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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 2 : PAST, PRESENT, and FUTURE
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#17 ルームズ=アルシャロック②

「“全て”を“盗み”、“再現”する“魔法”・・・?そんな事って・・・」


繰り返す言葉と同時に、アルマの脳裏に蘇るのは、ここまでの数多の“不可思議”な景色。つまり、


「もちろん現実さ?アルマちゃんも、その“目”で見てきただろう?」


そう。どんなに“不可思議”で“非現実”で“非日常”であったとしても、目の前で起きたそれらは“現実”として、この世界に在ったものだ。


だからこそ、“否定”することは出来ない。


「でも、なんで“私”を?そんな“魔法”が使えるのなら、わざわざこうして私を連れて行く必要なんてー」


決して、“それ”は自分の身を案じて投じた感情ではない。アルマの中に生じたのは、“純粋”な“疑問”。


「んー。もう少し時間もあるし、アルマちゃんとはこれから“仲良く”しないとだからさ、詳しく教えちゃおうかな?僕の“魔法”のことも、“僕自身”のことも?」


「・・・“仲良く”?」


重さの無い“笑顔”を振りまきながら、アルマへと話し始めたルームズ=アルシャロックに対し、疑問を抱きながらも“探究心”が僅かに勝り、言葉の真意を深くは追求せずに聞き返すアルマ。


「僕の“魔法”はね、右手で触れた、人でも物でも、その万物全てを“盗む”ことが出来るのさ。そして、“再現”出来る。僕自身の中に“一度に”ストックできる数は、今のところ“百個”くらいなんだけどね。んー、じゃあ、とりあえず分かりやすく見せてあげよう」


ルームズ=アルシャロックは歩き出し、屋上スペースを囲う鉄格子のフェンスに、左腕を突き出す“添える”と、


「今、“僕の中”には、『身体を強化する』“魔法”がいくつかストックされていてね。まあ、どれも魔法レベルで言えば大差はない、単純な身体強化の“魔法”なんだけど」


そして、青年が謳う言葉によって、アルマの目の前の景色は、“変容する”。



「“部分再現(パート・リリース)”」



瞬間。ルームズ=アルシャロックの突き出した“華奢”な左腕が、目に見て分かる程に、筋骨隆々と“膨れ上がり”、“別人の腕”へと“完全に変容した”。



「こんな風に、ストックした人の“魔法”を、部分的に再現する事も出来るんだ」


「!?」



ガッッッ、グシャ!!



アルマの見つめる先、ルームズ=アルシャロックがフェンスに触れた“別人の腕”に力を込めると、瞬く間にフェンスの一部が“握り潰された”。


それは。到底、ルームズ=アルシャロックの“本来”の“華奢”な手では、想像もつかないような“破壊の現象”。だが、その“変容した左手”は、いとも簡単にそれを生み出した。


「“部分再現”は使い勝手はいいんだけどね、“魔法”の種類によっては、同時にいくつかの“魔法”を使う事も出来るし。でも、その分、“魔法”本来の威力や効果は“半減しちゃう”んだけどね?」


フェンスを破壊した“左手”を離し、ブラブラと振りながら不満げな表情を見せるルームズ=アルシャロックに対し、目の前の現実と、淡々と説明される“その魔法の脅威”に対し、アルマは言葉を失って見つめる事しか出来なかった。


(こんなの・・・まるで、“物語”の中にしか出てこないような、嘘みたいな“魔法”・・・)


「アハハ。すごい驚いてるね、その表情?でもさ、“まだ”だよ?」


「え?」


驚きを隠せないアルマに向き合うと、ルームズ=アルシャロックは自身に左手を向ける。そして



「“完全再現(フル・リリース)”」



瞬間、“淡い白光”がルームズ=アルシャロックを包みこむと、その左手を中心に、変容していく、『その全て』が。



黒のスーツが白色のタンクトップに破れた青のジーンズへと様変わりし、身長、体格、骨格、顔、ありとあらゆる身体全てが、華奢だったルームズ=アルシャロックの影など微塵も感じさせない程の“大男”へと“変容”した。



「これで、“盗んだ本人”を“完全”に“再現”。つまり、その“魔法”も、こうやってー」


ガラガラの声、口調。喋り出した“声”までも別人に“成った”、目の前の“大男”が、その屈強な“両腕”で、フェンスを掴むと



ガッッッッッ、バギギギギギギギギッッッッッ!!!!!!!!!!



そのまま掴んだフェンスを、“引きちぎり持ち上げた”。



「“完全再現”だと“100%”、“魔法”も“再現”できるのさ」



ドッッッッッ、ガシャァァァァァァァァァァァンンンンン!!!!!!



その“強面”に不釣り合いなほどの満面の笑みを浮かべながら、“軽く”引きちぎったフェンスを投げ捨てる“大男”・・・いや、ルームズ=アルシャロック。


そして、左手を再び自身に向け直すと、“淡い白光”を中心に、顔立ち、骨格の縮小、そしてみるみると体格が小さくなっていき、服装も黒スーツへと戻った、アルマの見知ったルームズ=アルシャロックの姿へと“変容した”。


「何なの、これ・・・」


「まあ、こんな感じかな。“再現”した“魔法”は“再現”が解けちゃうと使えなくなるから、必要ならまた“直接触れて”、“ストック”し直さなきゃいけないってのが、面倒なんだけどね?アハハ」


ルームズ=アルシャロックの薄っぺらな笑い声が、夜空の下に響き渡る中、アルマは目の前の“非日常”な現実を受け入れる事に、思考がまだ追いついていなかった。


アルマは、自身の『未来』や『過去』を“る”、その“魔法”も、この世界においては稀で、世界を十二分に変える可能性を持っている“自覚”はあった。


それゆえに、ワイダーが情報を管理し、極力外部にその“魔法”の所在が漏れないようにしたのも、善悪問わず、その影響の大きさを鑑みたが故の行動で在ったし、アルマ自身もその行動への“理解”はあったつもりだった。


だが。


その存在すら、“想像フィクション”のように“名”を世界中に轟かせていた人物が、現実、目の前でその“想像”すらも凌駕するほどの、“異能”であることを。彼は、その“魔法”を知らしめることでアルマに“証明”したのだ。


思考が情報を整理し、感情が追いついてくる。


それは、“恐怖”。今、この“異能”を目の前にして、自身が“捉えられている状況”が、改めて“恐怖”という感情によって、アルマの心を支配していく。


「どうしたんだい?そんなに“震えて”?」


「!?」


無意識で、体が防衛反応を、いや“拒絶反応”を示していたアルマに、ルームズ=アルシャロックは“変わり映えの無い”調子で、明るい声色のまま尋ねる。


その声、言葉によって生まれる“感情”に抗う様に、アルマは言葉を絞り出す。


「そんなに、すごい“魔法”が使えるあなたが・・・なぜ、わざわざ“私なんか”を連れて行こうとするのです?それにわざわざ私に“魔法”の話もする“理由”は・・・あなたの“目的”は、一体何なんです?」


「アハハ。だから、言ったじゃない?“理由”なら、“アルマちゃんと仲良く”なるためだよ?」


コツコツと、アルマの側に歩み寄るルームズ=アルシャロク。


そして、言葉とは裏腹に、アルマの側に寄り立つと、その右手でアルマの両手を縛るロープを“乱雑”に握り、そのまま屋上スペースまで“引き摺るように”アルマを移動させる。


その場に座り込むアルマの横に、視線を合わせる様に腰を落とすと、アルマの白に近い銀髪をその手で掴み、ゆっくりとアルマの視線を夜空へ向ける。


「痛ッ!?」


「アルマちゃん、見てごらんよ?夜空はとても綺麗だし、数えきれないくらいの“星”が、どこまでも広がっているよね?」


「・・・何をー」


「ねえ。この“世界”は・・・僕たちが生きるこの“世界”はさ、広いんだよ?僕はね、そこに在る“全部が欲しい”のさ?」


立ち上がり両手を広げ、夜空を見上げながら。ルームズ=アルシャロックは、謳う。



「この世界が紡いできた歴史、『過去』を象徴するモノも、“魔法”の在る『現在』における、冨も名声も“魔法”も、そしてまだ見ぬ『未来』の“世界”も。僕はね、この“世界の全て”を“盗み”、この手にしたいんだよ」



高らかに告げる、その調べは。ルームズ=アルシャロックという存在の、“全て”。



「僕の生きる“目的”は、それだけさ。『過去かこ』も『現在いま』も『未来みらい』も、ただただ“全て”が“欲しい”。そして、僕という存在だけが、唯一無二の“世界”になるのさ。アハハ」



これまでの軽妙な、明るいだけの声色の言葉とは違う、“拭いきれない重圧”を、アルマは感じ取り、全身を支配されていく。


「そ、そんなの、知らない!!それと私と、何の関係があるんですっ?!」


「関係大アリさ?“とある場所”でね、アルマちゃん、君の“魔法”の話を聞いた時に、僕の胸の鼓動は高鳴ったんだよ。『未来』が『える』、その“魔法ちから”が在れば、僕の“目的”の実現に、また一歩近づくってね」


ルームズ=アルシャロックはゆっくりと歩き出す。その背中を、その言葉を、息を吞むように聞き続ける事しか出来ないアルマ。


「そして君を探して。この国に来て。“情報”を手にした時に、驚いたよ。『未来』だけじゃなく『過去』も『える』ようになってるなんてさ。まさに“僕の為”の“魔法”じゃないかってね?」


振り返り、これまで見せたことない程に高揚し、高らかに声を上げるルームズ=アルシャロック。


「アルマちゃん。僕は君が“欲しい”のさ。僕の為に、これからの人生を生きてくれないかい?」


星空輝く夜空の下、ここまでの言葉だけを取れば、まるで物語のプロポーズのシーンような景色、


だが、


「もちろん衣食住も、君の好きなモノもなんでも“与える”よ?ただ君は、僕の側で“生きててさえ”いればいいんだからさ?イージーな“人生”だろう?アハハ」


軽妙で気味が悪い程に明るく薄っぺらな声で謳われる、その言葉も、この状況も、思惑も。


その全てが、“純粋な我欲”にだけ尽きた、『大怪盗』の言葉でしかなかった。



「・・・・・・けないで」


「ん?」


“震え”は止まっていた、“恐怖”を凌駕するほどの、“怒り”と“拒絶”を、アルマは言葉にして叫ぶ。


「ふざけないで!!あなたが欲しいのは私の“魔法”だけ!!好きなモノも与える?生きてるだけでいい?たとえどんなにイージーな人生で、あなたがどれだけすごい“魔法”が使えても、あなたと一緒にいる人生なんて、ちっとも“楽しく”ないわ!!!“クソくらえ”です!!!」


「!!」


両手を縛られ、自由に動き出すことも出来ない。それでも、その“青”と“赤”の『オッドアイ』で、目の前の大怪盗に最大限の敵意を突きつける少女。


見た目の印象からは想像もつかない程の、その言葉の怒気と迫力に、ルームズ=アルシャロックは思わずその表情に“初めて”本物の感情を見せる。


「アハハッ!!“クソくらえ”か!!そんなこと、初めて言われたよ!!アハハ・・・・・・」


左手で口元を抑えながら笑いを堪えるルームズ=アルシャロック。そして



「交渉は決裂、かな?まあ、君が“どうなろうと”、僕の物語の“結末”は変わらないし。“予定通り”、君の人生の残り“全部”、僕の為に“盗まさせて”もらうよ?」



ゾゾゾゾゾゾッッッッッッ!!!!!!



夜空の黒に妖しく光る“碧”の眼光、そして、感情のない薄っぺらな明るい声で告げる言葉が、再びアルマの全身を“恐怖”という感情で支配していく。


ルームズ=アルシャロックが、左手をアルマに向けて差し向ける。そして


「とりあえず。時間もそろそろだし、また“眠って”てもらおうかな?」


「!?」


どんなに抗おうとしても、変えられない“現実”。


ルームズ=アルシャロックが左手を自身に差し伸ばした瞬間に、たとえ“魔法”が使えなくとも、アルマは“希望のない”『未来』を、その目に容易に思い描く事が出来ていた。


そして、本能の赴くままに、瞳を閉じ、諦め・・・・・・



(・・・・・・え?・・・・・・何も、“起きてない”・・・・・・?)



ゆっくりと、“青”と“赤”の瞳で、目の前の景色を再び見つめなおす。


そこには、変わらず左手を伸ばしたルームズ=アルシャロックが、ただ、その“碧”の瞳が見据えるのは、アルマ



『ではない』。



その、さらに、“先”。




「・・・“君”の登場は、この物語の“結末”にはなかった『未来』だなあ?面白いじゃないか?アハハ」



薄っぺらな笑い声の中に僅かに見せた、ルームズ=アルシャロックの“苛立ち”。


その声の“先”、アルマはゆっくりと振り返る。


屋上への入口、開かれたその扉のすぐ側に。


少女の『オッドアイ』に映ったのは、クシャクシャの黒髪を春の夜風に靡かせ、荒い呼吸で息も絶え絶えな様子で


それでも、決して揺るがない意志を持って、この場所に辿り着いた、アルマの大切な“友達”のひとり。



「“かくれんぼ”は、俺の勝ちだな?・・・“アルマ、見ーつけた”!!」



『オッドアイ』の少女を巡る『かくれんぼ』の終わり、そして、少年の“非日常”の物語の続きが、ここでようやく紡がれ始めるのであった。


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