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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 2 : PAST, PRESENT, and FUTURE
52/64

#17.5 A Part of Seek

夜空の下の邂逅に至る、『かくれんぼ』の途中。


時間は、少しだけ遡る。


※※※


『“着いた”・・・けど、想像以上に、これは・・・』


商店街を走り抜け、“迷うことなく”當真が辿り着いたのは、オフィスビルが佇む街の一角。


そこに近づくにつれ、徐々に人の波も大きくなっていき、この“広場”に辿り着く頃には、當真の見える景色全てが、まるで異世界のような“非日常”の景色で埋め尽くされていた。


“コスプレお祭りウィーク”などと軽妙に謳ってはいたものの、商店街の雰囲気から、あくまでも“町興し”のイベント程度にしか思っていなかった當真だが、目の前に広がる景色、規模のそれはもはや“お祭り”を超えて中規模の“フェス”のような雰囲気だった。


着物を着た和装、西洋の楽歌隊のような洋装といったものもあれば、王道のアニメーションのキャラクターや映画の役に扮した者、四季ごとのイベントを重宝するこの国だからこその季節感を無視した行事に属した装い。


とにかく多種多様、統一された世界観など皆無、強いて言うなれば“混沌”がテーマと言えるほどの、コスプレをした人々が、見渡す限りに意気揚々と楽しんでいた。


人の波の先には、いたるところに出店もあり、広場の中央には大きめのステージ、どうやらコスプレイヤーによるファッションショーが行われているのか、会場やステージを盛り上げるためにDJブースから鳴り響くキラーチューンや重低音が、當真の耳だけでなく全身を覆い尽くすように響き渡る。


『これだけ“目立つ”人たちがいれば、アルマだって目立たないよな、きっと。むしろ俺の方が“普通”すぎて“浮いてる”くらいだし・・・』


周囲を見渡し、自身が抱く感情と周囲の空気感の違いに、どこか居心地の悪さを覚える當真。


人の波を掻き分けて、目指すべき目標を見据える、視界に認識されたのは“二つのビル”。


アルマの言葉、そして楓との会話の中で気づいた“気掛かり”。當真の中で繋がった“結論”には、確たる証明も確信もない、それは想像や推察でしかない。


だが、目指すべき場所が、その“可能性”が在るのであれば、當真は自身に“出来る事”をすべてやり切る事に、迷いはなかった。


『『海』の『近く』、『赤いタワー』ってのはきっと“ポートタワー”だけど、『月が重なって見える』なら、めちゃくちゃ“間近にいて見上げる”か、逆にめちゃくちゃ離れた場所から“見る”か、だよな』


周りの“お祭り騒ぎ”の空気など気にも留めず、自身の思考を整理するように當真は“独り言”を口にする。


『それでいて、『高くて』『広い場所』って考えると・・・逃げ道はきっと、“空”。この街で“ヘリポート”が在るビルは、このエリアのビルだけ・・・・・だと、思ったんだけどな、あー、分かんねぇ、全部が想像でしかねえからな、くそっ』


“独り言”が饒舌に、加速するように早口になっていく事が、當真の今の心境を顕著に表わしていた。


自身の父親が『探偵』をしていることもあり、他の人よりも、ずっと身近に、現実的に、“そういう仕事”を當真は理解しているつもりだった。


だが、実際のところ。


動き出しても、“思考”が全く保証されていない現状。


自身の考えが“正解かも分からない”、そんな確信もないまま動くことのへ“焦燥感”。


その全てに、當真の心は圧し潰されそうになっていた。


誰かが描いた“物語”のようには、現実は動かないし、動かせない。


目に映る、広場の近くの高層ビルの二つ。このどちらかに“アルマがいるかもしれない”し、そもそも“いない”事だって“ありえる”のだ。


距離が近づき、當真の足が止まる、逸る気持ちが思考を早める一方で、周囲の音が煩わしい程に、“心”を折っていく。


(だめだ・・・こっからどうするのが正解なのか・・・“選択肢”が分かんねえ・・・)


と。當真が頭を抱えかけた、その瞬間だった。



ザザザザワッッッッッッッ。



“二つのビル”を視点が右往左往する中で、その“途中”、過る視界の“ちょうど最中”に、當真は自身の胸中が“騒めく”瞬間が在る事に気がつく。


そして、その瞬間。當真の視界が“それ”を見据えると同時に、突然として“認識”が蘇る。


(あれ・・・俺が、目指してたのって・・・)


それは、言葉で形容するなら、とても“嫌な”、感覚。


だが、今の當真にとっては、“思考を証明する”に値する感覚。


賑わう人混みを避ける様に、歩みを進めるのは、二つのビルの間、突如として當真にも“認識”出来るようになったのは、このオフィス街でも随一の高さを誇るビル。


『グラン・ド・オフィスタワー』。


そこに近づくにつれ、周囲の人混みはおろか、“不可思議“な程に、空気が静まっていく。


そして、誰一人として、そのビルには目も向けないような、まるで“意識の外”に、そのビル、その一体が“隔離されているような”・・・このビルが“間違いなく”このオフィス街で“一番高く、目立つ”ビルであるにも関わらずだ。


『これ・・・・・もしかして、』


そのビルに近づくにつれ、當真の中の“嫌な”感覚がより広がっていく、と同時に、當真は“焦燥感”よりも“高揚感”によって、自身の鼓動が早まっていくのを痛感する。


ビルの正面に立つ當真は、周囲の人通りの視線も、その“一切”を感じる事はなく、ただ目の前には“嫌”な感覚だけが広く、拡がっていて。


ゆえに。當真はゆっくりと、歩みを進める。“嫌な”感覚が、歩みを進める當真の全身に纏わりつく。


だが、“それ”を気にすることなく、當真は扉に手をかける。


鍵などは一切かかっている“様子”もなく、赴くままに建物内へと入ること事もでき、そもそも“誰も”それを気に留める様子すらない。


(・・・このビルだけ、まったく“認識”されてないんだ・・・きっとこれ、“魔法”で・・・)


だが、“魔法”に“嫌われる”當真は、その“魔法”に“嫌われてる”からこそ、“認識”出来る。つまり、


(ここが、“正解”だ)



ビルの中に歩みを進める中で、當真の鼓動はこれまでよりも明確に早まっていく、そして、その一歩にはこれまでにない“確信”の感情が在った。


『きっと、ここにアルマが・・・ルームズが、いる!!』


當真はスマホを片手に、急ぎ早にメッセージを送ると、照明もまばらにしか点かないビルの中をゆっくりと進んでいく。


人の気配はまるでない。開かれたそのスペースは、外の喧騒とは対極的に、まるで“温度感”がなく、抑え込んだ當真の呼吸音ですら、耳にするのが容易なくらいだ。


ドラマなどでよく見るような、一階中央の受付デスクの近くには、このビルの案内図があり、各階のオフィスの名前が長々と陳列されている。


だが、そこには一切の目もくれず、當真は視線を上階へと移す。


『屋上スペースに・・・“ヘリポート”のマークある、よな?エレベーターは・・・二回経由すんのか。誰もいない、よな?』


周りを再度見渡すも、人の気配はない。向かうべき進路を確認する當真。


“そこ”までの道のりは、一度、上層階ギリギリまでのエレベーターに乗り、その後、屋上に向かう専用のエレベーターに乗り換えるルートであることを確認した當真は、周りを警戒しつつも一階のエレベーターへと足を運ぶ。


スイッチを押し、稼働するエレベーターの様子を眺めながら、深呼吸。


この“不可思議”な状況である事こそが、“正解”へと近づいている事を証明しているのだ。


當真はエレベーターが降りてくるまでの間に、“先”を見据え、思考する。


(陣内さんとワイダーさんには、この場所をメッセージで伝えた。俺はとにかく、アルマを“見つけ”、隙があれば連れ出す。ルームズが近くにいるようなら、とにかく時間を稼ぐ・・・出来る“全部”で、アルマを助けるんだ!!)


エレベーターが、一階まで降りてくる。當真は思考を整理し、扉が開かれると同時に乗り込もうと・・・



『うわっ!?びびった!!?』



エレベーターの扉が開いた瞬間、そこには先客・・・いや、“ナニカ”がそこに“いた”。


その“ナニカ”は、當真の腰元くらいの高さの、丸みを持ったロボットのような白い“物体”、いや、ファミレスなどに在るような自動配膳型の“ロボット”のような物体。


それが、エレベーターの中央に堂々と君臨していたのだ。思わず、當真も声を上げずにはいられなかった。


『何だ、これ・・・『ACR』?・・・“AUTO CLEANING ROBOT”・・・あ、“掃除ロボ”ってやつか?』


白い物体の胴体部に大きく印字されたロゴ、そしてその下の文字を読み、改めて目の前の物体を見返す當真。


印字された『ACR』のロゴの上には、細長いセンサーの射出口のような隙間もあり、そこから光センサーを利用し“空間認識”を行い、ゴミなどを把握。


“腕のような”部分にあたるホース上のノズルが、“掃除機”の役割を担っていることが想像でき、さらに足元部分は移動しながらも床のゴミを吸い込めるような作りになっていることから、四六時中全自動で稼働し、この高層ビル内を清掃しているのであろう。


『まあ、これだけでかいビルなら、こういうの何十台も使ってるんだろうな、きっと・・・』


『ACR』を避ける様に、エレベーターに乗り込もうとする當真。


だが、ふと、疑問がよぎる。


(・・・というか、こういう“ロボ”ってエレベーターに“乗る”もんなのか・・・?)


疑問、そしてまるで動く當真と目を合わせる様に、『ACR』のセンサー部分が、不気味に左右に動き出す、


まるで、當真を“排除すべき対象”であるかと見なすように。



ギギギギギギ、ガシャン



それは、『ACR』の、腕のようなホース上のノズルが、ゆっくりと、“當真”に向けられる音。


『なっ!!?』


そして、まるで大砲の“照準”を合わせるように、ノズルの先端が“銃口”の如く當真に向けられる、


次の瞬間、



バヒュッッッッッッッッ!!!!!



そこから放たれたのは、掃除機能の吸い上げる力を“反転”させ、一気に放出される、いわば“空気の塊”。


そして、當真のみぞおちに叩き込まれた“空気の塊”は、いとも簡単に當真の身体をエレベーター外へと弾き飛ばした。


『ぐはっっ!!!?』


数メートル程、吹き飛ばされた勢いそのままに、冷たいフロアを転げまわり、當真はゆっくりと立ち上がる。


だが、その思考は、自身が受けた衝撃の痛みよりも、混乱の感情の方が遥かに上回っていた。


視線をエレベーターへと向ける、機械音を鳴らしながら、猛然とこちらに向かってくる“掃除ロボ”をその目に捉えた瞬間、當真は“理解する”。


(確実に!“狙われてる”よな!?)


脳内で言語化するよりも早く、當真のすぐ側まで向かってくる『ACR』が、再び“銃口”の照準を當真に突き付ける。


『あぶっ!!な!!?』


バヒュッッッッッ!!!!!


『ACR』の光センサーの動きが、暗がりのビルの中だと鮮明に見えるのが幸いし、咄嗟に横っ飛びし、放たれた“空気の塊”を避ける當真。


だが、『ACR』も追撃の手を緩めない。機械音を鳴らしながら距離を詰めつつ、再びその“照準”をー


『そう何度も!!喰らって!!たまるかよ!!』


一歩早く、真正面から『ACR』へと駆け出す當真。その距離は瞬時にしてゼロに近づき、『ACR』が“銃口”を修正すべく、“一手”のアクションを入れた、その瞬間


ドッッッゴッッッ!!!!!


自身の腰元にしかない高さの『ACR』を足蹴にして、當真は勢いよく跳び越える。そして、着地と同時にそのまま向かうのは、開け放たれたエレベーターの扉。


『時間がないんだ!!お前に構ってる暇はー』



ガギリッッッ



その音は、何かが“壊れるような”、“異音”。


反応するように、思わず振り返る當真。その目に映ったのは、本来の可動域を“無視するように”、180度“銃口”を反転させ、當真へと“照準”を合わせる機械の姿だった。


『嘘、だろッ!!!?』


バヒュッッッッ!!!!!


放たれた“空気の塊”が、當真の背面に直撃し、その肢体を再び吹き飛ばす。


エレベーター近くの壁にぶつかる直前、かろうじて体を捻り、正面からの衝突を避けるも、そのまま壁に体を預ける様に叩きつけられる當真。衝撃が、全身に痛覚と共に走り抜ける。


『がっっ!?』


壁にもたれかかるようにその場に腰をつく當真。その状態での視線の先に、ちょうど『ACR』のセンサー口と同じくらいの高さになり、文字通り“目線が合う”。


ガガガッッ、ガギリッ・・・・バヒュッッ!!バヒュッッ!!!


再び、“銃口”の照準が當真に向けられ、放たれる“風の塊”の、“連撃”。


目に見えない“弾丸”を“見切る”事など、もちろん出来ない。“異音”の瞬間、當真は不格好にも自身の体を倒し転げまわるように横にずれる。


ボフッ!ボフッ!!っと、すぐ側の壁に“ぶつかる音”、そして弾けた風圧が當真の頬に流れる様に触れる。そして、近づく機械音と、再び鳴り始める“異音”。


(くっそ!!ひとつひとつは“致命傷”にはならなくても、こうも続け様だと“キリ”がねえし、“止まってる”と狙い撃ちされちまう!!)


視線をエレベーターの扉に向ける、だが一瞬でもそこに“留まる”リスクを考え、立ち上がり、その“照準”を定めさせないように走り出す當真。右往左往と一気に駆け抜け、その身を投げ出すように受け付け台のデスク裏へと身を隠す。


鳴り響く、機械音。近づく音で、その距離を捉えながら、當真は思考を走らせる。


(落ち着け、落ち着け!考えろ、あんな“意志”のある動き、どう考えても“普通”じゃないんだ。あれもきっと、ルームズの・・・)


そう、こういう状況だからこそ、“冷静”に“思考出来る”瞬間が在ることが、言葉にすれば簡単だが一番重要な“解決への糸口”となる。


『そりゃそうだよ・・・あんなの、“魔法”に決まってんだろ、當真 夜!?だったら俺に出来る事は一個じゃねえか!!』


一呼吸、そして自身の右拳を握りしめる當真。そして、制服の上着に手をかける。


近づく、機械音。その距離は、ほぼ2、3メートルの距離、万が一にも“照準”が合い“空気の塊”を放たれれば、當真には到底“躱せる可能性”はゼロだった。


當真は、息を呑む。後は、タイミングを見計らって・・・



ガガガッッッ・・・・!!ガギリッッ!!



瞬間。『ACR』は光センサーで捉え、“照準”を合わせる、


宙に放り投げられた“當真の制服の上着”に対して。


同時に、受け付け台のデスク裏から飛び出し、まっすぐと“掃除ロボ”に向かっていく當真。


ガガガ、ガギリッッ!!


“一瞬“にして、その“照準”を走り向かってくる當真へと合わせる『ACR』。


だが、この距離、その“一瞬”でも“十二分に間に合う”、當真がその“右手”を伸ばすには。



『お掃除を!!頑張ってくれ!!そうすりゃ“嫌い”になんねえからよ!!!』



“銃口”の“照準”を躱すように、スライディングして体を滑らせ、その“右手”を白の胴体に伸ばす當真。


『ACR』の“銃口”が當真の頭に触れる、當真の右手も同時に『ACR』の胴体へと“触れる”。


キィィィィィィィン


接触音が、静かな空間に伝播して、響きわたる。空白の時間、當真の“右手”には、“不可思議”な“熱”が伝わってくる。



ガ・・・・・・ガガガ、ガガガガ



機械音を鳴らし、動き出す『ACR』。壊れたノズルのような腕を引きずりながらも、當真の事を見向きもせずに、フロアを縦横無尽に“清掃”し始める。


ようやく、一呼吸。離れていく『ACR』の小さな背を見送り、座り込んだまま、自身の右手を見つめる當真。



(ここ、何回かで・・・分かってきたかも、俺の“魔法”の・・・“使い方”・・・)



改めて、當真はその“右手”を固く握りしめ、立ち上がり、制服の上着を拾い上げながら、その歩みをエレベーターへと向かわせる。


『とりあえず一番上まで行って・・・廊下の先で、屋上に続くエレベーターに乗り換えて・・・』


重力に逆らい上昇する浮遊感の中、その時間で“思考”を整理する。逸る鼓動は“近づいている”証、自分のすべきことを明確に・・・・・・


浮遊感の終わり、扉がゆっくりと開く。踏み出す一歩、そして



『・・・・・まじで、“何十台”も“いる”、じゃなくていいんだよ、“今”はさ?』



當真の目の前に広がる、暗がりの廊下。その景色いっぱい敷き詰められた『見飽きた』十数台の“白い物体”が、一斉に光センサーで認識するのは、エレベーターの中に佇む當真の姿。


『ふぅ・・・・・っし!!行くぞ!!』


“右手”を握りしめる、深呼吸、そして當真は、力強くその一歩を駆け出す。



届くまで、辿り着くまで、“見つける”まで。もう“迷う”ことはないのだから。



※※※


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