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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 2 : PAST, PRESENT, and FUTURE
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#12 オッドアイの少女④

夕暮れも近づく頃合い。


教室の扉の前に立っていたのは、三人もよく知る“老執事”だった。


ただし、驚いたのは“そこにいる”という“事実”。


アルマにとって近しい人間は、その“魔法(ちから)”によって、近い『未来』の行動は“全て”アルマにとって“えて”いたはずだった。


思わず。當真とパレットは振り返り、アルマへと視線を向ける。


もちろん。その表情は、當真やパレット“以上”に困惑の表情、そして“疑念”に満ちた表情になっていた。


「・・・アルマ?」


當真の声に、ゆっくりとその歩みを進めるアルマ。


「なんで・・・ワイダーが“学校ここ”に?朝、“眼た”『未来』で、あなたがこの場所にいる『未来』なんてなかったはず・・・確か、今日は・・・」


言葉を口にしながら、思い返すようにワイダーに視線を向けるアルマ。


そして、“何か”を思い出したように、“気づいた”ように、その表情が徐々に“硬く”なっていくのを、當真は見過ごさなかった。


咳払いをひとつ、扉のすぐ側に立つ“老執事”が、口を開く。


「それはもう、必死に探したからでございますよ?私の想いが『未来』を変えてしまったのでしょう?“アルマ様”?」


至って冷静に言葉を並べる“老執事”。だが、どこか“違和感”が・・・


「ま、まぁ、でも、ワイダーさんで良かったんじゃない?アルマとしては今日の『かくれんぼ』は“見つかった”かもだけど。この際、ワイダーさんにもちゃんと“理由”を話せばさ、明日からもー」


張りつめた空気を見かね、當真が手振りを加えながらフォローの言葉を口にする最中、アルマがゆっくりと當真とパレットの側を通り過ぎ、そして“老執事”の前で立ち止まると、スッと、“左手”を差し出し、


「・・・・ごめんなさい、ワイダー。“心配”をおかけして」


アルマのその言葉を受け、“老執事”も小さく会釈をしながら、アルマの“左手”を掴むと、


「いえいえ。“アルマ様”の執事ですから、心配するのは当然でございますよ?」


ゆっくりとその“手”を離し、アルマはそのまま“左手”を自身の“右”の“青”の瞳を隠すように添える。


「・・・?」


不思議そうに。アルマを見つめ返す“老執事”。


当然だ、彼は“ソレ”が、何を意味するのかを“知らない”のだから。



次の瞬間。



アルマが勢いよく振り返る。


その狭間で、今度は“右手”で自身の“左”の“赤”の瞳を隠すようにしながら、“青”の瞳はまっすぐとパレットに向けられていた。


「だめ!!パレット!!ナイトも!!“逃げて”!!!!!」


「え?」


アルマの叫び声、困惑するパレット、状況がまるで飲み込めない當真。



ガシッッ



それらと“ほぼ”同時。


當真の視界に入って来たのは、振り返るアルマの右手を、その背後から“乱雑”に掴む“老執事”の姿だった。


そして、そのまま“左手”を、當真とパレットに差し向けると



「“部分再現(パート・リリース)”・・・“深き眠りを(グッド・スリーパー)”」



“老執事”の言葉と同時に、その左手から“淡い白の光”が、當真とパレットの二人に向けられる。


その“淡い白の光”は瞬時に、當真とパレットを包みこみ、當真は咄嗟に両腕を交叉させ防御姿勢を試みるも、その行為は“まるで無駄”となった。



ドサッッ、ガタンッッ!!



その“異音”に気をとる余裕もない程に、當真は自身の頭の周りが、そして視界が急激に“重く”なるのを感じる、まるで意識が“遠のいていく”ような・・・


當真は“堪え切れず”、膝を立てる様にしゃがみ込むと、すぐ隣では無抵抗なままうつ伏せになり倒れ込むパレットの姿が、その視界に入ってきた。


「パレット!!?ナイト!!!?」


「・・・・・んだ、これ・・・?!」


意識が朦朧とする、だがどこか“居心地の良さ”に侵食されていくような感覚に陥る當真。


まるで“深い眠り”に導入される直前のような・・・


當真の意識が薄れゆく、アルマの叫び声だけが、無情にも響き渡る。


「離してッ!?パレットとナイトに何をしたの!?」


「ご心配なさらずとも、少し“魔法”で“眠って”もらっただけですよ?“半日”もすればちゃんと目は覚ましますので、ご安心を。“アルマ様”?」


眠った・・・?


當真はゆっくりと、その視線を倒れ込むパレットへと向ける。確かに、静かに呼吸するパレットの拍動が目に見えた。


しかし、この“不可思議”な“状況”には、まるで理解が追いつかない。


そして、いまだ朦朧とする意識の中、そこに抗いつつ“老執事”に向けて、言葉を投げかける。


「な・・・なんで、“こんな事”・・・を?ワイダーさん?」


「おや?まだ“眠り”におちてないのですか?おかしいですね、“魔法”はしっかりと『再現リリース』したはずですが?」


「・・・リ、『再現リリース』・・・?」


「ナイト!!“違う”!!この人はワイダー『じゃない』!!!」


「・・・え」


その言葉の真意は分からずとも、當真の脳内に間違いなく届ききるだけのインパクトが、アルマの叫びにはあった。


「・・・・・“アルマ様”、何を仰ってるのか分かりかねますが?私は、あなたの執事のワイダー、ですよ?」


「ワイダーは!!“私以外の人がいる”場所では、私の事を“名前”では呼びません!!“お嬢様”と呼ぶのですよ!!」


「!!」


それは、當真が感じた“違和感”に繋がる、アルマのアンサーであった。


そう、當真自身も一度たりとも、その“老執事”の口から『アルマの名前』を聞いたことがなかったからだ。この、教室での邂逅の直前まで、“一度たりとも”。



「それに!!あなたの『過去』を“”ましたけど、その景色の中は、“見たことないような景色”ばかりでしたし、少なくとも“今日この瞬間”まで、あなたがナイトやパレットに『出会った過去』の景色は“えなかった”!!あなた、一体、“誰”なんです!?」



必死に、掴まれた右手を払おうとするも、びくともしない“老執事”を睨みつけるアルマ。


その言葉に、當真の中に在る“イヤな感覚”が加速度を増していき、焦燥感と緊張感が自身を包み込んでいく。


“老執事”はアルマの言葉、反応を“見下ろしながら”聞き入れると、ゆっくりと左手で自身の顔を覆う。



そして



「・・・アハハ。凄いなあ。素晴らしい推理だ。それに“情報”通り・・・半信半疑だったけど、『未来』だけじゃなく『過去』も『れる』“魔法”なんだねえ。“期待”以上だよ、『アルマちゃん』?」



声色はそのままに、ただし、その左手を外し、軽やかに言葉を告げる“老執事”は、その口調も表情も『全てが“本人”そのもの』であるのに、“そこ”に當真は強烈な“嫌悪感”を感じ取っていた。



「・・・アルマから、はな、れろッ!!」



朦朧とする意識を無理矢理に払いのけ、當真は一歩を駆け出す、目の前の“老執事”に向かって。



だが



「アハハ。そうだった、君、『“魔法”に“嫌われる”』んだっけ?だから“深き眠りを(グッド・スリーパー)”も効かなかったのかなあ?じゃあー」


當真の一歩が届くよりも早く、“老執事”は“左手”を當真に差し向ける。そして



「“部分再現(パート・リリース)”・・・“無限大気インフィニティ・エアー”」



“言葉”と同時に、當真は、“老執事”の“左手”、そして腕を伸ばしたことで燕尾服から覗かせた、その“左手首”一体全てが、“白く、か細い”、まるで“女性”の“左手”のように“様変わり”する“不可思議な現象”を目の当たりにする。



「!?」



パチン。



“老執事”が、その“左手”から指音を鳴らした、瞬間。


當真は、自身の視界が急激に下方、いや、教室の床に“強制的に”向けられる。まるで、頭上から膨大な“重力”の物体を叩きつけられるような、まるで“大気全て”に圧し潰されるような



ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギッッッッッ!!!!!



「がっ!!!!???」


不快な異音。同時に、當間は、うつ伏せでその場に突っ伏させられた。まるで力を入れる事など許さない程に、圧倒的な“重力”が、當真の全身に覆いかぶさっていく。


「ナイト!!!?」


(・・・なんだ、“コレ”!?“魔法”か?・・・いや、だとしても、“なんで”?!)



圧倒的“窮地”、だがその最中で、それ以上の“疑問”、



それは、この“魔法”の在る世界で、“魔法”が使える者、魔法使役者(マジックホルダー)における『絶対的唯一の法則』、すなわち、『“魔法”は“ひとりにひとつ”』という法則を“完全に無視する”、“異なる“魔法”を二つ”使った事に対して、だ。



(ありえない・・・そんな話、聞いたこともない・・・一体、どういう・・・)



疑念による“混乱”、そして圧し潰されている“窮地”。ありとあらゆる現状が、當真をジワジワと覆い詰めていく中、“老執事”の声が高らかに響き渡る。まるでこの現状を、“楽しむ”かのように。


「アハハ。“部分再現(パート・リリース)”だから“半減”してるはずなのに、凄い威力だなあ?これなら、“嫌われて”ても、君の意識を“奪う”くらいなら十分だなあ」


必死にその“不可思議”な“魔法チカラ”に抗うも、アルマと“老執事”に向かって、視界にギリギリ捉えるほどにしか顔を上げられない當真。


そんな當真を、軽妙な表情で見下ろし、アルマの手を掴んだ右手を離すと、すぐにそのまま首から抱え込むようにアルマを捕縛する“老執事”。


その行為は、これまで當真が抱いていた、“アルマを想うワイダー”の姿からは程遠い扱いであった。


「でも“再現リリース”しちゃたから、また“ストック”させてもらわなきゃだなあ。“僕”の“お気に入りリスト”にも入れるくらいだよ、この“魔法”。・・・いいなあ、全部“欲しい“なあ」



ゾゾゾゾクッッッッ



その言葉尻に放つ“嫌悪感”。


當真は全身を“悪寒”が駆け巡るような感覚と、自身を覆う“重力”がより一層負荷を増していく感覚に陥った。



「・・・お前、“何者”、だっ・・・?!」


必死に“口撃”を放つ、當真。現状に“抗える”全てが、それしかなかった。


そして、その言葉の終わりと同時に、見上げた視界の“変化”に気がつく。それは、側で抑え込まれ苦しむアルマの“眼”にも、しっかりと見て取れた。その先の『未来』に訪れた、“不可思議”な現実を。



“老執事”、“ワイダー”の顔が、そして、燕尾服含めた全身その姿、“その全て”が、言葉通り、“変容していく”、



「あ。“部分再現(パート・リリース)二つも”使っちゃったから、流石に“完全再現(フル・リリース)”してた、“この人(ワイダー)”の『再現』も解けちゃってるなあ。しまったしまった、アハハ」



その“声”も、もはや“老執事”の“モノ”ではない。一気に若返ったような、声量に、高さ。気味が悪い程に“薄っぺらな明るい”声色。


燕尾服は、着崩した黒のスーツへと様変わりし、“老執事”ワイダーのように畏まった様子など皆無。その骨格も、ワイダーとは違い、細身で高身長、だが猫背で気怠そうに佇む姿へと、だがアルマを掴むその右腕は力強く、抵抗するアルマをしっかりと抑え込んでいた。


そして、その顔は、年老いた“老執事”とはまるで違うほどの、若い青年の姿に変わる。その白い肌感、ハリ、艶めき、全てがワイダーのそれと比較にならない程の“若さ”を見せつけていた。


ワイダーの白髪とは対称的に、漆黒のように黒い髪は肩にかかる程に伸び切っており、ただその端正な顔つきと相まってか、独特の“色気”を醸し出している。


そして、その瞳は、軽妙に話す口調や笑い声などと違って、一切の“感情の死んだ”、“碧”の両の瞳。



そこに現れたのは、ワイダーとは“別人”、いや“完全なる別人”の青年の姿が、そこには在った。



「「・・・・・・?!」」



あまりの“不可思議”な状況に、當真もアルマも言葉を発する事も出来ない、理解が到底追い付かない。



だが。そんな事などまるで気にも留めず、現れた黒スーツの青年は、明るく言葉を謳う。



「顔は、なるべく見られたくなかったんだけどなあ。でもまあ、この顔も“ホンモノ”じゃないんだけどね?アハハ」


そして、黒スーツの男は、感情ゼロの“碧”の瞳で、まっすぐと當真を“見下みくだし”ながら、



「えっと。“何者”か、だっけ?うーん、知ってるかな、君?・・・『百の“顔”を持つ男』」



「・・・百の、顔・・・?」



告げる。その、世界中に知られているであろう、彼の『真名』を。



「僕の名前は、『ルームズ=アルシャロック』。この世界の“全て”を盗む、“今世紀最後の大怪盗”とは、僕のことさ?アハハ」



そう、その“名”は。この世界に轟く【S級魔法犯罪者(マジカルクライシス)】の“顔”と成っている、“名”。



「・・・ルームズ、って、“あの”・・・」



パチン。



當真の言葉を遮るように、再び鳴り響くルームズ=アルシャロックの左手の“指音”。


途端に、當真を覆い尽くす“重力”の勢いが増していく。


「っっっ!!?あああああああああああああ!!!!!」


「もうすぐこの“魔法”の『再現』も“終わっちゃう”からさ、君、そろそろ“オチて”てね?アハハ」


ルームズ=アルシャロックの言葉と同時に、全身への負荷がさらに加速し、當真の意識が徐々に薄れ、遠のいて



「ナイト!!『夜』、『海』の『近く』、『赤いタワーと月が重なって見える、高くて、広い場所』ッ!!!!!!」



「アル、マッ・・・?!」



ルームズ=アルシャロックが視線を、声を荒げて叫ぶアルマに向ける。と、その右腕に抑え込まれながらも、自身の“右手”で“左”の“赤”の瞳を隠し、まっすぐとルームズ=アルシャロックを『』つめ叫ぶアルマの姿が、そこには在った。



ほんの、一瞬の間。だが、特に気にも留めず、ルームズ=アルシャロックは、視線を當真に戻し、左手を再び差し向ける。



「じゃあ、君とはお別れかな?バイバイ、もう二度と会う事はないだろうけどね?アハハ」



パチン。



軽妙な、気味が悪い程に薄っぺらな“明るい笑い声”と、再び鳴り響く、不快な指音。



その音の調べたちを最後に、當真の視界と意識はブラックアウトし、“何も”見えない『未来』への景色へと辿り着いたのであった。


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