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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 2 : PAST, PRESENT, and FUTURE
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#9 オッドアイの少女①

「びっくりしたわ。私、今、たまたまこの国に“旅行”に来てるのだけどね。まさかそのタイミングで、他の外国の子、しかも“同じ”趣味を持つ“女の子”に出会えるなんて!!これって本当に素敵な巡り合わせよね!!」


“LW”から少し離れた、カフェのオープンテラスにて。


當真とパレットの向かいに座るのは、白に近い銀髪、そして“青”と“赤”の瞳を持つ『オッドアイ』の少女。


“予期せぬ邂逅により緊張している”當真、そしてそんな状況でも“さっき頼んだスイーツが届くのを心待ちにワクワクしている”パレットに対し、『オッドアイ』の少女は嬉しそうに、その愛らしい声で話を続ける。


「あなたも“旅行”なのかしら?そちらの“ボーイフレンド”さんは、この国の方のようにお見受けするのだけど?」


「あー、いや、“ボーイフレンド”とかではなくて・・・あ、遠い親戚?なんですよ!俺たち!それでこの子がたまたまこっちに遊びに来てて!!なあ、パレット!?」


「わーい。ないと、フレンチトーストきたよ!!美味しそう!!食べていい?食べていい??いっただきまー」


ゴンッッッ。


「ぐへぇ!?」


當真は、必死でこの状況を取り繕うとする自身どころか、目の前の『オッドアイ』の少女すらもスルーしてしまう、“自分自身に素直すぎる”パレットに、いつも通りの男女平等チョップを放つ。


「話を無視するでないよ、パレットさん!?」


「だって!!美味しそうなスイーツが目の前にあるんだよ!?わたしは!!もう!!お腹ペコペコなんだよ!!あ、ないとのドーナツもあとで一口もらうからね!ぷんぷん!」


「どんだけ食欲全開なの!?あと!さりげなく人のドーナツも食べようとするんじゃないよ!!?」


「なんで?ないとのモノは、わたしのモノでしょ??」


「どこの暴君!?食欲の暴君なの!!?」


そうした、目の前で繰り広げられる痴話喧嘩のような二人の“日常”のやり取りを眺めながら、『オッドアイ』の少女は、クスリと微笑む。


「ナイトさんと、パレットさんと言うのですね。お二人はとっても仲がよろしいんですね?」


「「仲良くないです!!!!」」


「あら?ふふふ」


シンクロするように叫ぶ慌ただしい二人に対し、微笑みを返しながら、頼んだ“アールグレイティー”を上品な手際で口にする『オッドアイ』の少女。


すぐさまフレンチトーストを食べ始めるパレットとは対称的に、優雅で上品な空気を纏う目の前の少女に、思わず當真はその視線を奪われていた。



『オッドアイ』の少女は、写真で見た印象よりも、ずっと幼い印象であった。


端麗な顔立ちはもちろんだが、その愛らしい声、喋り口調、所作など。実際に目の前で“動き”や“色”、“温度”が見える事で、想像以上にその印象は変わっていた。


“お嬢様”と言うよりも、“お姫様”というような愛らしい印象の方がどちらかと際立つ。とてもじゃないが、“お転婆”だったり“かくれんぼ”しちゃうような印象は、目の前の少女からはとても想像難いものであった。



「どうかしましたか?」


當真の視線に気がついたのか、視線を合わせて話しかける『オッドアイ』の少女。


思わず目が合ってしまった事ももちろんだが、やはり何よりもその少女の特徴たる所以である『オッドアイ』の“綺麗”さに、思わず吸い込まれるような感覚に。當真の心臓の鼓動は、一瞬にして高まる。


「あ、いや、別に・・・そうだ!この子はパレットで合ってるんですけど、俺の名前は“ナイト”じゃなくて、“夜”です、“當真 夜”」


逸る鼓動、そして焦りを見透かされないように、自然と会話を元に引き戻す當真。


「・・・トウマ、ヨル?」


「うん(もぐもぐ)“夜”“だから“ないと”。あなたも、“ないと”って呼んでいいんだよ?(もぐもぐ)」


「何でお前が決めてんだよ?というか食べながら喋るなってあれだけ言ってんのに!!ほら、もう、フレンチトーストのシロップが口元ついてんだろうが!!」


まるで“育ての親”のように、近くの紙ナプキンをパレットに差し出す當真。だが



「ん。拭いて?」


「!!?」



食べることに必死で、その手からフォークとナイフを離すことを躊躇うパレットは、口元をグッと當真に向けて差し出す。


その行為に、パレットには“もちろん”他意はない。だが、そのシルエットは。まるで恋人同士が、“甘い”口づけを求めるような・・・


「あらあら?やっぱり親戚なんていうのはウソで、“ボーイフレンド”だったのかしら?」


「っ!?ち、ちがいます、おい、自分で拭けって!?ほら!!」


「ぐへぇ!?ふぐぐぐぐ?!」


不躾に紙ナプキンの束をパレットの小さな顔に押し付け、赤面する當真と、紙ナプキンだらけの視界に悶えるパレット。


「ふふふ。でも、せっかくだから私も“ナイトさん”と“パレットちゃん”と呼んでもいいかしら?」


そして。『オッドアイ』の少女は、微笑みながら、“右手”を二人に差し出し、続きを謳う。



「私の名前は『アルマ』。ナイトさん、パレットちゃん、ぜひ私とお友達になってくださらない?」



『オッドアイ』の少女、アルマが、爽やかな笑顔と一緒に差し出してきたその“右手”に対し、自然な流れでパレットも手を伸ばし


「うん。じゃあ、わたしもアルマちゃんって呼ぶね!よろしー」



ガシッ。



「ないと?」


「あら?」


「あ、いや、そのー」


パレットの右手を掴んだのは、當真の左手だった。まるで、その“握手”を横取りするような状況。


もちろん、“理由”はある。だが、このままだと、あまりにも“不可思議”な状況になってしまう。


“それ”を悟られないように、當真はあくまでも平常心を装い、“自らの右手”を差し出し、パレットの代わりにアルマの手を取ると、


「ほら?パレット、お前、さっき口元拭いた時に、シロップが手にもついてるじゃねえか?だからパレットの“代わりに”、俺がアルマとは握手しとくよ?」


一瞬。その手を取りながら、當真を見つめ返すアルマ。


そこに生じたのは、“小さからぬ違和感”。


当然、“それ”をアルマに悟られないように、焦り、當真は思わずアルマから視線を逸らす。


が、逆にその行動が、“違和感”を大きくしてもおかしくなかった、のだが



「そんなこと言って、ほんとはアルマちゃんが可愛いから自分が握手したいだけなんじゃないの?ないと!?」



頬を膨らませながら、冷たい視線でアルマの手を握る當真を睨みつけるパレット。


その“空気の読めなさ”によって、“違和感”も“日常”の景色へと変わっていく。


「っ!?ち、ちがうわ!?何言ってんだよ!?パレット!!?」


パレットの言葉に対し、“小さからぬ違和感”を掻き消すかのように、“照れ隠し”を装い“自然と”アルマの手を放すことに“成功した”當真。


(よかった・・・多分、そこまで“違和感”はなかったはず・・・でも!ほんっとに!パレットは!!人の気もしらないで!?お前は気持ちよさそうに眠ってたから知らないだろうけどな!!“この子”に“触れられる”訳にはいかないんだぞ!?)


そう。前日、アルマの“魔法”の“条件”をワイダーから聞いていた當真は、咄嗟の判断でパレットがアルマと“握手”する状況を躱したのである。



『“一度でもその手で触れた人間”であれば、意識するだけで、その人物の近い“未来”を見ることが出来る』。それが目の前の『オッドアイ』の少女、アルマの“魔法”なのである。



現状、この予期せぬ邂逅によって、箸休め程度の変装をしてるとはいえ、名乗り、顔見知ってしまった今、この先で本来の目的を果たすためには、出来る限りその“魔法”の影響下にないに越したことはない。


當真は、自分自身に関しては『“魔法”に嫌われる“魔法”』によって、“おそらく”だが、アルマの“魔法”の影響を“大きく”受ける事はないと考えていた。


加えて、“万が一”の状況になったとしても、考えなしに行動してしまい、すぐに“ボロ”が出てしまいかねないパレットとは違って、このまま何も“知らない”フリをしたまま、この場を乗り切りさえすれば、まだこの先のアルバイトの期間でも、十分に挽回できると考えていた。


(とにかく、このまま“自然”な感じで、アルマとの接触を避けて、今日のところは引き上げるしかー)



だが。當真は、まだ、『気がついていなかった』。



「ねえ。パレットちゃん。“こっそり”ナイトさんのドーナツを食べようとしてるみたいだけど、残念ながら、それ、“落ちちゃうし”、」



唐突に訪れた、アルマの言葉の、その“意味”。


“それ”を理解する一歩手前。


當真はそのタイミングで『初めて』、自身の視界の“隙”を縫う様に、パレットが“こっそり”とフォークの先端を持ちながら、當真の前のドーナツを突き刺し、自身の元へと引き寄せていた事に気がつく。


そして


「今日の夜に“こっそり”と戸棚に隠していた“カステラ”を“食べる”みたいだけど、夜中に甘いものを摂りすぎるのも、良くないかと思うわよ?」


「え!?なんで!?アルマちゃん!?」


「は?カステラ!?え、いや、パレット、どういうー」


アルマの言葉に反応し、動揺、そして思わず手を滑らすパレット。


そして、“こっそり”取り上げようと、力なく突き刺していたパレットの持つフォークの先端から、まるでアルマの“言葉通り”に、ゆっくりとフォークから抜け落ち、床に零れ落ちる當真のドーナツ。


「あああああああ!?俺のドーナツがあああ!!?」


「ねえ?なんでなんで!?ないとにも黙ってしようと思ってたのに!?なんで“その事”知ってるんだよ!?」


ドーナツの無残な『未来』も、こっそり夜食にカステラを食べている『未来』も。そのパレットの行動に繋がる“全て”が、アルマの“眼”には『見透かされているよう』で。



當真は、その瞬間。



目の前の『オッドアイ』の少女の、“不可思議”な様子に、ようやく気がつく。



言葉を紡ぐアルマは、自身の“右手”を、“左”の“赤”の瞳を隠すように添えて、パレットをまっすぐと“見ていた”のだ、その“右”の“青”の瞳で。



「さっきね、“お店”で“触れ”ちゃいましたからね?だから、“見ちゃいました”。パレットちゃんの『未来』」



「あ!!」「あっ!?」



そう。當真が咄嗟に躱したと思っていた、それよりも少し前に、“LW”の店内での邂逅の間際。


バランスを崩したパレットを支えたのは、正真正銘、目の前の『オッドアイ』の少女の“両手”であった。



(・・・しまった、あの時、“パレット”に“触れられて”たのか!?)


思い返される景色に、當真の中で焦燥感が高まっていく。


だが、まだそれでも、アルマにこの“アルバイト”の目的自体は、“気づかれてはいなー



「ナイトさんが“見えにくい”のは、ちょっと不思議ですけど?でも、お二人の反応を見る限り、私の“魔法”の事、“少しは”知ってるみたいですね?」


「「!?」」



アルマの言葉が、一歩ずつ、“そこ”に辿り着いていく。



そして



「それじゃあ、“やっぱり”、『て』みようかな、」



當真とパレットの二人の鼓動を、刻一刻と加速させるように、続きの言葉を紡ぐアルマ。



その“左”の瞳を隠すように添えていた“右手”を下げると、流れるように今度はそのまま、“左手”を自身の“右”の“青”の瞳を隠すように添え、“左”の“赤”の瞳で、まっすぐとパレットを“見つめる”。


その“瞳”の色が、より鮮明に“色濃く”なっていくような、そんな“不可思議”な感覚。



「・・・・・・やっぱり“思った通り”、ですか。パレットちゃん、『ワイダーに“会ってた”』んだね?じゃあ、ナイトさんも、“そういう事”ですよね?」



「えっ!!?」「な、なんで!!?」



思わずお互いに目を合わせる當真とパレット。そして、お互いにその“現実”に、言葉を失っていた。



少女が紡ぐ、その言葉。それは、目の前の少女が知りようもなかったはずの、“事実”。



そう。決して知られるはずのなかった、『過去』の“景色”そのもの。



全ての思惑がゆっくりと崩れ落ちていき、當真とパレットの表情が驚きを隠せない中、アルマは微笑みながら二人に告げる。



「ワイダーから“どんな風”に聞いていたかは分からないですけど。これから“お友達”になって“くれる”二人には、“特別”に教えてあげましょうか?私の“魔法”のこと?」



“青”と“赤”の瞳を持つ『オッドアイ』の少女、アルマは、その『未来』を見据え、華やかに當真とパレットの二人に向けて、謳う。



彼女の持つ、本当の“魔法”を。『特別』を冠する、その“名”を。



「『パスト・アンド・フューチャー』。私の“魔法”は、『“未来”も“過去”も“全て”を“る”』“魔法”。」



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