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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 3 : Anti-Fake Strength
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#4.5 Road to Prologue (Scarlet)

「あー!すげえ解放感!!・・・・・なんか、つい最近も“同じ”こと言ってた気もするけど」


国立病院の入口から数歩歩き、初夏の日差しと風を全身で浴びるように、寝ぐせかどうかも分からないボサボサの“黒髪”の少年、當真とうま よるは両腕を上げ大きく伸びをしながら、ここ最近の“騒動”を思い浮かべながら呟く。


この“魔法”の在る世界においては珍しい“重度”の“入院生活”を、この短期間で二度も繰り返している“非日常”な現実を、いまだに全身に巡る“痛みの残滓”から噛み締めつつも、流れるのどかな空気と時間に、當真はようやく“日常”に舞い戻ってきたことを実感していた。


と、同時に。込み上げてくるのは、“数々”の“心配事”。


「はぁ・・・とりあえず退院した喜び以上に、自宅に待ち受ける“食欲モンスター”との食生活バトルが憂鬱だし、というか学校もしばらく行けてなくて、俺、ほんと大丈夫なのか・・・・・」


自宅に居候している“金色の少女”との“生活”(主に食事)に対する現実的な不安と、いまだまともに送れていない“高校生活”への不安が重なり、その足取りも徐々に重くなっていく。


そして。もうひとつ、これまでとは違う一番の“心配事”。


「“魔法規格検査(マジック・ジャッジ)”・・・今日からだよな、確か?どうなるんだろうな、“俺”?」


そう。これまで生きてきた人生の中でも、當真にとっては大きな“転換点”を迎えていたからだ。


これまでの『ゼロ』であった人生が、図らずとも“魔法規格検査”のあるこの年に、“そうでなくなった”からだ。


「学校から連絡あったから“検査”自体は明日からでも大丈夫みたいだけど・・・自分で言うのもあれだけど、俺の“魔法”、いまだによく“分かんない”だよなあ」


“右手”を眺めながら自身に問いかけるように呟く當真。ずっと願っていた“魔法ちから”だが、手にした“ソレ”は、想像していたようなものとは違っていたがゆえに、待ち受ける“魔法規格検査”の“結末”が、まるで想像できないでいた。



ドンッ



と。数々の“心配事”に少し上の空な當真の胸元に、伝わってくる“小さな衝撃”。


「あっ、すみま・・・」


焦り、視線を下げると、その想定外の“小ささ”に言葉を見失う當真。“衝撃”から想像していた以上に視線を下げないと視界に映らない程の、“小柄な少女”がそこにいた。


初夏の暑さがただよう中、身の丈以上の大きめの白のパーカーを身に纏っているが故に、履いている(であろう)ミニスカートもすっぽりと隠れてしまっており、當真の視線と心を一瞬“ドギマギ”させていた。


対して。パーカーのフードを目深に被っているが、黒髪のショートヘアーの前髪の奥にのぞき込む大きな茶色の瞳に愛くるしさを感じさせる童顔の“美少女”は、ぶつかったことなど気にも留めず“マジマジ”と當真を見上げ、見つめ返す。


(パレットより小さい子だな・・・小学生、とかかな?)


“當真家”に絶賛居候中の“金色の少女”こと、パレット=セブンデイズよりも僅かに小柄かつ幼く見える眼前の“美少女”に対し、そんな推察をしながらも、無言で見つめてくることに気まずさを感じ、當真は軽く頭を下げながら、その場を離れようと歩み出した。


が、しかし



ガシッ



立ち去ろうとする當真だが、不意に背後から腕を掴まれ引き留められる。もちろん、掴んできたのは、その“美少女”だ。


「えっ?・・・・・あの、えっと、なんでしょう?」


掴まれた右腕はそのままに振り返り、再び“美少女”と視線を合わせ疑問を投げかける當真。


一瞬の間を空け、おもむろにスマートフォンを取り出すと高速で操作をし始める“美少女”。そして、一歩、當真の元に歩み寄ると、スマートフォンの画面を見えるように突き出してくる。


“美少女”の視線に促されるように、画面に視線を向けると、そこには“翻訳アプリ”に打ち込まれた“英文”と、訳された“日本語”の文章が記されていた。


「え?英語?日本人じゃないの?・・・えーっと、『私は国の、“魔法”の、“研究場所”に、行きたい。駅は、どこですか』・・・・翻訳、合ってんのかこれ?かといって英語分かんねえしな、俺?・・・くそ、こういう時に限ってパレットいねえの、ほんと間が悪いというか、」


“くちゅん”。


當真の嘆きが通じたのか、少し離れた“當真家”のリビングにて、“退院祝いパーティー”という名の“大義名分”を得て、買い込んだお菓子やスイーツを“すでに頬張り”ながら家主の帰りを待つパレットが、可愛くくしゃみをしたことなど知る事もなく。


當真は精度の低い“翻訳アプリ”の成果と、出来ないなりに振り絞った自身の英語力を絞り出しながら、“正解”を“推理”していく。


「駅くらいは俺でも流石に分かるから、駅を知りたいのは間違いないよなあ・・・“魔法”の、“研究場所”・・・国・・・・とりあえず駅まで一緒に行こうか?あー、“イッショニ、ゴーシマスヨ、ステーションマデ?”」


身振り手振りと表情、そして“カタコト”の英語(ほぼ日本語)を駆使して“美少女”に提案する當真。ゆっくりと“本来の進行方向”から向きを変え、その歩みを進めると、“美少女”にも意図が伝わったのか當真の後に続いてきた。


(というか、どう見ても“日本人”っぽいのにな、この子?・・・あれかな、帰国子女ってやつ、かな?)


思考を巡らせながら、視線だけを少し後ろへと向ける當真。


思ってた以上に、二人の距離が開いている事に気がつき、當真は少しだけ歩幅を狭め、“それ”に気がついた“美少女”は、少しだけ口角を緩め、意識的に“早歩き”をしながら當真の後に続いた。



歩く事、数分。最寄り駅に辿り着く。



平日の昼の時間という事もあってか、人通りはもちろん、當真と“美少女”を除いて周囲には学生や未成年の姿はほとんどない。


と。ひとまず駅には辿り着いたものの、立ち止まりこの先の指針に悩む當真と、そのすぐ側に佇む“美少女”の元に、コツコツと、近寄る足音が。


「やっぱり。夜君じゃないか?こんなところで何をしてるんだ?」


声のする方へと振り返る當真。その視界が捉えたのは、“見知った大人”がひとり。


「正蔵さん!!」


整えられた髭、眉、強靭でがたいもよく、オールバックのヘアスタイルが似合い過ぎている男、いや、父親の友人であり當真とも顔見知りである“刑事”、陣内正蔵(じんないしょうぞう)が不思議そうな表情でこちらを眺めていた。


思わぬ“邂逅”、そして“助け船”に出会ったかのように、當真は足早に陣内の元へと駆け寄る。


「ちょうど良かった!!ちょっと困っててー」


「夜君、学校はどうしたんだい?まさか学生の頃の“お父さん”みたく、月曜の昼間からサボってるんじゃ・・・」


「いやいや。バカ親父の学生時代と一緒にしないでくださいよ?俺、さっき“退院”したばっかりですし、学校は明日から行きますよ!?」


「“退院”?・・・あぁ、そうか、君、“また”無茶をして入院してたんだったな・・・ほんと、そういうところも“お父さん”にそっくりだな、まったく」


(なんか、結局“バカ親父”のせいで怒られてるんだが?)


“誰か”を思い浮かべ、目の前の當真と照らし合わせように眺めながら、溜息をつく陣内。


「正蔵さんこそ、何してたんですか?仕事中?」


「ん?ああ、ニュースになってる“ボヤ”絡みだったり、今日から“魔法規格検査”も始まるからな、警察も巡回強化期間なんだよ・・・夜君も知っての通り、ここ“最近”はこの国の治安も少しばかり“不安定”になってるしね」


この国は世界的にも“平和”な部類に入る国ではあるのだが、ここひと月余りの間に立て続けに起きた“事件”、そして世間には知られずとも、そこに大きく“関わっていた”當真にとって、陣内の言葉はとても他人事では片づけきれないような“重み”があった。


「ところで。夜君は何を?ここだと家とは正反対じゃないかい?・・・それに、“その子”は?」


當真の知る中でも“かなり出来た”大人である陣内が、空気を読み、言葉を切り出したタイミングとほぼ同時に、自身の服の裾を“美少女”に掴まれ、當真も本来の目的を思い出す。


「あっ、そうそう。この子、行きたい場所があるみたいだけど、日本語話せないみたいでさ。ほら?」


當真が手振りでスマートフォンを見せるように促すと、“美少女”は陣内に向かってスマートフォンを差し向ける。画面を覗き込む陣内は、視線を僅かに動かし、即座に返答する。


「ん?・・・ああ、“国立魔法研究機関”に行きたいのか?だったらここからも三駅くらいだから、そんなに遠くないだろう」


「え!?陣内さん、英語分かるんすか!?」


「まあ“海外赴任”もしていたし・・・というか、そこまで難しい英語でもないだろう?夜君?」


「うぐぐ」


少し呆れ気味の陣内に“同調”するかのように、振り返り、“ははん?”と言わんばかりの表情(當真主観)を見せてくる“美少女”。


「・・・なんだよ、その“顔”?あれー、俺、すごい今“バカ”にされてません?ねえ?キミ、そういうのは良くないんだぞ?」


(ははん?)(當真主観二回目)


「おいい!?完全に鼻で笑ったよね!?今!!?」


言葉が通じ合っているかは分からないが、當真とそんな他愛もないやり取りを見せる“美少女”に対し、陣内は、ふと“ある疑問”を抱いていた。


(しかし・・・なぜ“魔研”に?一般人が行くような場所でもないし・・・“魔法規格検査”・・・まさか、この子も“レベル・2”相当の・・・)


だが、改めて。その見える景色からは、彼の持つ『悪意を嗅ぎ分ける“魔法”』の“副次作用”でもある“脅威度合い”などまるで『ゼロ』であることからも、陣内は自身の脳内に過った思考を掻き消すように、ひとつ深呼吸をして“切り替え”、その場を後にした。


一方。陣内と別れた當真は、自身のスマートフォンで検索し“目的地”の最寄り駅を確認、“美少女”に再び身振り手振りを駆使し、駅の線路図で向かうべき場所をどうにか教える事に成功した。


「じゃあ、気をつけて・・・あー、“グッドラック”?」


改札口付近まで送り届け、絞り出した當真の労いの“言葉”に対し、


(ははん?)(三回目)


不敵な笑みを返す“美少女”に。思わずツッコミ返そうかと意気込んだ當真に、


一変、“美少女”は満面の笑顔で、小柄な体格全身を使って大きく手を振り返してきた。


(お、おお?なんだその愛らしい笑顔!?ギャップか!?ギャップ萌えですか?!)


思わず、當真の胸の内も“キュン”と・・・・・



ガシャン!!ビービービー!!



無情にも鳴り響く警告音。笑顔で手を振りながら、流れるように改札を“素通り”し、“もちろん”改札に引っ掛かる“美少女”。そして、集う駅員さん達に、何の事かも分からない様子でポカーンと不思議そうな表情を見せ、そのまま連行されそうになっていく・・・


「ちょ、ちょいちょいちょい!!?す、すみませーん!!!!!!!!?」


目の前で“そんな”景色を見せられて、“キュン”としてる場合でもなく、“迷うこと”なく當真は叫び駆け出していく。


困っている人を目の前にして、それを見過ごす事が出来ないことは、當真が“バカ親父”から受け継いだ唯一にして最大の“誇り”。


(電車の!!乗り方も!!分からんのは!!帰国子女とか最早関係なくないか!!?)


心の叫びはそのままに、駅員さんたちに事情を説明し、ひとまず“美少女”を“目的地”まで送り届ける決意を當真がしたことは言うまでもない。



電車に揺られる事、三駅分。



電車内でも映り変わる景色を眺めようと右往左往する“美少女”の“保護者”として、やらかさないように四苦八苦する當真。まさか退院明けに待ち受ける展開が、見知らぬ“美少女”の“子守”だったとはとても想定していなかった。


まして“無事”に“子守”を終えたとして、その先には自宅に待ち受ける新たな“子守”が待っていると思うと・・・


當真の溜息は留まる事を知らず、降り立ったのは“国立魔法研究機関”のある区域の最寄り駅。


地図アプリを起動し、“目的地”である“国立魔法研究機関”の場所を調べようと、スマートフォンに目を向ける當真。


画面に映る時刻、午後二時を少し過ぎた頃。


と、ここで“自宅”に待っているであろう“金色の少女”の“當真の帰りを今かと待ち続ける心配顔”(當真の妄想、というか理想(ねがい))が脳裏に過る。


(そう言えば、パレット、アルマからスマホ貰ってたんだっけ?先にちょっと連絡しと・・・・・)



と、次の瞬間



ゾワワッッッッッ!!!!!!!



當真の体中を巡る、“イヤ”な“感覚”。そして、聞こえてくるのは“見知った声”の“雄叫び”。



「よいしょおおおおお!!!!!!」



「ッ!!!?グヘエエエエエエエエエ!!!!!????」



視界に僅かに映り込む“緋色の残像”、そして華奢な右腕から繰り出された“ラリアット”を、為す術もなく受け、吹き飛ぶ當真。


その正体が“誰か”なんてのは考えるまでもなく気がつき、その場に横たわりながら當真が声を上げようとしたタイミングで、初夏の“悪戯風”が駅構内に吹き込んでくる。


“突風”によって、“美少女”のフードは脱がされ、その素顔が正真正銘、露わとなる。


紫のメッシュが入った黒髪のショートヘアーに、白肌のキメ細やかさも、より“鮮明”になり、抱いていた“美少女”という感覚が、決して間違っていなかった事が証明される、一方で


「わあああああい!!“やっぱり”ここにいたああ!!“かえでっち”!!!!!!」


「えっ?その呼び方・・・もしかして、“くれは”?」


目の前で抱擁し合う、ふたりの少女の“邂逅”と景色に、真っ先に脳裏に浮かび上がった疑問が、當真の口から零れ落ちる。



「いや、“お前”・・・・・“日本語”、話せたのかよ?」



ようやく。繋がった『緋色の序章(プロローグ)』。


始まりを告げるのは、二人の少女と、少年の“邂逅”。


こうして、魔法の在る世界での“非日常”な物語が、再び“続き”を“紡ぎ始める”のであった。



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