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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 1:The Golden Fateful Encounter
32/65

#24 ライク アン エピローグ

“黒”。


意識が、一番最初に思い浮かべた言葉は、その色だった。


そして、すぐに“白”が、その景色に染まっていく。


きっとこれは、“光”、自然光でもあり蛍光でもある、そんな目覚めのような、一日の始まりのような


(・・・・・・あぁ、俺、眠って、たのか・・・?)


思考も、感覚も、まだぼやけている。


そして、ゆっくりとそれが追いついてくると、自分が今、横たわっていて、目を閉じていて、そして今ようやく“意識”が“目覚め”たのだという事に気がつく。


(・・・・・・なんか、右手が、“あったかい”・・・・・というか、“重い”ような気が・・・・・)


その思考が脳内に言語化されたタイミングで、ゆっくりと“白”が差す“黒”の世界から、その扉を開ける一歩を踏み出す。


「・・・・・いや、何で人の右手を枕にして、気持ちよさそうに寝てんの?どういう状況ですか?パレットさん?」


目が覚めた黒髪の少年、當真 夜のその視界に一番最初に映った景色は、自身が横になっているベッドの隣に椅子をつけ、そこに座ったままベッドに横たわる當真の右手を掴み、まるで小動物が抱き枕を抱えて眠りこけるような様子で、しっかりと(ヨダレを垂らしながら)熟睡している金色の少女、パレット=セブンデイズの姿であった。


「・・・赤ちゃんみたいに、あったかいんだな、コイツ。めちゃくちゃ気持ちよさそうに眠ってるし・・・」


ゆっくりと、周囲を見回す當真。


そして、“見慣れた”青色の患者衣を身に纏い、至る箇所を包帯で纏われ、左腕には点滴も打たれている自身の姿、そしてジワジワと呼び起こされて膨張していく“痛覚”のおかげで、ここがどこで、自分自身が“どういう状況”であるのか、という事も理解した。


(“病院”で、多分これ、“あれから”入院してたパターンだな、“前後”がぜんっぜん思い出せないけど)



「あらあら?やっと目が覚めた?」



その聞き覚えのある声に、視線を部屋の入口へと向ける當真。そこには、白衣を纏ったひとりの女性が扉に手をかけ、こちらを覗き込んでいた。


白衣、からその女性が“医者”なのは間違いない。だが、ここ病院という場所で見る“人物像”としては、逆に“違和感”を感じてしまうような女性が、そこにいた。


腰元まで伸びたウェーブがかかった黄金色のロングヘア―、スタイルの良さが際立つ要因となっている程に顔が小さく、その面積の半分を、かけた丸眼鏡が占めているくらいで。


ただ、それさえもスタイリッシュに思えるほどに綺麗に整った顔立ちは、おそらくこの国と異国の両方の血を受け継いでいるのであろう。ゆえに海外の女優さんやファッションモデルとも思えてしまうが為に、まるで“医者のコスプレ”をしていると言ってしまった方がむしろ納得がいくような、そんな違和感を覚えてしまう女性、


「あー・・・おはよう?ございます、『新待あらまち』先生、」


「あらあら?お父さんと同じように親しみを込めて『トネリちゃん』先生って呼んでくれても、いいのよ?“ナイト”ちゃん?」


新待あらまち トネリ。この街一番の大きな病院で、父親及び當真自身も“よく”お世話になっている、いわば顔なじみの“女医”さんである。


「いや、俺はあのバカ親父と違って常識をわきまえてますので。新待先生とお呼びしますし、なので、俺の事もあだ名でなく、その、ちゃんと、名前で呼んでください・・・恥ずかしいので」


「あらあら?思春期なの?恥ずかしがり屋さんなの?相変わらず可愛いんだから、“ナイト”ちゃん?(笑)」


茶化すようにニヤニヤしながら、トネリは當真に近づいてくると、當真の左腕に伸びた点滴を手早く確認しだす。距離が近づくと、トネリの美貌や、大人の女性特有の華やかな空気感をより鮮明に感じ取り、當真は視線を外す。


(くっ・・・相変わらず“苦手”なんだよな、この人・・・めちゃくちゃ美人な分、この距離感バグってる感じが余計にめんどくさいというか・・・親父はいつも“デレデレ”してっけどさ・・・)


「そういや、あのバカ親父は、息子がこんな痛々しい状況で入院してるのに見舞いにも来てねえのか?・・・・・まさか、まだ、絶賛家出中とかふざけた事はー」


「ーあらあら?お父さんなら、ちゃんとお見舞いに来てたわよ?“五日前”に?」


「あっ、そうなんで・・・・・え、い、五日・・・・・?」


トネリの言葉に、驚きを混乱が勢いよく抜き去って當真の脳内に響き渡っていく。


絶賛家出中(?)の父親が見舞いに来ていた事に、ではない。その、“空白の時間”に対してだ。


「ナイトちゃん、いつもみたいに怪我だらけになるだけじゃなく、今回はかなり派手にやったみたいね?今日でちょうど一週間よ?ずっと目を覚まさないから、“データ上”は問題なくても、流石に少し心配したわよ?」


さらに、衝撃が當真に追い打ちをかける。咄嗟に、近くのテーブルに置かれていた自身のスマホを見つけ、手に取り、そのディスプレイに目をやると、當真の記憶していた“土曜日”から、丸々一瞬間経った日付が確認出来た。


「でも、命に別状ないのが分かった瞬間に、『じゃあオールオーケーだな、すぐ起きるだろ。引き続き家出中はよろしく頼むな?ナイト?』って笑いながら眠ってるあなたに言い残して、またすぐどこかに行っちゃったけどね、あなたのお父さん?(笑)」


(あんのクソ親父がああああああああああどんだけ自由人なんだあああああああああ?!!!!)


声に成らない程の怒りを全力で心の中で叫ぶに押し留めるあたり、當真がいかに“そういう状況”に慣れているかが容易に想像できる。


「だからね、ナイトちゃん、きっとちゃんと目が覚めるようになったのは、“その子”のおかげよ?ずっと眠り続けるあなたの側で、見守ってくれてたんだからね?」


点滴を交換し終えたトネリは、當真の隣で熟睡するパレットを見ながら伝える。


「その子、あなたのお父さんに代わってずっとあなたの身の回りの事とかもやってくれてたのよ?」


「パレット・・・・・」


「まぁ、いろいろと不器用すぎて最終的にはぶっちゃけジャマだったし、あなたの為の入院食も全部代わりに食べてたけど(笑)」


(おい。感動が丸々薄れてしまうだろうがよ、パレットさん?)


グウグウと寝息をたてだしたパレットに対し、視線で冷たくツッコミを入れる當真。


だが。小さくも“あたたかい”、その握られた“右手”を見て、當真は思わず微笑み、小さな声で呟いた。


「ありがとな、パレット。・・・ほんと、よかった」


幸せそうに眠る金色の少女の寝顔。


どんな夢を見ているのか分からないが、笑顔を見せる金色の少女を眺めながら、届いた“右手”を當真も優しく握り返す。


「・・・・・・あらあら?ナイトちゃん?“そういうこと”なの?“そういうこと”なのお?キャー?!」


「なんで意味分からないタイミングでテンション上がってるんすか?というか病室で医者が患者目の前にしてキャッキャッしないでくれます!?・・・うっ、グハッ?!!」


テンションを上げながら“めんどくさい”方向に持って行こうとするトネリの挙動に対し、思わずツッコミを声に荒げる當真。


そして、その反動による全身を駆け巡る痛覚によって、自身が一週間近く入院している理由を改めて再認識する。


「あらあら?おとなしくしてなきゃダメよ?目が覚めたとはいえ、“その子”の話を聞く限り、ナイトちゃんは“当分”絶対安静になるだろうし?」


「・・・“当分”?」


トネリの言葉の真意に疑念を返す當真。


その声に、側で眠っていたパレットも、ようやく気がつき、


「・・・ないと・・・っ?!ないと!?目、醒めたの!!!?ないとおおおおおおお!!!!!!」


起床、そして、気がつくと同時に、飛び跳ねるような勢いで當真の胸に抱きつく、というより弾丸のようにヘッドバッド(デジャブ)してくるパレット。


もちろん、その勢いを全く持って受け止めきれず、その衝撃にさらなるダメージを當真が受け取ったのは言うまでもない。


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