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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 2 : PAST, PRESENT, and FUTURE
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#11 オッドアイの少女③

「・・・“というワケ”で。今週のみ、“家庭の事情”でこの国に来ている『アルマちゃん』と、當真くんの“遠い親戚”である『パレットちゃん』が、この国の学校の体験入学という事で、このクラスのクラスメイトになりました。急遽決まった事なので、私もびっくりしてますけど・・・でも、『異文化交流』出来るいい機会なので、みなさん仲良くしてあげてくださいねー!」


騒めく教室に響き渡る、困惑の感情もある中での愛らしい声色。


教壇に立つ小柄な教師、二之宮 愛理(にのみや あいり)の隣には、同じくらい小柄な少女が二人。


『異文化交流』の名のもとに、“金色の少女”と“オッドアイの少女”、二人の“異国”の美少女がクラスメイトになるとあって、教室中のいたる所から歓声が上がる、


“ただひとり”、當真 夜を除いてだが。


「みんな。よろしくなんだよ!」「みなさん、どうぞよろしくお願いしますね」


天真爛漫なパレットの笑顔に、上品あるアルマの微笑み。その愛くるしさや可憐さに、沸き立つ男子クラスメイトと、一部の黄色い歓声を上げる女子たち。



パチン。



二之宮が指を鳴らすと、黒板のレールに置かれていたチョークが、“不可思議”に宙を舞い、そして二之宮の手元に行き着く。


「はいはーい。みんな、静かに。授業始めますよ?二人は當真くんの後ろに席を用意したから、そこに座ってね」


「わー。『物を自在に動かせる』“魔法”なんだね。ニノミヤ先生は。」


二之宮の“授業開始の恒例のパフォーマンス”にパレットは感心しつつ、アルマと共に急遽用意された席へと歩みを進めるも、その道中もクラスメイト達の視線は二人に釘付けとなっていた。


パレットとアルマの二人はそのまま、當真の後ろに用意された席に並んで座ると、そこから見える異国の学校の教室の景色を、楽しむようにキョロキョロと眺めていた。目の前で動揺し、授業の終わりと同時にクラスメイトに詰め寄られる『未来』を想像して頭を抱える當真の事など、まるで気にも留めずに。


(・・・なんで、こんな事に・・・というか、アルマが朝いきなり“言い出した時”はびっくりしたけど、“体験入学”なんて、こんなスムーズに出来るもんなのか・・・この学校、自由過ぎでは・・・?)


週明けの月曜日。


當真がパレットを国立病院近くまで送り届け、“かくれんぼ”を今日も開始し、ワイダーとお手伝いさんの目を搔い潜ったアルマに合流させると同時に、アルマが告げた、この“体験入学”の提案。


そのまま流されるままに、當真の学校まで辿り着くと、担任の二之宮も混乱する程にスムーズに事は進んでいき、ここまでに至ったのである。


(それに、きっとこれ、休み時間は質問の嵐だろうな・・・パレットももちろんだけど、アルマの事も含めて、“ボロ”が出ないように、俺が気をつけなきゃだし・・・はぁぁ)


二週間近くの入院生活から退院したインパクトも掻き消され、さらには気を遣い続ける時間しか待っていない『未来』を思い浮かべ、當真は深くため息をついた。



そして。授業終わりの、最初の休み時間。



授業の終齢と同時に、當真、そしてパレットとアルマの席の周りにクラスメイトの輪が集まると、口火を切ったのは、もちろん“あの男”だった。


「はっはー。パレットちゃんとアルマちゃんは、どっちがナイトちゃんの『ガールフレンド』なんだい!?」


「初手から何を聞いてんだ!?どっちも違うわ!!春色はるいろ!!」


長閑 春色(のどか はるいろ)。長身で金髪の糸目、その飄々とした物言いで、このクラスの“切り込み隊長”及び“問題児の中心”を担う、通称“口先から生まれた男”。當真の“悪友”のひとりである。


その場を自然と繕う様に、當真は“あらかじめ決めておいた設定”を口にする。


「パレットは、と、遠い親戚だし、アルマは、その、親父の“知り合い”の子、だよ!?てか、HRホームルームで二之宮先生も説明してただろ?」


「はっはー。アイリちゃん先生の話より、ふたりの“かわい子ちゃん”を見つめるので必死だったんだぜぃ!!」


「え?かわいい?えへへ。そうでしょ?わたし、かわいいでしょ?(にこにこ)」


「あら?ありがとうございます」


「・・・お前はそういうヤツだよな、春色、うん、知ってた。・・・あと、春色は女の子だったら誰にでも“甘い”んだから、パレット、あんまり真に受けんなよ?」


「はっはー。ナイトちゃん、手厳しいんだぜぃ!さっすが我が大親友!!」


「・・・ないと、なんで“わたしにだけ”言うんだよ?アルマは?アルマは可愛いって、ないと実際に思ってるから、忠告しないんだねきっと?ぷんぷん!!」


飄々と騒ぎ立てる長閑、そしてジト目で敵意を向けてくるパレット。思わず當真は、大きくため息をひとつ。


(はぁ・・・めんどくせえな、コイツら)


決して人当たりが悪いわけでもなく、どちらかと言えば“繕う他人行儀”は得意な當真だが、長閑やパレットの前では“ありのまま”の感情を曝け出しており、そんな“外向きではない”當真の様子をパレットの隣で眺めながら、アルマは思わず微笑みを浮かべた。


「ふふふ」


そして長閑の質問をきっかけに、三人を取り囲む輪のいたる所から、興味津々のクラスメイトの質問の波が押し寄せてくる。


「二人はどこの国から来たの?」


「好きなタイプはー」「彼氏いるのー」「二人の服装って独特だよね?どこのー」「なんで日本語話せるの―」・・・etc。


質問は尽きないまま宙を飛び交い、その一つ一つの処理に追われることにゲンナリする様子の當真と、その場の雰囲気にあっという間に溶け込むパレット、そして“この状況”を“楽しんでいる”アルマといったように、三者三様であった。


「わたしはね。英国出身なんだよ?」


「イギリスガール!!はっはー!!お洒落!!キュートでお洒落なんだぜぃパレットちゃん!!」


「私は・・・そうですね。どこの生まれなのかは“秘密”にしておきましょうか?ぜひこの一週間で当ててくださると嬉しいわ」


「はっはー!ミステリアスなんだぜぃ!そういうところも可愛らしいんだぜぃ!!アルマちゃーん!!」


「いや。合いの手がイチイチうるせえんだよ、春色?」


悪友のリアクションに冷静にツッコミを入れつつも、パレットやアルマの言葉尻に“ボロ”が出ないように、聞き耳を立てる當真。


そんな中、取り囲むクラスメイトの輪からは、こんな“疑い”もー


「そういや、二週間前くらいに“不法入国者”がどうとかってニュースあったけど、もしかしてアルマちゃんがそうなんじゃない?(笑)」


思わず。當真とパレットの表情が、一瞬固まる。


その発言をしたクラスメイトは、もちろん冗談のつもりだし、その“真実”の事はまるで知らないであろう。


だが、當真とパレットは、“当事者”として“知りすぎている”事がありすぎる。


「え・・・あ、そ、そんな、ワケ、ないんだ、よー?あは、はは、」


分かりやすく動揺する“パレット”。融通が利かせる、機転を利かせる、“そうした行動”以前の問題で、この金色の少女は『ウソがつけないのだ』。(本人曰く“素直”らしいが)


特に意識するでもない、些細な一連の会話の流れであればいいところを、パレットの“分かりやすい”リアクションは、“明らかに”目立つ。


自然と、クラスメイト達の視線がパレットと、そしてその“余波”でアルマにまで注目が注がれて・・・


(どれだけ棒読み!?分かりやすく目も泳いでるし!!やばい、なんとかー)



「あら?そのニュースが私なら、分かりやすい“特徴”がニュースになると思いますよ?ほら?“見て”?」



アルマは両手の人差し指をそれぞれ、自身の両の瞳に向ける。図らずとも、そのポーズと、アルマ自身の上品な“可憐さ”が相まって、意図しない“あざとカワイイ”ポーズになってしまう。


パレットの“下手なリアクション”も、當真の“焦り”も。“そんなもの”一瞬で消し飛ばす程の“カワイイ”の破壊力。その場の全員が、瞬間で胸を撃ち抜かれたのは言うまでもない。



そして、ひとりの女子クラスメイトの声が、輪の中から跳んでくる。


「でも!ほんとに!!アルマちゃんの瞳、綺麗な色のオッドアイよね!!」


会話がスムーズに“転換”されたこのタイミングを、“やらかした”パレットは挽回するように会話を広げようと試みる。


「そうなんだよ!!それにアルマの凄い所はね!!“みらい”と“かこー」


ゴンッッッ!!!!


「ぐへぇ!?」


(コイツ!!?今、堂々と大勢の前でアルマの“魔法”について話すつもりだったよな?!)


“我ながら抜群のタイミングでの素晴らしい判断だった”と、男女平等チョップにてパレットの“ボロ”を食い止める當真。


當真とアルマはこの“状況”が“危機を回避”したと理解しているが、一方で、周りを取り囲むクラスメイトからすると、いきなり當真がパレットの頭をチョップした“不可思議”なその状況に、各々が困惑の表情を浮かべていた。(パレット自身は理解しておらず、“ポンコツ”っぷりをその表情に浮かべて當真を睨んでいた)


「はっはー!ナイトちゃん、急にどうしたんだぜぃ?パレットちゃんも“何か”言いかけてー」


春色の言葉に、周囲の“疑いの目”にも気がつく當真は、口早に春色の声を遮る。


「あー!!その!!ほら?みんなもいろいろ聞きたいことあるだろうけどさ、もうすぐ休み時間も終わって授業始まるし、続きはまた次の休み時間ってことで?な?」


タイミングよく、予鈴が鳴り響き、ひとまずはその場を乗り切る事に成功した當真は、次の授業の準備に手を掛けるまでもなく、パレットにすぐさま説教を行った。


だが、結果として。この後の半日近く続く“体験入学”の最中に、パレットに対し男女平等チョップが幾度となく発動し、當真が気苦労で困憊した話は、また追々語るとしよう(そんな機会があればだが)



時は進み、ようやく放課後。



「どっと疲れた・・・なんなら入院中よりも疲れた・・・」


迫りくる質問の嵐を一日中耐え続け(主にパレットのフォロー)、ようやく他のクラスメイト達が帰りつき、春の夕暮れ前の日差しの中で静寂に包まれた教室の中で、當真は自身の机にもたれかかるように項垂れていた。


「ないと。久しぶりの学校だからって張り切りすぎなんじゃない?」


「・・・主にあなたのフォローで忙しかったんですけど?パレットさん?」


「あとさ。この国の学校、授業とかはとっても新鮮で楽しかったんだけど。食堂のお昼ごはんは、ちょっと少ないよね、ないと?」


「いや。ラーメンとカレー食べて、購買でパン二つ買って食べてたよね?まだ足りないの?どういう事なの?」


「ふふふ。ほんとに仲がいいんですね、ナイトとパレットは」


當真とパレットの“いつも通り”の“日常”の景色を眺めながら、アルマは嬉しそうに話し始める。


「でもほんとに楽しかったですわ!やっぱり国によって学校の授業の雰囲気も全然違いますし、食券を買うシステム?食堂?というのも、私、初めてでしたし。いつもはワイダーが用意してくれるものばかりでしたから、とっても新鮮でしたわ!それにクラスメイトのみなさんもたくさんお話ししてくれて!明日はカラオケ?というものにも連れて行ってくれるみたいですし!はー!とっても“楽しい”一日でしたわ!」


まるで大々的なイベントを体験したかのように、少し興奮冷めやらぬ様子で早口で話すアルマの、その“楽しそう”な様子に。


當真とパレットは顔を見合わせ、アルマにつられるように笑顔になった。


「朝、聞いた時にはびっくりしたけど、アルマが“楽しそう”なら良かったよ。まぁ、パレットは明日に向けて反省会だけどな」


「反省会・・・うん。明日はお弁当も持ってこなきゃー」


ゴンッッッ!!!!


「ぐへぇ!?」


「そうじゃねえよ?」


「ふふふ。・・・“一週間だけ”ですけど、ほんとに、お二人とお友達になれてよかったな・・・」


“楽しい時間”の、笑顔の先に。


だが、これが二人にとっては“仕事”に繋がっていることも、そして自分自身も週末には再び“転院”して、この国を離れる事も。その『未来』を誰よりも自覚していたアルマ。


それゆえに。紡ぎ出す、その言葉に。少しだけ“憂い”を帯びてしまった理由は、訪れる『未来』での“別れ”を想像してしまったから・・・



ポンポン、と。



少し俯きかけたアルマの、白のバケットハット越しに頭の上から、當真は優しくアルマをたたく。


「え?」


「勝手に『未来』で“終わらせる”なよ?これから先も、どこにいたってさ、もうずっと“友達”なんだよ?俺たちは?」


「そうなんだよ?それに今日もまだ『病院』に戻るまで時間もあるし?たくさん一緒に“かくれんぼ”するんでしょ?アルマ?あ、このあと“おやつ”、食べに行く?」


「ナイト、パレット、ふたりとも・・・ありがとう」


二人の“変わらない”笑顔と、その“言葉”に。アルマはもう一度、“いつも通り”の愛らしい笑顔を二人に見せるのであった。


「“おやつ”は食べには行かねえけど、確かに街中まちなかに出てみるか」


「なんで!?おやつプリーズなんだよ!?アルマも言ってるんだよ!?」


「言ってねえだろ?」


席を立ち、ゆっくりと歩みを進めようとする當真に、頭をゴシゴシぶつけながら“おやつ”を求めるパレット。


その後に続くように、アルマも笑顔で席を立つ。


「ふふふ。ナイト、“おやつぷりーず”、です!!」


「おいいい!!?パレットのせいでアルマがおかしくなったぞ!?」


「わーい!!おやつプリーズなんだよー!!」


こうして。三人は笑顔のまま、『かくれんぼ』二日目も無事に終わ



ガラガラガラガラ



と、三人が教室を出る、その手前。扉に辿り着くよりも早く、鳴り響く、音。



「やっと『見つけましたよ』、“アルマ様”?」



静かに響き渡る声、三人の視線の行き着く先、


そこには。見慣れたはずの、ひとりの“老執事”が、悠然と立っていた。



何かが、ゆっくりと、動き始めた。




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