸、双葉が“その行き先”を告げようとした


「ああ。うん、“この場所”なんだけー」


その瞬間だった、



ドッッッッッッッ!!!!!!!バッッッッッッッッアアアアアアアアアアンンンンンン!!!!!!



空気を震わせる轟音、大地を蠢く振動。


告げられたそれは、“明確”な『爆発』と『破壊』の音。



こうして。“非日常”の物語が、少しずつ、動き始めるのであった。



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