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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 2 : PAST, PRESENT, and FUTURE
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#20 VS『未来』③

「はああ。ひっさしぶりだな、“この感じ”。痛いねえ、アハハ」


両腕を広げ、仰向けのまま、だがその声色は“変わらず”薄っぺらで軽妙なままで。


ルームズ=アルシャロックの声が響く。“変化の無い”その声、そのトーン、ゆえに當真は一切の気も緩める事はなかった。


体を起こし、片膝を立てて座り込み、自身の黒髪を右手の人差し指でクルクルと遊ばせながら、ルームズ=アルシャロックは思考を言葉にする。


「ロープがどのタイミングで解かれたのかは分かんないけど・・・最初の爆撃のタイミングとか、かな?やっぱり“制約”に拘らず、“魔法”で“拘束”しとけば良かったかな、うーん。しまったしまった」


解かれたロープが、ところどころ焦げ切れている点を見つめながら、自身を納得させるように飄々と呟くルームズ=アルシャロック。言葉は、淡々と続く。


「手が解放されたから、“魔法”で僕の『未来』を“た”んだね、アルマちゃん。だから、僕が“魔法”で“君を傷つけない”ように、その“軌道”を調整してたこともお見通しだったわけで、」


淀みなく、まるで當真とアルマのやり取りを間近で聞いていたかのように、“正確”にここまでの状況に至った経緯を推察していくルームズ=アルシャロック。


「僕の“魔法”が放たれた瞬間に、君は上着を前方に投げ捨て、“アルマちゃんの位置まで下がり”、“魔法”をやり過ごした後に、回り込み、煙に潜んで隙を見て僕へと一撃を入れる・・・うーん、素晴らしいじゃないか?『未来』が見えるからこその展開・・・うん、いいなあ、やっぱりアルマちゃんの“魔法”、絶対に“欲しい”なあ!!!!!!」


ゆっくりと立ち上がり、當真の一撃によって切れた口元から流れる血を左手で吹き上げ、高らかに声を上げるルームズ=アルシャロック。


その“碧”の瞳が、明確に當真を越えた背後、アルマへと向けられる、



ゾワワワワワワッッッッッッ!!!!!!



一瞬にして、“変容する空気”。


“ソレ”は。大気を伝播する“悪寒”。直接その“視野”に入ってすらいない當真でさえ、“肌に感じる”程の強烈な“寒気”。


もちろん、直接“向けられた”アルマは、當真の感じた“ソレ”とは比較にならない程の、体感する“恐怖”を感じ取っていた。


息を呑む當真とアルマを尻目に、ルームズ=アルシャロックはスマートフォンを取り出し、どこかへ連絡を取り出す。


「・・・ああ、ごめんごめん。ちょっと“時間”、後ろにずらしてくれるかい?“ちゃんと”相手してあげたくなったし、どうせなら“完璧”に“盗み”たくなったからさ?」


まるで蚊帳の外にいるかのように二人を無視して“誰か”と話しているだけなのに、當真とアルマは一歩も動き出すことが出来なった、ルームズ=アルシャロックの放つ、見えない“空気感”に掴まれているかのように。


一瞬の、空白の時間。そしてスマートフォンを上着の内ポケットにしまうと、ルームズ=アルシャロックの意識の矛先は、當真とアルマに向けられる。


「さて。じゃあやろうか?どうやら君を潰さないと、アルマちゃんも心置きなく“こちら”には来れないみたいだからさ?君を“潰して”、アルマちゃんの“魔法”も“ちゃんと盗む”事にするよ」


両腕を突き出し、當真に差し向けるルームズ=アルシャロック。


対する當真も拳を握りしめるも、胸中と思考は決して穏やかではいられなかった。


(さっきのは“奇襲”みたいなもんだ、結局、状況はほとんど変わってない・・・きっと、)


「君の“魔法”自体はそんなに怖くはないんだけどさ、まあ、もう“近寄らない”よ?距離を取ったまま“潰す”、それが“正解”みたいだし?」


(・・・だろうな。くそっ、せめてルームズの“魔法”が“ひとつ”だけなら、“まだ”やりようはあるんだけど・・・)


當真は自身の右拳に視線を向ける。


“魔法”が発現してから、まだ間もないこの期間、だが幾重の経験の中で、當真自身、その“魔法(ちから)”の使い道を、少しずつだが理解し始めていた。


(“魔法”を“嫌う”・・・さっきもそうだったけど、“触れさえすれば”、この“魔法(ちから)”のおかげで“無効化”することが“出来なくはない”・・・はず。でも、)


當真はルームズ=アルシャロックに視線を向ける。


捉えるのは“淡い白光”を宿し始めた、『大怪盗』の“両腕”。


(“触れられない”、“捌き切れない”量や数で来られたら、正直どうしようも出来ない・・・ルームズが“複数”の“魔法”を使える事が、どう考えてもネックだな・・・くそ)


逸る鼓動と思考、だが答えが出るまでの時間など、到底ないのが現実。


その時だった。



「ナイト、私も一緒にいきます、“二人で“攻め”ましょう!」



當真に届くような小さな声で、想像に及びもしなかった“提言”を伝えるアルマ。


対して、當真は即座にその“提言”に反発する。


「ッ!?馬鹿な事言ってんじゃねえよ!?どう考えたって、そんな無茶をー」


「もちろん!!私の非力な力なんかじゃ、ルームズにはきっと“届かない”です!でも、きっと、“隙”なら作れる!!この“魔法(ちから)”が私には在るから!!」


當真は視線をアルマに向ける。『オッドアイの少女』の揺らぐことない“強い意志”と、“目が合う”。


「さっき、あの人、“制約”って言ってました。きっとルームズが同時に使える“魔法”は、一度に“二つ”が限界なんだと思います・・・“ひとつ”の意識を私に向けられれば、ナイト、あなたの“魔法(ちから)”も、“届きます”、よね?」


「アルマ・・・」


當真の心情を超える、その“覚悟”。アルマの言葉に“重さ”が乗る、


「さっきもそうでした、私の“魔法”が欲しいルームズは、私にはきっと“致命傷”になるような“魔法”は使えない・・・“だから”、『未来』を“”続ければ、私でもきっと“隙”を作る事は出来るはずです!!」


當真は知っていた。こうした“想い”や“覚悟”は、決して“揺らがない”事を。自分自身が“そうであるように”。


「守られてるだけじゃ、助けられてるだけのままじゃイヤなの!!私だって!!“友達”を“助けたい”から!!!!」


一呼吸。拳を握りしめる。當真はもう、“迷わない”。


「・・・明日は、パレットと、学校のみんなとまた“遊ぶ”んだ。アルマ、絶対無茶はすんなよ!!」


「はい!!」



一陣の春風が、駆ける様に横切る。張りつめた空気を、切り裂くように。


呼吸をひとつ、三人の瞳が、重なるその瞬間、始まりは告げられる。



「“部分再現”、“風刃(エアー・シックル)”」



ガッッ、ガッッ、ギリリリリリリリリリ



ルームズ=アルシャロックが“左腕”を振るう。空気を切り裂く音、白い影が視覚化される、言うならば“鎌鼬”の具現化、“風の刃”。それが連続で“二枚刃”となって放たれた。


放たれた“風の刃”はお互いにクロスし重なり、地面に触れている箇所を削り切りながら迫って来る。


駆け出す當真。“風の刃”との距離が、瞬く間に縮まっていき、


「おおおおおおおおおおっっ!!!!!」


邂逅の直前、當真は“半身”、“風の刃”の軌道から躱すと同時に、右の拳を“刃の側面”に叩き込む。



キィィィィィン!!!ガッ!!ギリリリリリリリッッッ!!!!



當真の拳に伝わる、“穿つ衝撃”。触れた拳に僅かに裂傷を起こすも、瞬間、“風の刃”の軌道は大きく逸れていく。


「・・・ちょっと厄介だなあ、その“魔法(ちから)”?でも、まあ・・・“部分再現”、」


“風の刃”の軌道を逸らした勢いのまま、踏み込む足を止めず、駆け寄る當真に対し、ルームズ=アルシャロックは少しだけ苛立ちを見せつつも、“右腕”を差し向けつつ、



「“氷雨(アイス・レイン)”」



謳われた言葉、同時に変容するルームズ=アルシャロックの“右腕”。その周辺の空気が急速に“冷え”、“不可思議”で“歪な無数の小さな氷の弾丸”が、自身の意志を持っているかのように、ルームズ=アルシャロックの“右腕”の周りをグルグルと回転しながら纏わりつく。


「この“小ささ”と“数”なら、捌き切れないよね?君も?」


ルームズ=アルシャロックが“右腕”を振り下ろそうとした、



そのタイミング、



當真の走り寄る影から、ルームズ=アルシャロックの視界右方へと、飛び出る“もうひとつの人影”。



「やああああああ!!!!!!」



それは、白に近い銀髪を靡かせながら駆け寄る小さな“人影”、『オッドアイの少女』の“無謀な特攻”。


“一瞬”。


その“不可解な光景”に、虚を突かれるも、冷静に“右腕の照準”をアルマに差し向けるルームズ=アルシャロック。


「さっきも言ったけど、アルマちゃんが多少傷ついても、僕としては問題ではないんだけどね?アハハ」


ルームズ=アルシャロックは“軽く”、その“右腕”を払う。


周辺の氷の弾丸の“いくつ”かが、その軌道を駆け寄るアルマに向け、そして放たれる。


だが


ルームズ=アルシャロックが“右腕を払った”瞬間、その視界に映り込んだのは、自身の“右手”で“赤”の“左”の瞳を隠しながら走り寄るアルマの姿だった。


『それ』が“意味する”のはー



ダダダダダダダダダッッッッッッ



雨霰のように放たれた氷の弾丸、向けられたその軌道に乗った瞬間、アルマは“不可思議に”、そして不格好ながらにもステップを踏み、走り込む軌道を“不揃い”に変えていく。


そして、アルマが走り抜けた“後”、その軌道上に落下していく“氷の弾丸”たち。


『つまり』、その全ての攻撃を躱し続けていく“アルマ”の姿が、そこに在った。


「“そういうの”、出来るんだねえ?でもさあー」


ルームズ=アルシャロックの表情は変わらない。迫りくるアルマに向かって、再びその“右腕”を・・・



“気がつく”、その“一瞬”こそが、“彼の狙い”だという事に。



視線を“左”へと向ける、だが、“一瞬の意識の外”から、すでに距離は『ゼロ』になっていた、



「おおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!」



黒髪の少年の咆哮と、すでに放たれた“右の拳”は、“再び”ルームズ=アルシャロックへと、届く!!



ゴッッッッッッッ!!!



「チィッッッッ!!!?」



ルームズ=アルシャロックの左腕が、鈍く、軋む音を響かせる。


もちろん、當真はこの機会を逃さない。


右拳を引くと同時に、腰を捻り、勢いをつけたまま右の脚撃へと繋げていく。


だが、當真の右脚が背中に届く間際、よろめく体を投げ出し、“左腕”の“風の刃”を足元に放つと、その衝撃波に乗るように前方へと移動するルームズ=アルシャロック。



再び、三者の間に距離が空く。だが、状況は一気に“変容”していた。



蓄積された痛みに耐えるように、肩で呼吸する當真。慣れぬ攻勢、“魔法”による“先読み”と“回避”行動により、すでに息も絶え絶えな様子のアルマ。


だが、追い込まれ“始めた”のは、ルームズ=アルシャロックの方であった。予期せぬこの展開に、『大怪盗』は苛立ちを表情に覗かせる。


呼吸を合わせる、當真とアルマ。


言葉を交わすことなく、當真は一歩を踏み出し、アルマも続くように走り出す。


「面倒くさいなぁっ!!それなら“先”にー」


ルームズ=アルシャロックの“右腕”が動き出す、


その初動の瞬間、アルマは當真に向かって叫んでいた。



その“右手”で“赤”の瞳を隠し、まっすぐと“青”の瞳でルームズ=アルシャロックを見据えながら。



「ナイト!!氷の方が“来る”!!向かって左、その後は躊躇せずに前転してっ!!“それで大丈夫”だからっ!!」



アルマの言葉を、一ミリも“迷うことなく”行動に映し返す當真。


そのリアクションを後追いする様に、ルームズ=アルシャロックの“右腕”から放たれた氷の弾丸は、その軌道を“不発”のまま、地面へと着地させる。


「チッ!?だったら、」


ルームズ=アルシャロックが“左腕”を掲げようとした瞬間、


その視界に“ナニカ”が飛び込んでくる。



ゴ、ツッッ!!



ルームズ=アルシャロックの“左腕”に届く、小さな“衝撃”。その場に落ちたのは、アルマが投げ捨てた彼女の靴の“片割れ”だった。


当然、痛みなど皆無。


まるで“やけくそ”のような、何の体裁もない、一切のダメージの蓄積にも至らない、アルマの“一撃”。


だが、その“一撃”が。


行動の出鼻を挫かれ、またしても“一瞬のラグ”を生み出し、ルームズ=アルシャロックの行動を、意識を、“一歩遅らせる”。


それは。彼の望む『未来』への到達を、全て“”透かし“阻む”に至る、『オッドアイの少女』の“支援の一撃”。


その“一歩”、その“一瞬”は。“迷わず”突き進む當真にとっては、“十分すぎる時間”であった。



ゾワッッッッッ!!!!!!



走り込む“もうひとつの人影”、迫りくる“圧迫感”。


それを“脅威”と捉える間もなく、ルームズ=アルシャロックは“左腕”を払う、


だが、同時、その空間に現れた“風の刃”を、右の拳で払い弾く當真。



キィィィィィィィン!!!!!!



互いの距離は、この“一瞬の狭間”に、ゼロとなっていた。



「俺一人じゃ無理でも!!“ふたり”なら!届くぜ!!歯ァ喰いしばれッ!!!!」



「クッソッ、ッッッッ?!!!!!」



ゴギンンンンンンンッッッッッ!!!!!!



払った拳を振り切り、勢いをつけたまま全体重を乗せて放つ當真の一撃。



月光煌めく春の夜空の下、再び『大怪盗』の元へと届いたその一撃は、空虚な打撃音を高らかに鳴り響かせた。


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