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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 2 : PAST, PRESENT, and FUTURE
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#14 Re:ハイド アンド シーク②

「とにかく、アルマが“いなくなった”事を証明できなきゃ・・・」


学校を飛び出すと、肌寒い春風は夜風に変わりつつあり、當真の視界に映る色合いもオレンジの色味より、黒の中に蛍光が反射する景色が多く映るようになっていた。


走り出したその足が、迷わず向かったのは、国立病院。つい最近まで當真が入院していた、そして、アルマが“今”帰るべき“ホーム”となっている場所でもある。


その道すがら、走りながら當真は自身のスマートフォンを手に取り、“三人“の人物にアクションを試みる。


一人は“頼るべき大人”、一人は“悪友”、そして、もう一人は“本物のワイダー”である。


だが。


「・・・・・だめだ、三人とも繋がらねぇ」


“頼るべき大人”、父親の友人でもあり當真自身とも顔見知りでもある“警察官”陣内じんない正蔵しょうぞうには、手短にここまでの経緯をメッセージにして送る。


警察自体が當真の話を信用に値しないと判断したとしても、陣内であればきっと何かしらのアクションは起こしてくれるはず、そして二之宮からの情報や連絡と“そこ”がマッチすれば、警察自体も動いてくれる可能性があるからだ。


そして、“悪友”である“口先から生まれた男”に関しては、この状況に置いて、當真にとっては“切り札”的な存在であった。


當真自身がその手段やルートを決して知る由はなかったが、彼が手にする“情報”は、どのようなものであっても、“一度たりとも間違った事がなかった”からだ。


それゆえに、當真の中の焦りや緊張感が一気に高まっていった。


「“こんな時”こそ、アイツの“情報”が頼りだったのに・・・くそ、言ってても仕方ねえけど、」


感情を少しでも落ち着かせるために、声に吐き出す當真。気がつくと、国立病院の目の前まで辿り着いていた。


「とにかく!まずは“本物”のワイダーさんを見つける!その上で、病院にアルマがいない事が証明されれば、きっと・・・」


病院の中へと歩みを進める、だが、時間から考えて面会などは難しいかもしれない。


そもそも病院内ではアルマはおろかワイダーとも接触した事がない當真は、アルマが入院している部屋の階数や、“どういう経緯”で入院しているのかさえも知らない。


思いつくままに病院に来てみたはいいが、始まりからすでに詰んでいるような、この状況。當真の中で焦燥感が加速していく中ー



「當真様?どうなさったのですか?」



その“声”に。


“聞き慣れた声”と、“空気感”に。當真は、心が少しだけ軽くなるのを実感する。


振り返る、そこには燕尾服の“老執事”、ワイダーが不思議そうな表情でこちらを覗き込んでいた。


「ワイダーさん!?良かった!!連絡も繋がらなかったから!!」


「連絡、でございますか?」


焦り逸る當真の言葉に、いたって落ち着いた様子で燕尾服の内ポケットからスマートフォンを取り出し操作すると、


「確かに、ご連絡いただいてたみたいですね。すみません、この時間はちょうど“お嬢様”のお出迎えをしておりましたので」


「待って!?“お嬢様”って!?“アルマ”が・・・『ここにいる』?!」


ワイダーの不思議そうな表情に対し、當真は“その言葉”によって一気に鼓動が早まる。


「・・・いらっしゃいますよ?當真様とパレット様が病院ここまで送り届けて頂いたのでは?今日は用事があるとの事で“アルバイトの報告”をまた後ほど連絡すると、“お嬢様”づてにお聞きしてましたが、ここにいらっしゃったので、私も驚いているのですが?」


(どういう、事だ!?)


當真の中には、最早“混乱”しか感情がない。ただ、目の前のワイダーのリアクションを見る限り、そこに嘘があるとも思えない。


この“不可思議”な状況。まるで、ここに至るまでの全てが、“夢”の中の“物語”だったかのようで。


「・・・ワイダーさん、“アルマ”のいる部屋まで、連れて行ってもらうことって出来ますか?」


當真のその“思いがけない”言葉に、ワイダーの表情が、一瞬、“淀む”。


きっとそれは、“お嬢様”を想い、これまで全てを懸けて行動してきたワイダーがゆえの、“防衛反応”に近い反応であろう。


ただし。目の前の少年の、まっすぐなその“瞳”から感じる“意志”と、そして短い期間であれ、自身の溺愛する“お嬢様”が“信頼を置く”にまで至った少年の、その鬼気迫る表情に対し、ワイダーはその“防衛反応”をすぐさま取り下げる。


ゆっくりと周囲に視線を向け、當真の側に一歩近寄ると、周囲へ聞かれないようにワイダーは声を潜め、


「・・・面会の時間は終わってますので、そこまでの時間は取れませんよ?」


當真に目配せをすると、そのまま振り返り、歩き出すワイダー。


當真も周りの視線をなるべく集めないように、平静を保ったまま、ワイダーの後に続いた。


混乱する思考をクリアにする為にも、実際にその目で見る事しか、この状況は解決しない。



この国でも有数の敷地面積を持つ病院なだけあって、當真はワイダーの後に続いて数十秒足らずで、自身がどの場所にいるのかは分からなくなった。


ただし、時間帯もあるだろうが、徐々に人の気配が少なくなっていくこと、そして行きつく先が、どことなく他とは違う“特殊”な病棟であることは、その空気感からも判断する事は出来た。


辿り着いたの、その目の前に現れたのは、厳重そうな自動扉。


扉の近くのセキュリティシステムへと、ワイダーがカードキーを差し込み、そのフロアへと入ると、そこにはいくつかの個室が並んでおり、手前から『六番目』の扉の前で、ワイダーはようやく立ち止まる。


「當真様、こちらが“お嬢様”のお部屋なのですが、本日、“お嬢様”はお疲れのようでして、夕食も食べずにすでにご就寝されております。それゆえ、どうぞお静かにお願いできますでしょうか?」


心臓の鼓動が、五月蠅く聴こえる程に、静まり返った病室の前。


「・・・分かりました」


當真の言葉を合図に、ワイダーはゆっくりと物音を立てないように。病室の扉を開ける。


そこに見える景色、そこは當真が入院していた病室ともそこまで造りは変わらない、見慣れた病室だった。


窓の側にベッドが一つ、二人が静かに歩み寄ると、まっすぐと仰向けになり、静かに寝息をたてて眠る、白に近い銀髪の少女、アルマの姿が『そこには在った』。


「ぐっすり眠ってらっしゃる・・・“いつも通り”の、なんと愛らしい“寝顔”でございましょうか」


“お嬢様”の寝顔に、すぐさま“溺愛ジイヤ”の表情を浮かべるワイダー。


その隣に立ち、ただ、當真は目の前の“お嬢様”に近づいた瞬間、


胸の内に、騒めくような、“イヤ”な感覚を感じ取った。


付き合いが数日とは言え、過ごしてきた時間も、自身の目も、そして隣には長年“お嬢様”に連れ添ってきたワイダーもいて。


その全ての状況が、目の前の少女が、探していた“お嬢様”だと謳っていて。


(どう見たって、アルマ本人としか・・・やっぱり、俺が、“夢”でも見てたっていうのか・・・でも)


だが、混乱の思考の先。胸の内の“イヤ”な感覚が、當真の全身へと。ゆっくりと巡っていく。



一呼吸。“だからこそ”、當真は自身のその“感覚”に、“迷わない”。



「ワイダーさん、すみません!!ちょっとだけ、失礼します!!」


「っ!?當真様、何をー!?」


ワイダーが驚き、一瞬生まれたそのタイミングで、迷うことなく當真は右手を目の前で眠る少女の頬へと伸ばし、そして、“触れる”。



瞬間、當真の指先に伝わる“熱”。それは、体温ではない、“不可思議”な“熱さ”。



そして、當真が指先で触れた場所から、その“熱”は徐々に、目の前の“お嬢様”の姿を“変容”させていく、


「っ!?これは、一体!?」


違う、正確には、“魔法”に嫌われる當真が触れたことで、“お嬢様”に“再現”されていた“その魔法”が目の前の少女から“嫌われて”いったのだ、


つまり、そこに現れたのは、姿形が、容姿、その“全て”が、まるで“見知らぬひとりの少女”。



「“魔法”です、“アイツ”の・・・“この子”は、アルマじゃない」


驚愕と疑念が限界値を超えたような、ここまで見たことない程に、その表情が青ざめていくワイダー。


何度もその目を両手で擦り、そしてベッドに横たわる“見知らぬ少女”を再確認する。


「そんな・・・まさか、私が“お嬢様”を“見間違える”なんて・・・ありえないです、“見た目”だけならまだしも、病院に戻られてからの言動、所作、声、その“全て”は“完全”に“お嬢様”でした・・・」


そう、“だからこそ”、當真にとって、それは“脅威”の証明になる、


近しい人間の目や耳、そして心さえも簡単に欺くほどに、“完全”に“再現”されていた、その事実によって。


そして。全てを欺くその“魔法”によって、アルマがいない事が、今、當真の目の前で“証明”された。


(やっぱり“夢”でも何でもなかった!!あれは“現実”で・・・)


その“証明”は、“確信”を生む。


フラッシュバックするように、学校での景色が鮮明に當真の脳内に浮かび上がり“輪郭”を帯びていく。


目の前で眠る“見知らぬ少女”ではなく、空想フィクションの物語のような『怪盗』の手によって、間違いなく連れ去られたのは、『オッドアイの少女』で・・・



その『少女』を想い浮かべた瞬間。ある景色が、ある『言葉』が、當真の中に反響する。


そして、『理解する』。



「・・・“た”んだ、アルマは!『未来』を!!」



「當真様、一体・・・これは・・・」


當真は動揺するワイダーに対し、二之宮の連絡先が書かれたメモ用紙を急ぎ早に手渡すと、


「ワイダーさん。その連絡先、俺の先生です。アルマの“魔法”の事は話してませんけど、“事情”はだいたい話してます。それで今の“この状況”も含めて、“二人”で警察に話してください!!あと、“陣内”という警察官に繋いでもらえれば、きっと分かってもらえるはず!!“大人”であるあなた達“三人”の話なら、きっと警察も動くはずだから!!」


窓際の、黒に染まる景色と、月明かりを目にし、當真は逸る気持ちを抑えながら口早にワイダーに“指示”をする。


それは、ある“言葉”を思い返したからだ。


“アルマがいない”事実が“証明”された今、當真はもう“迷うことなく”、一歩を踏み出す。


「當真様、あなたはー」


「俺は、俺に出来る事をします!!“探さなきゃ”!!!」


ワイダーの言葉を聞き終えるよりも早く、病室を勢いよく駆け出す當真。



思い返されたのは、気を失う直前にアルマが當真に伝えた、『未来ことば』、



そう、ルームズ=アルシャロックがいる『未来』の景色だったのだから。



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