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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 2 : PAST, PRESENT, and FUTURE
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#2 プロローグ②

「んー!ひっさしぶりの“外”、気持ちいいなあ!すげえ解放感!!」


二週間ぶりの“外”の空気を、深く吸い込みながら、両腕を高く上げ背伸びをする當真。


まるで、物語のワンシーンによくあるような風景。


学生である當真にとっては、非公式の“長期休暇”となってしまった、閉じ込められた“入院生活”において。


當真にとってはいまだに体中に僅かに残る“痛み”よりも、その“閉塞感”と病院特有の“空気感”の方が、精神的にキツイものでもあった。


それゆえに。こうした何気ない外の景色、病院から離れて自宅に向かうまでの、街の中をただ歩いているだけの時間。


“それ”を當真は、自分が想像していた以上に“渇望”していたという事を、時間の経過に比例するように感じ取っていた。


(なんか、ようやく、いつもの“日常”に帰ってきー)



「ねえねえ。ないと?お腹がね、すいたんだよ?わたしは?」



感傷に浸る當真のモノローグは、その愛らしい声色による“空腹少女(ハラペコガール)”の“救難信号(メーデー)”によって、一瞬にして現実へと引き戻された。


一瞬の静寂の間。當真は、“精一杯”の“作り笑顔”で、感情に“蓋”をして、言葉を切り出す。


「・・・パレットさん」


「なになに?」


「あなた、さっき病院でも、結局最後に無理言って出してもらったお昼の入院食、食べてましたよね?」


「うん。」


「あれから、まだ一時間も経ってませんが?」


「うん。ないと、あのね。前から言おうと思ってたんだけどね、」


「うん?」


「・・・病院のごはんってね、ちょっと薄味だし、量も少ないんだよ?・・・知ってた?」


當真の耳元に手を添えるように近づきながら、誰に聞かれるでもないのに小声で、少し“がっかり”した様子で呟くパレット。


堪らず。當真の感情の“蓋”が、勢いよく開け放たれる。


「知ってるわああああ!!!入院食ってそういうものですからねええええ!!!!?というかそもそも!!!!本来!!!!俺のですしいいいい!!!!?なんでちょっとがっかりしてんの!!?どういうメンタルなの?!!!!」


當真の心からの叫びに、街の中を行きかう人々の視線も、僅かながらに集める。


「ないと。ちょっと落ち着きなよ?深呼吸でもしたら?」


「誰のせいだと思ってるんだ?」


「・・・お茶、でも飲む?あっ、ちょうどそこにファミレスもあるんだよ!フライドポテトも食べよう!!」


気遣いの一面をほんの“僅か”ばかり見せた後、見つけたファミレスに向かって意気揚々とスキップして向かい始めるパレット。


思わず、その白のローブ越しに、パレットの首元を掴み引き留める當真。


「グヘエッ?!」


「待て待て待て。何をルンルンでファミレスに向かってるんだね?さっきから言ってますけど、お前、昼ご飯もしっかり食べたばっかりだろ?」


「何を言ってるんだよ、ないと?ごはんとスイーツは別次元なんだよ?」


振り返り、小動物のように頬をパンパンに膨らませながら、仁王立つパレット。


「出たよ・・・パレットの謎の腹ペコ理論・・・」


「それにさっき、ないとがドリンクバーとフライドポテト食べたいって言ったんだよ?だから食後のスイーツとして食べなきゃなんだよ?」


「いや、まず食べたいと俺が羨望したわけでもないし、それもお昼が無いなら“しょうがなく”の上での提案だし、結局お前しっかり昼ご飯食べてるし、そもそもフライドポテトがスイーツに分類されてるのもおかしいし・・・」


ふいに。


頬を膨らませながら、近づき、當真のすぐ目の前で、グッと。その身長差を埋めるように、背伸びをして、顔を近づけてくるパレット。


「もう。ないと、あんまり細かいと、女の子に嫌われちゃうんだよ?」


距離感を一気に“ゼロ”にしてくるパレットに対し、思わず体中を“熱”が駆け巡り、そのまま目を合わせる當真。


中身は“とんでも腹ペコガール”とはいえ、近づき凝視する度に、目の前の少女の愛らしさや見た目だけなら異国の“美少女”であるという事を、當真は思い返される。


コンマ数秒で視線を逸らし、背中を見せるように振り返る當真。


そして、一呼吸のあと、もう一度振り返り、冷静にパレットに“現実”の“確認”を促す事にした。


「・・・パレットさん、財布を出したまえ」


「んん?なんで??」


「いいから!俺が入院中の生活費と一緒に渡した、財布を、今、ここに出してください!はい!!」


當真の突き出した両手に、不思議そうに預けられた財布を取り出し渡すパレット。


差し出された財布を開けると、一瞬で、その“恐怖”を実感した當真。


「・・・想像してたよりも、ずっとひどい・・・・」


「??」


當真は、おもむろにその中身を取り出す。


「・・・これ。この一枚、千円ですね」


「うん。日本のお金のことも、ないとが入院してる間にばっちり覚えんたんだよ!」


「・・・これ、月末までの全財産だからね?二人分の食費だからね?・・・・あと一週間、一日当たり、ひとり約70円しか使えませんのでね、ファミレスなんて到底無理です、パレットさん」


「っっっ!!!!?なんで!!!!?そんなに少ないの!?」


「自分の胸に手をあてて聞いてごらんなさいよ!?パレットさん!?俺もここまでひどいとは思ってなかったわ!!!!?」


「ちゃんと!!ないとに言われた通りに!!節約してたのに?!なんで!!?」


「一日“四食”は節約とは言わねえよ!!ああもう、それにしたって想像以上・・・あと一週間どうすれば・・・鍋・・・毎日、水増しして量増やした出汁使って、安売りの野菜だけで鍋にするか・・・でもコイツ、絶対足りないって文句言うだろ・・・(ブツブツブツブツ)」


「しんじゃうー!!おなかすいてちからでなくてしんじゃうー!!(ぎゃあぎゃあぎゃあ)」


盛大にパレットに全力でツッコミを入れ、すぐさま残り一週間の“二人分”の食事の献立を考えだす當真。


彼の生活力の高さと何気ない“当たり前”その“優しさ”が、そこには垣間見えた気がする。


“非日常”の先の入院生活から解放されたにも関わらず、すぐさま“生活”に追われ、試行錯誤を強いられる黒髪の少年と、この先の未来(主に食事)に悲壮感漂わせながら少年に喚き散らかす金髪の少女。


そんな、少年の取り戻した、“喧しく”も“明るく”彩りを謳う“日常”の、一間。



と。



ふいに。二人のそんなやり取りを、ガラス越しで店内から眺めていた、ファミレスのひとりの女性店員が外に出てきて、二人に声をかけてきた。


「あのー、お店(ウチ)の、お客さん、ですか・・・?」


「あっ!すみません!!うるさかったですよね!!すぐにー」「うん。あのね、わたし、フライドポテトとドリンクバーと、あとパフェがー」


「おいいい!?パフェ増えてるっ!!じゃなくて!!だからそんな金ないから無理だって言ってんだろ!!腹ペコガール!!!??」


女性店員への謝罪に対し、被せる様にオーダーをしようとするパレット。もちろん間髪入れずにツッコミを入れる當真。


と、そんな夫婦漫才かのようなやり取りの一連を視聴した後、女性店員がある提言を告げる、


「あのう、ドリンクバーとフライドポテトは無理ですけど、パフェなら“お客様次第”でいけるかもですよ?ほら?」


ファミレスのガラスに貼られた、一枚のポップを指さす女性店員。そして



「今、当店は『魔法マジックキャンペーン』中なので、良かったら挑戦して行かれますか?」




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