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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 3 : Anti-Fake Strength
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#6 ガール・ミーツ・バイオレット②

「で、ここが食堂ね。これで一通り、目ぼしい所は行ったかしら?」


「さすがお嬢様学校で有名な王凛女学院だね!広すぎてもはや最初に行ったとことか覚えてないよ!」


「いや、それくらいは覚えときなさいよ・・・って言いたいとこだけど、もう三時か。確かに無理もないわね」


午前中の授業を終えた後、約三時間近く、隙を見ては“引っ付いてくる”双葉をいなしながら、楓は王凛女学院の校舎内及び敷地内の主要な場所の案内を行っていた。


中高一貫の女子校であり全国でも有数の敷地面積を誇る王凛女学院は、ちょっとした学校案内だけでも相当の時間を有する。今日が転校初日の双葉と違って通い慣れた母校とはいえ、楓にもしっかりと疲労は蓄積されていた。


「ちょっと食堂ここで休憩でもしましょ?ジュースおごってあげるわ、くれは。何がいい?」


「えー?かえでっち優しい!!らぶなの?それは私にらぶだからなの?」


両手を大きく広げ、抱擁(あわよくば接吻)を試みようと突進してくる双葉に対し、楓は“右手”を軽く振るう。


ビュン


どこからともなく生じた“小さな突風”に、突進の勢いを殺されるばかりか、すぐ側の席へと“風”に“誘導される”ように、ふわりと着席する双葉。


「・・・私の“おすすめ”にしとくわ。あんたはそこでおとなしく待ってなさい」


「はぁぁぁぁいい」


呆れた様子でひとり食堂内の自動販売機へと向かっていく楓に対し、“そうした”扱われ方さえも“メロ”ついてしまう双葉は、自身の髪をクルクルと指でいじりながら、目を輝かせながら楓を見送っていた。


一分も経たずして、買ったジュースの缶をポンポンと宙に投げながら歩き戻って来る楓、双葉の待つ席に近づくと、その手に持っていた缶を双葉の元に放り投げる。


「くれは。はい、私の“おすすめ”」


ポーンと投げ放たれたジュース缶を、まるで子犬が飼い主に投げられたボールを拾う様に嬉しそうに飛びつきキャッチする双葉、


「わーい!かえでっちからの愛の・・・え、なに“これ”?」


手にした缶ジュースのラベルを見るなり、双葉の表情が一変する。


「『おしるこクリームサイダー』よ。おしることクリームの甘さが炭酸と一緒にハジけて美味しいのよねー!!」


米国育ちの双葉にとって(もはや関係ないかもしれないが)、いまだかつて見たこともない缶ジュースのラベルの文字とデザインに、自然と表情と心と体“全部”が“防衛反応”を示すなか、同じ缶ジュースを手に取り、美味しそうに飲み始める楓。


「・・・かえでっちって、昔から“そういうとこ”あるよね?」


「どういう意味よ?」


双葉の怪訝な反応に疑問を抱きながらも、向かいの席に腰をかける楓。もう一口、その手に持つジュースを飲みながら、食堂のおばちゃんたちを除いて、二人以外誰もいない食堂内へと視線を向ける。


「流石に誰もいないわねえ。普段だったら、この時間も割と人がいるのに」


「へー!そうなんだ!」


楓に気づかれないように、こっそりと自身のリュックの中へと“(飲むつもりはないが楓から貰ったものゆえに家宝にしようとしている)缶ジュース”をしまいながら、双葉も言葉を返す。


「まあね。ここって中高一貫校だし、食堂も夕方までは開いてるから、基本的にどの時間帯も割と人が多いんだけどね、さすがに“魔法規格検査”中だから・・・というか、くれは、あんたは“何で”受けないのよ?」


説明する中で脳裏によぎった疑問を、双葉にそのままぶつける楓。思えば、今こうして“当たり前”のように“日常”を過ごしているような空気感なのだが、双葉との“再会”に関して、本来であればもっと積もる話があってもいいはずなのだ。


「んー?ほら?“魔法規格検査”って、実施年度は全世界共通だけど、各国が主導で行うものだからさ!私は“もう”米国(むこう)で受けてるのよ!」


「へえ、そうなんだ。というか冷静に考えて今こうやって普通に話してるけど、よくよく考えたら昨日から今日にかけて驚きの連続なのよね、くれはと会うの何年ぶりだっけ?」


「私とかえでっちは前世から夫婦だし!離れていても!心はずーっと・・・」


「あぁ、そういうのはもういいから」


“愛”を全力で振りまく双葉に対し、カットインするように冷静に淡々と言葉を挟み込む楓。


「え?照れ隠し?」


「違うわよ?“相変わらず”ポジティブすぎるわね、あんた?・・・小学校に上がる前に、あんたが引っ越したから、だいたい8年とか9年前くらい、だっけ・・・」


「昨日の私たちの運命の再会は!!3349日振りの再会!!だよ!!かえでっち!!」


(なんで“正確な日数”で覚えてるのよ、この子?)


目を輝かせながら意気揚々と声高に答える双葉に対し、ちょっと“引き”気味の楓。


「・・・“あの時”も急に引っ越したと思えば、昨日も急に“現れる”し。かといって昨日も再会したと思えば“嵐のように”どっか行って、それで今日“転校生”としてくる・・・なんというか、ずっと忙しないわよね、くれはって?」


「え?褒めてる?好き?」


「いや、一言も言ってないんだけど?」


“冷笑”すら“愛”として受け止めてしまう双葉に、もはや“諦め”の境地をその表情に見せる楓。


「てか、くれは、なんで“あそこ”にいたの?それに・・・“アイツ”と一緒だったのも(ごにょごにょ)」


言葉の終盤で、何やら“とある人物”を思い浮かべ、若干頬を赤らめ声が小さくフェードアウトしていく楓に対し、双葉は“ははん?”と意味ありげな表情を見せながらも言葉を返す。


「かえでっちは、この国だと有名じゃん?『レベル・2(セカンド)』だし?だから“魔法規格検査”するなら、この国“でも”指定機関施設とかでやると思ってね!」


表情や声色は変化はないにしても、双葉の口からあまりにも流暢に語られる言葉たちが、“日常”のそれとは違って、少しのギャップのような、なにか“違和感”みたいなものを覚える楓。


もちろん、そんな楓の事は気に留めることなく、双葉は言葉を続ける。


「でも、日本に帰って来たの久しぶりだったから土地勘もないしさ!米国アメリカにいた時に“ある人”に教わった通り、“日本語”話せない“フリ”してたんだけど、そしたらあの“親切な彼”が道案内してくれたってワケですよ?・・・あの“親切な彼”、がね?」


「な、なに、を、なん、で、二回もっ、言うのよ?はあ!?」


分かりやすく動揺を見せる楓に対し、席を移し替え隣に座り直した双葉は、“口撃”を続ける。


「“好き”・・・」


「だっ!!?誰が!!?はあっ?!」


慌てふためく楓に対し、“ははん?”と悪戯な笑顔を見せる双葉。


「えー?この国の人は“親切”で“好き”だなって話だけどー?向こうで私が住んでたところだと、言葉が通じない“外国人”の為に、わざわざ道案内だったり駅まで送っていったりする人って、なかなかいなかったからさ?やっぱりこの“国”は平和だし親切な国だなって!“ライク”の好きって意味だけど?」


楓の肩をグリグリと“意地悪く”指でさしながら、詰め寄る双葉に対し、一転、双葉とは視線を合わせずとも楓は“誰か”を思い浮かべながら、ごく“当たり前”のように言葉を返す。


「まぁ、この国の人っていうか・・・“アイツ”は“そういう”奴なのよ。困ってる人とか見過ごさないっていうか、さ」


「・・・」


その“迷いない”言葉と、表情、そして包み込むような“空気感”。一瞬、楓に見えないように双葉の表情に“切なさ”が灯されるも、一転、満面の笑みで悪戯に詰め寄る。


「ねえねえ!かえでっち、ほんとにさあ・・・」



ヒュンッッッッッ!!!ドドンッッッ!!!!



それは、唐突に、何もない『ゼロ』の空間を切り裂くような音、そして、楓と双葉のふたりの目の前に、鬼のような形相で“ひとりの少女”が現れた轟音。そして謳われる、“嫉妬の音色”。


「きいいいえええっっっ!!!!??良からぬ波動を!!決して良からぬピンク色の波動を“再び”いいいいいいい!!!!楓さまからああああああ!!!感じましたわああああああ!!!!」


「光っっっ!?」「きゃあ!?なになになにっ!!?モンスター!?」


一心不乱に黒髪三つ編みおさげを掻き乱し、かけた眼鏡を落としかけない勢いそのままに前のめりで体を突き出してくる、“楓を(野郎そして近づく全ての不埒な生命から)お守りする親衛隊”(非公式)、『緋色組』の総帥こと神宮路じんぐうじ ひかりの姿に、突如としてそこに現れた“不可思議”を通り越し、もはや“恐怖”を感じ取った双葉は、思わず楓の腕にしがみつき身を寄せる。


もちろん、その行為が再び光の“怒りのトリガー”となったのは言うまでもないが。


「ちょっとちょっとちょいとおおおおおお!!?ちかいちかいちかいですわ!!??きええええええええええ!!!!?」


ヒュンッッッッ!!!


“右手”を振り上げ、瞬間、目の前から“消えた”光は、一瞬にして楓と双葉の間に割って入るように“現れ”、その勢いに思わず双葉は楓の腕から手を離し距離を“取らされる”。


一方で、取って代わるように楓の腕にしがみつき、頬を摺り寄せながら叫ぶ光、


「楓さまの隣はあああ!!ワタクシだけのものおおッッッ・・・」


ゴンッッッッ


「あいたああああッッッ???!!!!」


その脳天に“いつも通り”、諫める為の拳を叩き込む楓。あまりのテンポの良さに、あっけに取られていた双葉も思わず吹き出して笑ってしまう。


「ぷっ!あははっ!!面白い子!!しかも“転移魔法者(テレポーター)”?」


「まあ、そうなんだけど・・・ほら?光も、いつまでもそんな“睨み”つけてんじゃないの。こっちは私のクラスメイトの、」


「きいいいいい!!“魔法規格検査(マジック・ジャッジ)”中でワタクシの目が届かない内に楓さまと距離を縮めるだなんて!!とんだ不届き者ですわ!!?一体どこのどちら様ですのッ!!?」


「光、あんたねぇ?」


臨戦態勢を一向にとかない光に対し、楓は呆れたように大きな溜息をひとつ。


パチンッ


と、そんな様子を“変わらず”笑顔で見つめていた双葉は、食堂の窓の奥に見える運動場を眺め、そして、二人の視線を集めるように手を打ち、そしてゆっくりと“外”に向かって歩み出した。


「じゃあちょうどいいかも!かえでっちにも“見せて”あげたいし!ついて来て?あなたのお望み通り、自己紹介がてら、私の“魔法とくべつ”も見せてあげるよ?」




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