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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 2 : PAST, PRESENT, and FUTURE
37/65

#4 プロローグ④

三分後。


當真は、隣でフォークとスプーンを両手に、巨大パフェを幸せそうに頬張っていくパレットの姿を見て、それだけで自身のお腹が膨れていくような感覚で、眺めていた。


すでに、あの大容量の“パフェ”の化物が、三分の二は消化されていた。


(この小さい体のどこに、これだけ大量のカロリーの塊たちが消えてってるんだろ?・・・コイツの“魔法”って、ほんとはこの“化物みたいな食欲”の方なんじゃね、ほんとは?)


當真の不思議そうな表情と違い、側で挑戦時間を計測している女性店員は、どちらかと言えば“恐怖”に近いような、少し引きつった笑顔で、パレットのその“食べっぷり”を眺めていた。


「あの、この女の子、フードファイターさんとかなんですか?なんか、ものすごい勢いでパフェがどんどん消えていくんですけど?それとも、この一週間何も食べてなかったとか・・・?」


「あ、いや、フードファイターというより、これが通常運転ですし、なんなら昼ご飯もがっつり食べてます」


「!!?」


當真の冷静な切り返しに、さらに驚愕の表情を浮かべながら、食の勢いの衰えないパレットを二度見する女性店員。


「そ、そうなんですねえ、へ、へぇ、すっごいなあ、あ!でも!ちゃんと“魔法”のかかった“当たり”を選べる“運”も持ち合わせてますし!!」


もちろん。それは、パレットが持ち合わせていた“運”、などではない。


“正解”が分かりきった選択の『未来』でしかなかった。


なぜなら。パレットには、“魔法”のかけられた、自分が選ぶべき正解のパフェを、“る”ことが出来たからだ、自身の“魔法”を使う事によって。



【ワールド・ディコーダー】。その名が冠する理は、【世界を識る者】。



それが、パレットの“魔法”である。



それは、【“魔力”に触れることで、その“魔法”がどんな“魔法”であっても“識る”ことが出来る】“魔法”。


パレット曰く、魔力“とは『人が誰しも生まれ持っている“魔法”の源』であり、その“魔力”に触れることで、その“魔法”の全容を“識る”事が出来るというものだ。


そして。“とある闘い”をきっかけに、今のパレットは、その“魔力”の“声”を聞き取れるようにもなっていたのだが、先刻のこのキャンペーンへの挑戦の前に女性店員と“握手”をしたのも、この“魔法”を使う為の一連だった。


(あの“握手”で、この人の“魔力”に触れて“魔法”を“識った”上で、“魔法”がかけられたパフェに在る“魔力”の“声”と照らし合わせた、ってところだろうな。万が一にも、パフェのどちらにも他の“魔法”がかけられたとしても、パレットの“魔法ちから”なら、確実にどっちが正解かを“識れる”だろうし)


驚異的なスピードで幸せそうに巨大パフェを食べ続けるパレットを横目に、冷静に心の内で分析を行う當真。


こんな“不可思議な”状況の中ではあるが、“魔法”の在るこの世界、現代において、當真は“改めて”、目の前の金色の少女の、その“魔法”の凄さに、思考を巡らせる。


(最初に出会った頃から凄いとは思ってたけど、“あんな事”もあったから余計に・・・やっぱり、“特別”なのかな、パレットの“魔法”って・・・)


この時の當真はまだ、パレットの“魔法”に関してはもちろん、二週間前の騒動の、その本当の“理由”を、『七つの鍵』という、今はまだ“誰も”識らない“その彼女の“特別”の意味を、知る事はなかった。


そんな當真の思考を他所に、パレットは快調に“極上の甘さ”を“魔法”で加えられた巨大パフェを食い進めていく。


「これはもしかしたら!このキャンペーン初の成功者になるかもですね!!残り時間、二分ですよ?頑張ってね、お客様!!」


「(もぐもぐ)ふぁい!!(もぐもぐ)」


二段目のホットケーキの半分を一口で頬張りながら女性店員に応える、もぐもぐパレット。


(まぁ、この感じならいけそうだな、残りもホットケーキ一枚だし・・・・・)



と。當真が、今後の生活費の安全を確信した、その時だった。



「ふう。おなか。いっぱいなんだよ。」


「!?」



それは、幼稚園児が大好物を大量に手元のお皿に盛りつけたにも関わらず、胃袋の限界と同時に遠い場所を一点で見つめだし“フリーズ”するような、その、つまり、なんだ、とにかくパレットは急にピクリとも動かなくなったのだ。表情はもちろん、満足げで至福の表情のままではあるが。


「いや、パレットさん?!急に!その!どうした?スイーツは別次元なんだろ?というか目の前の食べ物を残すなんてお前らしくもない?!どこか調子でもおかしいのか!?」


実際の所。すでに三人前近くの甘味を、この短時間で召し上がっているレディに対する感想が“コレ”な時点で、當真の感覚もすでにおかしなことになっているのだが。


「うーん。だいじょうぶだと思ったんだけどなあ。・・・やっぱり、朝ごはん、食べ過ぎたかな?」


「朝、ごはん?・・・え、待って、“昼”の話でなく、あさ・・・・・」


「うん。昨日の夜に、残りも少なかったからね。今日の分も含めて残り全部ご飯炊いたんだけどね。なんか、朝、ないとの病院にお見舞い行く前に、ちょっとお腹空いちゃったからさ。今日の分に残しておいた分も、“全部”食べちゃってて。」


「・・・・・お前、病室に来て開口一番“お昼ご飯”の心配してなったか!?というか待って、朝、ごはん、どれだけー」


「“にごう“(二合)(にこにこダブルピース)!!」


「この腹ペコモンスタがああああっっっ!!!!!!??????」


朝食に二合のお米、昼食に病院食一人前、間髪入れずに巨大パフェ三人前近くを消化。


想像だけで胃もたれを起こしそうになった當真は、思わず叫び倒し、会話を横で聞いていた女性店員も、だいぶ引き笑いのレベルが上がっていた。


「あ、あのう、あと一分ですよ~(小声)」


「っ!?おい!パレットさん!!残り一分になっ・・・」


「うーん。なんだか、急にねむたくなってきたんだよ?ないと?ちょっとお昼寝しても・・・」


「うおおおおおいいい!?こどもなの?!お腹いっぱいですぐ眠たくなっちゃうの、こどもなの?!」


「残り30秒~♪」


「!!?」


すでに瞼が重たくなりウトウトし始めているパレットにツッコミをしている場合ではなかった、女性店員の半音高まった合図に、當真はテーブルの上のフォークに急いで手を伸ばす。


(このままじゃ、なけなしの千円が!無残にも消えてしまう最悪の『未来』になっちまう!!とりあえず、パレットがほとんど食べてくれてるし、残りはホットケーキ1枚分、これくらいならー)


當真は、お皿の上に残された大きめのホットケーキ1枚を、フォークで乱雑に“半分”に切り分ける。それぞれが“頑張れば”一口におさまる大きさだ。


この状態なら、急いで頬張って、飲み込む作業を、たった“二回”頑張れば!腹ペコモンスターのパレットとは違い、いたって普通の男子高校生の當真でも“ギリギリ”間に合うはず!!


「残り15秒~♪はっぴーはろうぃん♪」


(くそ!!ハロウィンぜんっぜん関係ないだろうが!!!?)


逸る気持ちと心の中のツッコミ魂を置き去りするように、當真は勢いよく、切り分けたホットケーキの片割れにフォークを突き刺す。


そして。勢いそのままに、口元へとー


「おおおおおおおおおおおおおおおお」


咆哮。まるで、いつぞやの“死闘”さながら(?)の気迫で、突き刺したホットケーキを口元まで運び、大きく口を開けて・・・



と。その瞬間、當真は『“嫌な”感じ』がした、



口元へと運んで行ったホットケーキ『ではなく』、視界に映る『お皿に残された』ホットケーキの片割れの方から。



(あれ・・・待てよ・・・)



勢いよく口元へとホットケーキを運ぶ、その右手を止める事などは、もちろん出来ない。そして、時間に迫られた中で、もう口元に届くであろうホットケーキを食べる事も止められないだろう、



だが、まるでその動き全てがスローモーションで動くかのように、當真の脳内を高速で思考だけが駆け巡る、



(・・・俺の、“魔法”って・・・確か・・・)



『持たざる者』として生きてきた世界で、當真自身がその“魔法ちから”を手にしたのは、つい二週間前の事。


なので、もちろん言うまでもなく、彼自身にはいまだに『そこまでの実感や認識』が定まっていないことが、“現状”。


そして、彼の“魔法”はー。



パクッ。



その瞬間。拡がり、侵食するのは、



まさに“地獄”そのものだった。



口の中から広がり、一瞬にして全身を悪寒と共に駆け巡る、究極の“不味さ”。



「※▽×〇?!#%&!!!!!??????????????」



声にならない、いや、することすら叶わない程の“衝撃”、意識は飛ばずとも全身から一気に力が削ぎ落される脱力感、と言うより最早、“半”失神状態でテーブルに屈服する、少年。


この結末、その理由は“明白”だ、なぜなら



當真 夜、彼の“魔法”は、『“魔法”に嫌われる』“魔法”。



『それゆえに』。女性店員の手掛けた“魔法”は、彼を“嫌う”様に、選択しなかった“もう半分”のホットケーキへと、その所在の全てを“躱していた”のである。



「はーい♪タイムアップでーす♪チャレンジは惜しくも失敗でしたね、惜しかったですけどね!挑戦料の千円をお帰りの際レジにてお支払いお願いしますね♪はっぴーはろうぃん♪」



女性店員がテーブルの上に残された巨大パフェの片割れの乗ったお皿を片手に、軽妙にキャンペーン挑戦の終わりと、當真&パレットの残り一週間の生活費の没収(正当なサービス料です)を謳い、その場を立ち去っていく頃、


気持ちよさそうにコクリとうたた寝をするパレットとは対照的に、地獄絵図の一員となる『未来』に辿り着いた當真であった。


(※この後、當真少年が、約一時間は何も出来ないまま悶え倒れていたのは言うまでもない)



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