表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 1:The Golden Fateful Encounter
33/64

#25 エンドロール【チャプター1】

「ほんとに(もぐもぐ)すっごく大変だったんだよ?(もぐもぐ)そこのキレイな先生は大丈夫だって言ってくれてたけど(もぐもぐ)ないと全然目を醒まさないし(もぐもぐ)ないとのおとうさんとも入れ違いになっちゃって(もぐもぐ)この“鍵”と“置き手紙”だけあってさ(もぐもぐ)だからね(もぐもぐ)わたしが代わりにないとの着替えを持ってきたり(もぐもぐ)したんだよ?(もぐもぐ)」


「いや、起き抜けに人の入院食全部かっさらいながら話すんじゃありませんよ?パレットさん?あと口にご飯入れたまま喋るのは、お行儀悪いですからね?ハラペコですか?そんなに食べるのに必死になりますか?ねえ?ちょっと?聞いてる?」


「(もぐもぐ)」


當真の心配をしていたのは間違いないだろう、だがそれを上回る勢いで食欲が追いついてきた為に、配膳された昼食(もちろん當間の為の)を“食する”、その“ついで”のように、これまでの見舞い生活を語る、金色の少女、パレット。


その首元には、子どもが失くしたりするのを防ぐ為にしているような、チェーンに“見慣れた”當真の家の“鍵”を通して、首から下げている。


そして“件”の、“入院中の息子を見ず知らずの外国の少女に放任して、絶賛家出中の父親”の“置き手紙”に関しては、最早読もうとも思う気持ちさえ生まれない。


そうした、これまでの過程や経過をこうして見る事で、當真の中にも徐々に、いろいろな感覚が“戻って”きていた。


一週間近く前の、當真の中では感覚的に昨日一昨日の感覚でもあるのだが、あまりにも濃すぎる週末だった。


パレットとの出会い。続け様の、突然の来訪者たち。


そして、全身を駆け巡るこの“痛み”、思い返される“非日常”過ぎる“景色”の連続・・・・・


「“あの人”もね、警察の人たちが“護送”してる途中で、“消えちゃった”んだって。他の取引相手?みたいなひとたちもたくさん逮捕されたりしたみたいだけど・・・この一週間はずっと、“あの人”の事ばかりニュースになってるよ?護送中での消失だったから、顔写真とかも撮れてないみたいでさ。テレビとかでも毎日、“白銀の亡霊の消失”だってニュースになってるんだよ?」


入院食を無事に平らげたパレットが、少し物思いにふけっていた當真の表情を察し、今回の“結末”の行く末を話し出した。


「そっか・・・」


“不安”や“杞憂”の感情とは少し違う、そして“恐怖”が在るわけでもない。


ただ。それでも“気にかかる、その“結末”に、當真はゆっくりと、握りしめる自身の“右手”に視線を向ける。


曖昧で、でも鮮明に刻まれた、“闘い”。


そんな“時間”がゆっくりと頭の中のスクリーンへと、リフレインされていく。


「・・・・・俺、ほんとによく、“アイツ”と戦えたな・・・ひとりじゃきっと無理だったし・・・それに、俺、“魔法”使えるようになったんだよな・・・」



「そうねえ?その“魔法”が問題なんだけどね?」


一度、退席していたはずの當真の担当医である新待トネリが、タイミングを見計らったかのように入室し、声をかけてきた。


「新待先生?・・・というか、“問題”って?」


ゆっくりとこちらに近寄り、食事(當間の分)と報告を終え、當真に寄り添うようにグウタラし始めたパレットを抱きかかえるように“ハグ”しながら、トネリは言葉を続ける。


「パレットちゃんから“少し”聞いたけど、ナイトちゃん、あなた、せっかく使えるようになった“魔法”も、ちょっと変わってるみたいね?」


「あ・・・はい、そうですね、確かに・・・」


(あの時は、冷静に考える余裕なんて一ミリもなかったけど・・・俺の魔法ってー)


「【魔法に“嫌われる”魔法】、だよね?わたしもそんなの、初めて“識る(きく)”“魔法”だったんだよ。」


「そうよねえ?わたしも知り合いはもちろん、“患者”さんで、そんな“魔法”使ってる人なんて見たこともないわねえ?」


パレットやトネリの反応以上に。


當真も自分自身の中で、“魔法”が使える事になった“喜び”以上に、“困惑”の方が強いのも事実だった。



「ここからは私の“推測”なんだけど」


トネリが、言葉を切り出す。


「ナイトちゃんが、今回の一連の騒動の中で、“本来”であれば“死んでもおかしくない”ような怪我をしているはずなのに、その全部をギリギリで、決定的な“致命傷”を“躱せた”のは、“魔法に関するモノ”を、あなたの“魔法”が“きらって”、そして“躱した”んじゃないかしら?」


「・・・“きらって”?」


そして、鮮明に、そのそれぞれの“瞬間”が、當真の中に思い起こされていき、不透明で不可思議だった“感覚”に、思考が言語を彩っていく。


(・・・・確かに、ことごとく“嫌”な感覚があって、“それ”を否定するように身体が反応してたような・・・)


「“魔法”に“嫌われてる”からこそ、結果としてナイトちゃんの体は本能的に“それ”を“躱していた”、もしくは“躱されていた”のかもしれないけど・・・“魔法”による“致命傷”だったり、それが関わった事象から、ね?」


トネリの“推測”によって、當真の中の疑念も“ほとんど”解決されていったし、それが“正解”かどうかは実際のところは確かめようがない。ただ、少なくとも當真の中で“納得”に繋がる“アンサー”としては十分過ぎるほどだった。だが


「・・・最初、パレットから“識ら(きか)された”時は、よく分かんない“魔法”だし、今、新待先生の話聞いてても“変”な“魔法”だと思ったけどさ、この“魔法”のおかげで助かったんだよな、そう思うとー」


その手にした“魔法ちから”に、想いが募り、感傷に



「うん?だからね、その“魔法”のせいで、ナイトちゃん、当分入院生活続くと思うわよ?」


「・・・・・は?」


“浸ることもなく”、


混乱、困惑。當真は口をポカーンと開けて、トネリの、どこか“憐れむような微笑み”を浮かべる表情へと視線をゆっくりと向ける。


「ナイトちゃんも知ってのとおり、この病院って国内でもかなり有数の大病院じゃない?“ちょっとした大怪我”くらいなら、入院する必要ないのよね?“魔法”で治せちゃうから?」


「!?」


言われて、ようやく思い出す、その“事実”に。


そう、“魔法”が生まれたあの日から、世界が最大の恩恵を受けたのは“科学”と“医療”の発展だ、もはや“旧世界”とは“あの日”を境に、劇的に進化を遂げたのが、この二つの世界である。


科学の発展は言わずもがな、医療においては、“魔法”による“治療”が可能になった事で、劇的に人類の寿命が延びたとまで言われているし、現実、“レベルの高い魔法ちりょう”が行える病院だと、よほどの事が無い限り、長期間の“入院”に繋がるケースは少なく、“通院”で済む事がほとんどである。


ゆえに。


ようやく當真も、“気がつく”。この現状の“重さ”と、そして、


「んー、つまりね?ナイトちゃん、“医療”行為に繋がる“魔法”にも“嫌われ”ちゃってるのよね?だから“旧”医療しか受けられないし、“魔法”の在る今の世界だと、逆に“時間”かかっちゃうのよね?」


「なっ!!?」


「あと、入院費も含めて、“医療費”も“逆に”めちゃくちゃ“高い”わね?お父さんの許可を得て、先払いで“もう”貰ってるけどね?(にっこり)」


「なっっ!!!???」


ずっと恋焦がれていたような、憧れのような、手を伸ばしていた“魔法”を。ようやくその手にして。


そして、引き換えに手にしたものは、大きな“代償”。


自身のスマートフォンから、アプリを起動し、當真家のライフライン(銀行口座)にアクセスする。


残高。


5000円。


月末の振り込み(父親からの)まで、残り15日。


一日あたりの生活費、さんびゃくさんじゅ・・・一食あたり、ひゃくじゅ・・・・



「ひいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!?貧乏限界男子高校生いいいいいいいいいいいいいいいいいいっっっっ!!!!!!!!!????」



勉強できなくとも、そういう計算(生活における)は、とてつもない速さで出来る當真は、心の叫びを抑えることなく、“声”に成す。そして


「ねえねえ。ないと。」


「ああんっ?!なんですかパレットさん?!!!!」


“魔法”の在る世界へと出会う、その“きっかけ”となった金色の少女、パレット=セブンデイズは“無邪気”に、當真の涙の絶叫の間に、割り込んでくる。


「あのね。1週間も経つとね。ないとの家の冷蔵庫の中も、だいぶ“からっぽ”、なんだよ?わたし、このままじゃお腹空いて力が出ないんだよ?」


「どこの正義のヒーローみたいなこと言ってるの?今、俺の昼ご飯も食べてたよね?・・・・・いや、待て待て待て、冷蔵庫が、“空っぽ”、とは・・・?」


ツッコミが先走り、道中の言葉が時差を持って當真の脳内に追いつく。


生まれるのは、単純な疑問と、少しばかりの、ちょっとした“胸騒ぎ”。


「うん。だから、お見舞いの後は、もちろん“ウチ”に帰るじゃない?それで、ごはん、食べるでしょ?それが一週間も続くと、流石に“ウチ”の食料も底をついちゃうんだよ?」


「・・・いや、“ウチ”って?え?ちょっと待って、それは“當真家(おれんち)”の、話をしてますか?なんでパレットが“我が家”的な“雰囲気”を醸し出してー」


「え?だってこれから当分の間、ないとの家に住むんだし?もう“まいほーむ”みたいなものじゃん?」


「なっ!!!!!?????」


衝撃と混乱。は、まだまだ続く。


「ないとのお父さんも“行くとこないなら“ウチに住めば”オールオーケーだぜ”って、手紙にも書いてあったし?」


(あんんんんんのおおおおおおおおおおおクソ親父がああああああああああああああなにをさらっとそういうの決めとんじゃあああああああああああああああああああああああああああああ)


「それに。“あの時”。ないと、言ってくれたじゃない?」


「“あの時”?」



「『この先もずっと、俺が一番近くで、その手から“守り続ける”よ』、って。」



それは。思い返される、白銀の亡霊への叫びの、その途中。


生まれたのは、決して他意のない、心からの、少年の想いの“覚悟”。


そして。茶化してくるわけでもなく、ちゃんとそれが少女に“届いたから”こそ。


その笑顔を、嬉しそうで、屈託のない明るさで。少女の感情全部を彩るその表情が、その言葉には添えられていた。


思わず。當真は、視線を外す。


少女の青い瞳をまっすぐ見つめるには、少年には“熱”が在りすぎたからだ。


その“熱”を“隠す”ように、當真は言葉を探し、パレットとの会話へと繋げる。


「・・・・・じ、じゃあ、うん、それは一旦置いておこう。でも、“それにしたって”、ですよ?パレットさん?一週間家を空けたとして、当面の二人分の食事に困らない備蓄はあったはずですが?インスタント食品や缶詰とか?親父が“アレ”な分、“そういう”生活に関わるところはですね、こちとら幼いころから“しっかりと”やって来た自負があるんですが?!」


そう。“日常”において、自由奔放な父親に代わって、當真は“生活”に“困らない”ように、徹底的に生活の管理も行っていた(せざるを得ない状況)のだ。


それゆえに、この一週間で自宅の冷蔵庫や食料が底をつくなどといった、“非日常”を、いまだかつて経験したことはなかったのだ。


だが


「ほら?ないとの入院のことだったり、“いろいろ”バタバタしてたからね?お腹、いつもより空いちゃって?そしたら一日のご飯の回数も増えちゃって・・・・」


「はい?・・・・・いや、待て、一体一日何食ー」


少女は右手を思いっきり広げて當真に向かって突き出し、空いた左手を腰に当てて威風堂々とニコニコで仁王立つ。


「“ご”(はーと)」


「フードファイターかああああああああああああ!!!!!!!!??????」


「あ、でもお昼は毎日ここで食べてたから、一日四食、かなあ?(てへぺろ)」


「計算式も導き出す答も過程も、もはや全部がエラーだよ?!なんなの?!夢でも見させる“魔法”でも使ってんの?!」


そんな賑わう病室にて。


これから先の、パレットとのドキドキの同居生活、“ではなく”、極貧貧乏かつこれまで“以上”の苦難が確約された“未来”の“日常”を想像し叫び悶える當真と、屈託のない“幸せな笑顔”を見せるパレットの、そんなやり取りを眺めながら、トネリはクスッと微笑み、呟く。


「あらあら?ナイトちゃん、あなた、自分の“魔法”に出会えてから、なんだかとっても幸せそうね?」


そして、黒髪の少年、當真 夜は、側で悪戯にじゃれ合う金色の少女、パレット=セブンデイズの手を払いながら


まっすぐとその想いを、“迷わず”言葉にして、謳う。



「そんな魔法ならいらないっっっっっっっ!!!!!!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ